トップページ tel:0792626871

知っておきたい薬剤知識

睡眠薬の上手な飲み方

うつ病、躁うつ病、不安障害などでは、自律神経失調症状の諸症状のひとつとして、不眠症状が出ます。 そこで、軽度の不眠症状に対する処方について述べます。
簡単にいうと、人間は自律神経のうち、副交感神経が優位になって、体の緊張が取れるとよく眠れます。 ですから、副交感神経が優位になるように工夫しながら、睡眠薬の吸収効率と薬理効果の向上を目指します。 患者さんから「睡眠薬を飲んでもなかなか眠れない」、「睡眠薬が効かない」といった訴えをよく聞きます。 これに対して医師は、むやみに睡眠薬の量や、同じ系統の薬の数を増やすべきではありません。
それは先述の通り、とくにベンゾジアゼピン系の睡眠薬は飲みやすいため、多種・大量に飲むと薬物依存になりやすく、また次の日の朝になっても体に薬が残っていて、昼間眠くなったり頭が重かったり、気分の波が大きくなって不機嫌になったりと、いろいろな副作用が起きるからです。
では、どうしたらよいかというと、私のおすすめは以下の通りです。むやみに睡眠薬の種類や量を増やす前に、ぜひ試してみてください。

  • 夕食を早めに摂る
  • 晩酌のお酒も大量(日本酒で1合以上)に飲むとかえって中枢神経が興奮して眠れなくなるので控える
  • 夕食後は水分のみ補給し、一切間食しない(覚醒作用のあるカフェインが含まれるコーヒーや、ウーロン茶などは避ける)
  • ぬるめのお風呂にゆっくりつかる(熱いお風呂は自律神経を活性化させる)
  • お風呂から出た後は、軽い体操やストレッチなどをする
  • リラックスしてくつろぐ(照明や寝具などの環境調整も必要)
  • 夕食を食べてから2〜3時間後、少しおなかが空いたかなと思う頃に、睡眠薬をさっと飲んで床に就くと、副交感神経が優位になり睡眠薬がうまく吸収され、薬がよく効くようになります。

もしこのような方法を試しても、不眠がまったく改善されないならば、うつ状態の症状特有の、不安や焦燥感の強い、中枢神経系の興奮による重症の不眠だと考えられます。 この場合は、睡眠薬は増やさずに、別系統でより鎮静効果が強い抗精神病薬(レボメプロマジン、リスペリドン、オランザピンなど)を、今の睡眠薬に上乗せして、興奮を和らげるのがいいと思います。

●そのほかの注意
睡眠で大事なことは、寝る時間を決めることよりも、起きる時間を一定にすることです。 そうすることで1日のリズムが保たれ、やがて就寝時間も一定になってきます。
またお酒に頼って寝ようとする人がいますが、お酒を飲むと睡眠の質がかえって悪くなります。 のどの渇きで朝早く目が覚めたりして、熟睡感が得られません。 アルコールの連用は、うつ状態をますます悪化させ、不快なうつの気分を酒によって紛らわしているうちに、アルコール依存症に陥ってしまうという悪循環につながる危険性がありますから、少なくとも治療中は禁酒すべきです。
薬との飲み合わせの問題もあります。 どうしても自分の力で飲酒をコントロールできない場合は、アルコール依存症の治療を優先しなければなりません。 アルコールとうつとの相性は非常に悪いのです。

妊娠中の服薬について

胎児へのリスクか、患者さんご自身のリスクか
患者さんやご家族(とくに配偶者)からよく「薬を飲んでいて妊娠しても大丈夫ですか?」、「子どもを作るなら、薬は止めたほうがいいですか?」と質問されます。 厳密にいえば、たとえかぜ薬でも胎児にまったく影響がないとはいいきれません。 しかし、胎児への影響(薬害リスク)と、病気を抑えて妊娠を可能にする薬理効果のどちらをとるかは、患者さんやご家族の人生観にもよりますし、一概にいいきることは難しいと思います。
もちろん主治医は相談にのり、情報も提供し、アドバイスもしますが、予測される「薬を止めて得られるメリット」と「止めたことによるデメリット」については、患者さん個々の事情によって異なってきます。
ここでは患者さんの決断のために、参考資料になる最新の情報を提供したいと思います。 一般に、病院で処方されている薬は、体内に入って肝臓の薬物代謝酵素によって水に溶けやすくなり、小便や糞便中に溶け出して体外に排出されます。
この一連の流れを「薬物代謝」と呼びます。
向精神薬(抗うつ薬、気分安定剤、抗精神病薬、睡眠薬など)の大部分は、胎盤を通過して胎児に移行する可能性が高く、母乳中にも入っていきます。 胎児・新生児の肝臓の薬物代謝酵素の活性は、ほとんどない状態です。 したがって、とくに胎児が母体のなかにいるときに、母親が飲んだ薬物が胎盤を通じて胎児側に移行すると、胎児のなかで残留して良くない作用を起こす可能性があります。 奇形を起こしやすい(催奇性)と考えられるのは、そのためです。

胎児への影響−医薬品の危険度分類

すべての薬において、動物実験による催奇性の試験が行われています。 実際の臨床データも加味されて、そこでとくに危険なものから、それほど危険ではないものまで、ランクがつけられています。 向精神薬のうち、気分安定剤、抗うつ薬、抗精神病薬の3つについて、現在の試験データから見た危険度、その対応策についてお話しします。
ランク分けは、米国の政府機関FDA(食品医薬品局)が分類したプレグナンシー・カテゴリーと呼ばれるものです。 現在の試験データから見た場合、ほとんどの薬の危険度は、Cランク、Dランクに相当するものです。 ここでいうCランクの動物実験は、マウス、ラットなどのげっ歯類を使っているのですが、このげっ歯類は、肝臓の薬物代謝酵素量がヒトの100〜1000倍もあります。 つまり、実験では体重あたりの薬物の投与量もヒトの100倍以上投与して「奇形が生まれるリスクが高い」、あるいは「低い」といった結果を示しているのです。 ちなみに、抗不安薬もCランクに分類されるものがあり、アルコールはDランク、喫煙はそれ以上に危険であることを示す禁忌のXランクになっています。 なお、催奇性が明らかであるサリドマイドも、事実上の禁忌であるXランクです。
いずれにせよ、抗うつ薬や気分安定剤は胎盤透過性が高く、催奇性が高いDランクで、抗精神病薬のCランクよりも奇形が発生する危険性が高いと予測されています。
睡眠薬ではほとんどがDランクにあるベンゾジアゼピン系より、Bランクにあるゾルピデム(マイスリー)が比較的安全のようです。 また、母乳への移行率も高いので、服薬中は授乳は禁止です。

初めての方へ

症状と治療方法

初めての方へ

診断チェック