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統合失調症/Schizophrenia

4.症状・障害別の介入方法

 認知行動療法の適応においては、それぞれの問題のメカニズムに合わせて介入法を工夫しています。それは、問題が発生し、維持されているメカニズムは、症状や障害の種類によってその構造が異なっているからです。認知行動療法では、このような問題のメカニズムに適合した介入を工夫することで、これまでの心理療法では対応できなかった重篤な不安障害や精神レベルの障害に対しても、有効に介入することができるようになりました。

 認知行動療法が介入するターゲットは、主にうつ病や不安障害で、その他の精神疾患にも有効です。治療の基本的な流れは同じですが、病気ごとの認知にあわせて技法を変えることによって、効果が高くなるようにアプローチを変えています。介入技法で分けると、大きく3つに分けられます。1つは「うつ病」、2つ目は「不安障害」、3つ目は「その他」です。うつ病は、認知面は否定的になりがちなので、その修正が中心となります。行動面は、消極的な傾向があるため、「行動活性化」という手法を用います。不安障害は、認知面では身体感覚や自意識などへの誤解に焦点をしぼって対応します。行動面は、エクスポージャーという手法で、不安に慣れる練習をします。その他の精神疾患である「不眠症」「依存症」「統合失調症」などにおいては、個々の状況にあわせて技法を選びます。「パーソナリティ障害」は時間をかけて治療していきます。

 認知のゆがみを修正する方法を「介入方法」といいますが、介入方法としての技法はさまざまな種類があります。病気ごとの最適な技法が、研究者によって開発されており、いまなおより効果を高めるための研究が進められています。実際の治療では、これまでに実証された標準的な型が使われ、「この病気にはこの技法」という具合に治療が行われています。治療者はこの型をもとに、患者さんに技法を提案し、患者さんは自分に出来そうなところからチャレンジしていきます。

 技法の提案にあたっては、治療者は患者さんと対話を通じて、患者さんの心のすみずみまで把握し、そのうえで患者さんにぴったりの技法が選択されます。したがって、認知の修正に用いる技法の種類や内容の細部は、患者さん一人ひとりの病気や症状にあわせてアレンジされます。そのために、治療に入る前に病名は診断されますが、対応においては病名にとらわれず、抱えている問題全体をみるようにします。そのうえで介入方法を考えていきます。対応においても、合併した病気が複数ある場合は、技法も複数の組み合わせになる場合もあります。実践して効果のある組み合わせを検証していきます。さらにまた、定義されている病気以外に、患者さん固有の問題があれば、それに対応して細部においてアレンジしていきます。

『うつ病』の認知行動療法

うつ病独特の認知を知る

 うつ病の認知行動療法は、アメリカの心理学者アーロン・ベックの認知療法をもとに発展してきました。ベックの研究では、うつ病患者さんの認知の特徴として、三つの否定的な認知の徴候をあげています。一つは「自己に対する否定的観念」、二つ目に「人生や社会に対する否定的解釈」、三つ目に「将来に対する空虚で絶望的な考え」で、いずれも独特の不合理な信念で、何らかの喪失をめぐって生じてくる悲観的な考え方です。うつ病特有の抑うつ気分や落ち込みなどの情緒は、これら三つの否定的な認知の結果生じるものであるとベックは定義したのです。

 抑うつ症状が生じる仕組みについて、ベックは図(『認知モデル』)のように考えました。過去の体験がスキーマとなり、やがてそれが自動思考を生み、抑うつの感情や行動となって現れるというものです。自動思考(automatic thought)とは、状況に対してほとんど意識せずに生じる反射的な思考のことです。「自分は心が弱いからこんな病気にかかるのだ」「これは怠け者がかかる病気だ」「こんな自分はいないほうがましだ」といったような自動思考は、場面によって、さまざまな形をとって現れます。言葉の場合もあれば、イメージや記憶の再生として現れる場面もあり、またネガティブな場面ばかりではなく、時にはポジティブな場面で生じるものもあります。

 この反射的に生じる自動思考(イメージまたは記憶)は、患者さん自身の自己概念の影響によるところが大きいです。つまり「自分をどう見て、どう捉えるか」によって自己概念が形成され、多種多様なバリエーションを示します。特に記憶と密接な関係をもち、自己概念を形成するようなエピソードは何度も想起され、また自己を語るエピソードとして他者にも語られやすい。これはまた、将来に対する視点や世界に対する視点も、同様に自分をどう捉えるかによって異なりますが、その場合の自己概念も自然に発生したものではなく、患者さんが今までに経験してきた出来事から学び取って身についたものと考えられます。その自己概念が、患者さんにとって信念のレベルであればスキーマであり、状況に応じて想起されるレベルであれば自動思考ということになります。

認知モデル


ベックの考えたうつ病における認知のゆがみの傾向を分類すると、次のような内容の項目になります。

  • @恣意的推論:証拠が少ないにもかかわらず、あることを信じ込み、独断的に思いつきで物事を推測し判断します。
  • A二分割思考:常に白黒はっきりさせておかないと、気がすまない考えです。
  • B選択的抽出:自分が関心のある事柄にのみ目を向けて、抽象的に結論付けます。
  • C拡大視・縮小視:自分の関心のあることは大きくとらえ、反対に自分の考えや予測に合わない部分は、ことさらに小さく見ます。
  • D過度な一般化:ごくわずかな事実を取り上げて、決めつけます。
  • E情緒的理由づけ:その時点の自分の感情状態から現実を判断します。
  • F自己関連づけ:悪い出来事は、すべて自分のせいにします。

 抑うつ気分は、そのほとんどが否定的・悲観的な認知から生じています。ベックの挙げた「自分への否定」「社会や人生への否定」「将来への否定」の三つの否定によって、何も信じられなくなり、気分がふさいで、行動することができなくなるのです。また、完璧主義のために必要以上に頑張って、そして少しでも失敗すると「自分はダメ人間だ」と悲観的になるのです。感情面では、失敗したことに喪失感を抱き、抑うつ気分に支配され、やる気が出なくなったり対人関係がこわくなったりします。また、行動面では活動範囲がせばまり、趣味もおろそかになり、完璧を求めるあまり何事も楽しめず、何もしなくなります。うつに特徴的な認知のゆがみをまとめると、別表のようになります。


表・【うつに特徴的な認知のゆがみ】

1.結論の飛躍(恣意的推論)理由もなく、悲観的に未来を信じ込んだり、人が悪く思っていると思い込んだりして結論を出す。
2.全か無か思考(完全主義)物事を、白か黒かのどちらかに極端に分ける考え方。完全に出来なければ満足できず、少しのミスで全否定する。
3.過度の一般化一つでも良くないことが起きると「何をやっても同じだ」と結論づけたり、また今後も同じことが起きると思ってしまう。
4.心の色眼鏡(選択的注目)良い面は視野に入らず、悪い面だけを見てしまう。
5.拡大解釈と過小評価自分の欠点や失敗、関心のあることは拡大してとらえるが、自分の長所や成功などはことさら小さくとらえる。
6.感情的な決めつけ自分の感情を根拠にして、物事を判断する。
7.自分自身への関連づけ(個人化)良くない出来事があったとき、その理由が様々であるにもかかわらず、全部自分のせいにする。
8.すべき思考「〜しなければならない」と、必要以上に自分にプレッシャーをかける。
9.レッテル貼りミスしたりうまくできなかったとき、それについて冷静に理由を考えず、「自分はダメな人間だ」などとすぐにレッテルを貼る。
10.マイナス思考何でもないことや、いい事であっても、悪くすり替えてすべてマイナスに考える。









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