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統合失調症/Schizophrenia

治療の手順と手法・1…まず、何がつらいか話してみる

 うつや不安障害の患者さんにとって、何が一番つらいかと言えば、周りの人に病気を理解してもらえないというつらさです。患者さんには、まずそのつらさや、またどうしたいかという要望などを話してもらう事から始めます。つまり治療者は、最初は患者さんの話をよく「傾聴」することから始めます。特に、初めは徹底的に聞き役に徹します。次に「つらかったでしょう」「今まで、一人で大変でしたね」と、患者さんの気持ちに寄り添って「共感」してあげます。そして、最後に患者さんのつらい気持ちを「受容」することです。決して、治療者は一方的に指示するようなことはしません。人は受容されれば、変わる事ができます。受容され、自分のすべてが問題なのではないと感じれば、問題の部分を少し変えてみようという意欲がでてきます。

 認知行動療法の治療は、この傾聴・共感・受容からスタートします。患者さんは、治療者に話を聞いてもらい、共感してもらい、受容してもらっているうちに、「もうダメだと思っていた自分にも、良いところがたくさんあるんだ」と思えるようになり、病気を治すことができそうな気になってきます。話を聞いているうちに、患者さんの緊張感はとけていき、より詳しく話せるようになってきます。患者さんは、受け止めてくれる相手がいるとわかれば、安心し治療しようという心の準備ができるのです。

 一般に、人間関係の基本はお互いの信頼関係によって成り立ちます。認知行動療法においても、患者さんと治療者がお互いに信頼し、尊重し合うことが基本になります。治療者は、患者さんを受け止め、認めることを常に意識していますので、治療中に患者さんを一方的に指示したりするようなことはありません。どこまでも、双方の信頼と尊重のうえに治療は進められていきます。

 こうして、最初の面接では、治療者は患者さんについての情報をできるだけ多く集め、整理して、病気の状態の見立てを行います。これをアセスメントといいます。最初の面接で行われたアセスメントをもとに、治療者はおおまかな治療プランを立てます。

治療の手順と手法・2…話したいテーマ(アジェンダ)を決める

 アジェンダ(agenda)とは、会議の議題を意味する英語ですが、認知行動療法では、治療で取り扱うテーマ(話題)のことをアジェンダといいます。患者さんにとって、話しやすい雰囲気がでてきたら、その日に話し合うテーマを決めます。テーマを設定するのは、治療の対象や目的をしぼりこむためです。テーマが決まれば、患者さんにとっても何を話したらよいのかという迷いがなくなります。取り組む問題がはっきりすれば、それを解決しようという意欲も出てきます。患者さんと治療者がいっしょになって、毎回テーマを決め、それについて話し合い、その都度、解決策を見出していくという共同作業が行われれば、治療はスムーズに進行していきます。本格的な治療はここからスタートになります。

 テーマ(アジェンダ)の一例としては、次のようなものがあります。

  • ・人前にでると、緊張してつらくなる。
  • ・夜になると、いろいろ考えてしまい、なかなか眠れない。
  • ・家族と口論が多くなって、うまくいかない。
  • ・前回のセッションの宿題にうまく取り組めなかった…など。

 このほか、いろいろなテーマがありますが、患者さんが話したい事があれば、それをテーマにすることができます。希望があれば、遠慮なく伝えることが大切です。あくまでも、テーマの決定は相談しながら行いますので、治療者が一方的に進めることはありません。面接時において、治療者は患者さんに「思いついたこと、何でもいいから言ってごらん」と発言を促しますが、患者さん本人も「いま一番つらい症状。しかしどうにもできない。話したいことはたくさんあるが、それをどう話せばよいかわからない」という場合もあります。会話のやりとりをするうちに、患者さんの思いが少しずつ見えてきます。「そう、それが一番気になるんですね。では、その話を今日はお話ししましょうか」と提案し、その日のテーマとすることもあります。

 また、テーマがたくさん出てきて、優先順位をつける場合もあります。一番気にしているテーマにしぼると、二番目以降の問題が気にならなくなることもあります。テーマが決まり、そのテーマがセッションの最後には、ある程度解決の糸口が見えてきます。

治療の手順と手法・3…患者さんと治療者の共同作業

 認知行動療法は、患者さんと治療者の共同作業によって成り立ちます。どちらも治療の主役です。患者さんのことは、患者さん自身が一番よく知っていますし、治療のことは治療者が一番よく知っています。その両者が力を合わせることで、目標が達成されるのです。目標は、病気の回復です。その回復という共通の目標に向かって、一緒に努力するチームメイトですから、共に協力し合う仲間です。二人三脚で病態を把握し、現状を分析し、問題の解決を図っていきます。認知行動療法は、一心同体で協力しながら成功体験を積んでいく治療法のことです。

 したがって、いかに患者さんと治療者が協力態勢を築けるかが、治療成功へのカギとなります。そのためには、患者さんは積極的に治療に取り組み、治療者がそれをしっかりと支えることが重要で、どちらにも片寄らない関係づくりがポイントになります。「前回は、感情をとらえることができましたね。素晴らしい気づきだと思います」という治療者の声かけが、患者さんの治療意欲を高めることになります。また自己表現を上手に促していくことにより、患者さんは積極的に自分を表現して、治療者に理解してもらおうと努めます。

 セッションを重ねていく過程で、患者さんは治療者の言葉を参考にしながら、自分の認知・感情・行動をとらえることができるようになっていきます。治療者は、患者さんの話や作業がよい方向に進むように、回復への道をガイドしていく立場にあります。そして、各セッションの最初と最後には、治療の目標や成果について、お互いに言葉を交わして確認するようにします。「今日のセッションに無理なところはありませんでしたか?」と声をかけるなどして、相手の意見や感想を丁寧に受け止め、お互いにフィードバックし合うことが大切です。こうして、各セッションのまとめでは、情報共有の機会をつくり、協力態勢を築きながら次回のセッションに活かしていくようにします。








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