トップページ tel:0792626871
統合失調症/Schizophrenia

薬の種類、用量、期間は人によって違う

 統合失調症を初めて発病した患者さんには、非定型抗精神病薬(新規抗精神病薬)が第一選択薬となります。また、再発した患者さんも同じですが、それまでの治療で定型抗精神病薬が効いていて、生活のうえで困るような副作用がなく、患者さんが希望する場合は、そのまま継続して服用します。初めて発病した患者さんについては、どの非定型抗精神病薬から始めるかについては、糖尿病の既往歴や現在糖尿病にかかっていないかを確認してから決められます。

 用量は、少量から始めて、速やかに十分な量まで増量していきます。薬の作用が発揮されるまで、2〜4週間かかりますが、その間に顕著な副作用がでた場合は、他の薬を選択することになります。治療に用いる薬の選択や用量は、症状に対する効果と副作用のバランスによって決められます。どの薬がもっとも合うのか、適切な用量はどのくらいかは、患者さんによって異なりますので、一律に判断できません。大事なことは、患者さんの服用した際の実感が重要なポイントになります。周囲から見て取れない主観的な抑うつ感や不快な副作用がありますと、薬を止めてしまう患者さんが多いからです。したがって、「頭がボーッとする」「体がだるい」「不愉快な気分になる」といった副作用を実感したら、主治医に伝えることが大切です。医師は、患者さんの主観的な報告を重視して治療方針を考え、場合によっては薬の変更もあります。いずれにしても、使う薬の種類・量・期間は患者さによって大きく異なり、効果や副作用の現れ方も違ってきます。

薬選びの手がかり

 どのような薬が、どのような患者さんに、どのように反応するかについては、答えはありません。つまり、抗精神病薬の処方には決まりはなく、医師が判断して、その患者さんに合わせたオーダーメイドの処方となります。なぜ、人によって反応が違うのかも不明です。考えられるのは、脳のどの部分で、神経伝達物質のアンバランスが生じて、統合失調症を起こしているのか、そして薬の作用がそれとマッチするのかどうかで、反応が決まるのではないかと考えられます。薬選びで、現在わかっている手がかりといえば、次のような点です

  • @ある薬を使ったら、よい反応をみせた場合、その患者さんにとっては将来もその薬が効果を現すことが期待できます。
  • A家族の1人が統合失調症にかかって、ある薬によく反応した場合、家族の他の人が同じ病気になったときも、同じ薬が効くことが期待できます。薬に対する反応は、遺伝的な要素がかかわっているものと思われます。
  • Bある薬を最初に投与したとき、患者さんに適合せず不快感を示した薬は、将来においてもその患者さんへの効果は期待できません。 
 以上の観点から、患者さんや家族は、どんな薬がどのくらいの量を投与され、反応はどうだったのかを記録しておくとよいでしょう。将来、改めて薬を選択するとき、非常に参考になります。

投与する量について

 抗精神病薬が効果を現す量は、患者さんによってかなりのバラツキがあることがわかっています。それは、神経伝達物質の体内での処理能力(吸収や排泄)は、人によって異なるからです。また、遺伝的な体質との関係も考えられます。例えば、アルコールでもわずか30mlで酔っぱらう人もいれば、1リットルを飲んでも酔わない人がいるように、抗精神病薬も同じようなことが考えられます。抗精神病薬の血中濃度が同じレベルに達するのには、ある患者さんは10mgで十分なのに、他の患者さんは400mgも必要な場合があります。このように、薬の適量は患者さんによって全部違います。

 抗精神病薬は、薬ごとに治療の適量範囲があります。それよりも少ない量を使えば、少ない分だけ再発の危険性が高くなり、反対に適量範囲を超えて服用すれば、治療効果が下がるばかりか、強い副作用が現れます。ただ、意識的に薬の用量を少なくする「低容量戦略」という治療法があります。再発を起こす危険性もありますが、人によっては副作用が少なく、本来の性格が出てきて活発になる可能性もあります。 

服用する期間

 薬の体内処理能力は、人によって違いますので、効果が出る時間や期間も異なってきます。抗精神病薬を投与して、48時間以内に劇的な効果をみせる人もいれば、数カ月もかかってゆっくり反応する人もいます。アメリカでの調査によると、投与してから最良の改善をみせるまでの平均期間は、35週と報告しています。このうち、半数の患者さんは11週で改善しているため、残りの半数は、かなり長期間がかかっていることが考えられます。一般的に、再発を繰り返す人ほど、服用期間は長くなります。また、年齢を重ねていくに従って、薬の量も減らしていけますし、最終的には止めることもできます。

薬物療法を継続する時の注意点

初めて発病した場合

 初めて発病した患者さんの場合は、1種類の非定型抗精神病薬を少量から飲み始めます。当然ながら、始めて抗精神病薬を服用するとなると、恐怖感があると思います。急性期の激しい症状があるときは、患者さんの多くは病識がないことが多いです。そこで、服用しようとしている薬は、患者さんが困っている不眠やイライラなどの症状に、どのように効くのか、またどのような副作用があるのか、十分に医師が説明したうえで服用を始めることが重要です。

 薬について説明する際は、患者さん本人と一緒に家族の方も同席してもらいます。疑問点や不安に思われていることがあったら、自由に質問してもらい、患者さんや家族の方に十分に納得してもらってから、薬物治療を始めることが大切です。最初の納得や理解、薬の服用感などが、その後の長い治療過程に大きく影響をするからです。

再発した場合

 再発の原因で、最も多いのが「服薬の中断」です。このような時は、なぜ薬を飲むのを止めたのか、原因を明らかにすることが大切です。服薬の中断理由として多いのは、次のような点です。

  • ・よくなったので、薬を飲み続けなくてもよいと思った。
  • ・家族が、薬を飲み続けなくてもいいと考え、本人に止めるように勧めた。
  • ・長期間服用することで、副作用が心配になった。
  • ・患者さん本人が感じている主観的な副作用(抑うつ症状、アカシジアなど)があって、日常生活にも影響を及ぼしていながら、そのことを主治医にうまく伝えられずに中断した。

 以上のような理由で、服薬を中止した場合は、治療戦略を見直す必要があります。また、服薬を継続していたにもかかわらず、再発した場合は、ストレスの原因となっている環境要因を洗い出し、ストレスの軽減に努めるとともに、薬の服用量を見直し、薬の変更も考えます。これらについては、患者さんと医師が率直に話し合える関係にあることが重要です。

回復期・安定期にける薬物療法の注意点

 回復期に入っても、急性期に有効であった非定型抗精神病薬は、同じ用量で継続して服用し、6カ月間は経過を観ます。すぐに薬を変えたり、量を減らしたりすると、症状が逆戻りすることがあります。薬や用量の変更は、一定の期間を服用して経過を観察したあと、安定期に入ってから行います。安定期以降も薬物療法は継続して行われます。定型抗精神病薬を長期間にわたって飲み続けている患者さんは、非定型抗精神病薬に切り替えることもありますが、ゆっくり時間をかけて行うことが大切です。回復期から安定期にかけては、抑うつ症状や過鎮静などを起こさないように気をつけます。特に抑うつ症状が生じると、自殺や服薬の中断につながることがありますので、注意が必要です。

服薬が困難な場合

 抗精神病薬は、基本的には口から飲む内服薬(錠剤または粉薬)です。しかし、どうしても服用が困難な場合があります。このような場合は、やむなく注射薬を使います。筋肉注射または静脈投与(静脈による注射、または点滴として投与)をして、まずは激しい症状を鎮静する必要があります。注射薬は、消化管を通さないため、体内に吸収されやすいという利点があります。

《注射薬を使うケース》
  • ・急性期で患者さんが激しく興奮したり、混乱したりしている状態で、規則的に薬を服用することが困難な場合。
  • ・内服薬では十分な効果が現れないため、より効果を高めたい場合。
《注射薬の使い方》
  • ・注射薬は、普通は筋肉注射が行われます。吸収が早いため、内服薬の5倍ほどの量を一度に体内に入れることができます。
  • ・筋肉注射は、普通は臀部(おしり)に行いますが、腕にする場合もあります。
  • ・興奮などによって、食事もとれないほど消耗が激しい患者さんは入院してもらい、安静を保ちながら、点滴で静脈に投与する場合もあります。
《注射薬の注意点》
  • ・筋肉注射は、注射をした部分の筋肉を痛めるので、あまり過度に注射はできません。一時的な措置として考えます。
  • ・多量の薬を一度に体内に入れるため、急激な作用でトラブルが起こらないように注意します。

※注射薬には「デポ剤」と呼ばれる油性の製剤もあり、これは筋肉に注射すると、ゆっくりと時間をかけて体内に取り込まれる薬です。デポ剤を使えば、毎日薬を飲まなくても、2週間に一度、あるいは4週間に一度の注射で済みます。薬の種類に限りがありますが、合っている人には便利だともいえます。デポ剤の使用は、薬を飲むのをためらったり、忘れてしまったり、また患者さん自身が病気という認識がなく、薬を飲むのをやめてしまったり、たびたび再発を起こすケースなどに使われます。




インデックス
前のページへ 次のページへ




初めての方へ

症状と治療方法

初めての方へ

診断チェック