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統合失調症/Schizophrenia

現在使われている主な抗精神病薬

 抗精神病薬は、「定型抗精神病薬」(従来型抗精神病薬)と「非定型抗精神病薬」(新規抗精神病薬)の2つに分類されます。1950代以降に作られた初めの抗精神病薬を「定型抗精神病薬」といい、そして主に2000年前後以降に開発された薬を「非定型抗精神病薬」と分けていますが、実際に薬が体内に入ってからの作用の違いは不明で、明確な基準はありません。ただ、これまでの作用を大まかに分ければ、定型タイプは主に脳内のドーパミン受容体に作用して陽性症状を改善するのに対し、非定型タイプはドーパミン受容体に加え、さらに多様な受容体に作用して陰性症状の改善に効果があるとされています。最近では、「非定型抗精神病薬」が統合失調症の第一選択薬として用いられていますので、初めに非定型、続いて定型の薬について説明を加えていきます。 

「非定型抗精神病薬」(新規抗精神病薬)

 非定型抗精神病薬は、定型抗精神病薬の後に開発された比較的新しい薬で、作用の違いから「SDA系」「MARTA系」「DSS系」の3つのタイプに分けられています。この非定型抗精神病薬は、陽性症状については従来型の定型抗精神病薬と同程度、もしくはそれ以上の効果があり、陰性症状に対する効果も優れています。また認知機能の障害についても、改善効果があるとされています。

 非定型抗精神病薬は、定型タイプとは化学構造や作用が異なっているため、錐体外路症状(パーキンソン症候群にみられる筋肉のこわばりや遅い動作、ふるえなど)の副作用は、比較的起こりにくくなっています。また、体が勝手にくねくね動いてしまう遅発性ジスキネジアといわれる慢性的な副作用も現れにくくなっています。薬を服用しても、副作用による困った症状があまり現れないことから、患者さんに拒否感が少なく、服用の継続がしやすいという利点があります。ただし、新しい薬が必ずしもその人に効くとは限りません。現在、抗精神病薬の処方は非定型抗精神病薬を中心とした流れにありますが、急性期の激しい症状を鎮めたり、回復を助けたりするためには、今でも定型タイプの薬はなくてはなりません。薬の効き方には個人差があり、向き不向きもあります。また、薬を別のものに切り替えるときは、副作用が強くなったり症状が悪化したりすることもありますので、必ず医師とよく相談してから行ってください。

 非定型抗精神病薬を用いるときの注意点としては、服用量が多くなると、薬によっては従来型の抗精神病薬と同じような副作用が起こりやすくなります。また、非定型抗精神病薬の一部の薬においては、体重増加による肥満、高血糖、糖尿病の発病、生活習慣病の憎悪といった副作用がおこることもありますので、服用中は全身の健康管理については十分注意する必要があります。また、日本においては、現在、糖尿病にかかっている人や、過去に糖尿病にかかったことがある人は、非定型抗精神病薬のオランザピンとフマル酸クエチアピンは使用できません。薬の処方においては慎重に選択しなければならないため、患者さんはもちろん、その家族が糖尿病にかかっている場合、糖尿病の危険因子(肥満、高血糖など)のある場合は、必ず主治医に伝えるようにします。非定型抗精神病薬の中から、どの薬をどのような患者さんに処方するかは、医師の経験と判断によって決められます。

【SDA系】(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)

 SDA(Serotonin-Dopamine Antagonist)は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンとドーパミンの受容体の働きを、遮断する作用のある薬です。過剰に放出されているドーパミンを抑制して、陽性症状を改善します。また、セロトニンの作用を抑制することで、前頭前皮質のドーパミン活性が高まり、陰性症状を改善する効果もあります。錐体外路症状が少ないのも特徴です。

リスペリドン(商品名:リスパダール)
非定型抗精神病薬の代表的な薬です。第一選択薬として用いられる事が多く、幻覚・妄想に対する早い効果が期待できます。ドーパミン拮抗作用とセロトニン拮抗作用のほか、アドレナリンやヒスタミンの各種受容体にも結合します。海外のデータでは、幻覚や妄想などの陽性症状に対し、定型抗精神病薬のハロペリドールよりも高い有効性を示したのは、このリスペリドンだけでした。また再発率も低くなっています。1日の用量は2〜6mg。初めて発病した場合の初期推奨用量は1〜4mg。剤形は、錠剤、細粒、内用液、口腔内崩壊錠、注射剤があります。効き方がシャープなので、治療を開始して4〜8週目ぐらいに、患者さんは自分の環境を急激に認識するようになります。こういうときは、より強い不安感を抱きがちになるため、医師との面談を密にもつことが大切です。

ペロスピロン(商品名:ルーラン)
ペロスピロンは、ドーパミン拮抗作用とセロトニン拮抗作用をもちますが、神経伝達物質の受容体に対する作用には、違いがあると考えられます。また、アドレナリンやヒスタミンの各種受容体や、アドレナリンα1にも結合します。ペロスピロンは、幻覚や妄想などの陽性症状、また感情的引きこもりや運動撃退などの陰性症状、さらに抑うつ的な元気のない患者さんに用いると効果が期待できます。1日の用量は、12〜48mgで、最初は12mgから初め、次第に増量します。剤形は錠剤です。注意点としては車の運転、危険を伴う機械操作などは控えます。また、脱水を起こしたり、栄養不良などで体が消耗している人は、悪性症候群を起こしやすいので注意が必要です。

ブロナンセリン(商品名:ロナセン)
ドーパミンやセロトニン5-HT2A受容体に選択的に結合し作用します。同じSDA系のリスベリドンやペロスピロンと比べると、ドーパミン受容体に結合する力が強いので、幻覚や妄想に効果が認められます。しかし、アドレナリン、ヒスタミン、ムスカリンなどの受容体に結合して遮断する作用は低いとされています。1日の用量は、8〜24mg。最初は8mgから始め、次第に増量していきます。剤形は錠剤と細粒(粉末)があります。

【MARTA系】(多元受容体作用抗精神病薬)

 MARTA(Multi-Acting Receptor Target Antipsychotics)は、セロトニンやドーパミンだけでなく、さまざまな神経伝達物質の受容体に作用して、過剰な働きを遮断する薬です。SDAと同じように前頭前皮質のドーパミン活性を活発にするため、陰性症状にも効果があります。

オラザピン(商品名:ジプレキサ)
ドーパミン、セロトニン、アドレナリン、ヒスタミン、ムスカリンなどの各種受容体に結合して作用します。陰性症状と抑うつ症状の改善に効果があります。また、ジスキネジア(舌や口の付随運動)や錐体外路症状が現れにくいため、抗パーキンソン薬などの使用が少なくて済みます。初めて症状が現れた場合では、定型抗精神病薬であるハロペリドールよりも、再発率が低く、また再発までの期間が長くなるという報告もあります。急性期の1日の用量は10〜20mgです。最初は、5〜10mgから始めてしだいに増量していきます。剤形は、錠剤と細粒があり、急性期にきちんと薬を飲むことができない場合は、口腔内崩壊錠が使われることもあります。注意点は、他の抗精神病薬と比べて体重増加の可能性が高くなることや、高血糖および糖尿病性昏睡になる症例も報告されています。口が渇いて水分を大量に摂り、多尿・頻尿などが現れたときは、服薬を中断し、医師の診断を受けます。

フマル酸クエチアピン(商品名:セロクエル)
この薬は、ドーパミン受容体よりもセロトニン受容体に対して高い作用があります。アドレナリンやヒスタミン受容体にも結合して作用します。陽性症症状や陰性症状、認知(思考)機能の改善に有効です。特に抑うつ的な患者さんに用いると効果があります。また、これまで抗精神病薬では十分に効果がなかった場合にも使われます。さらに、長期に薬を使用していて、錐体外路症状やホルモン系の副作用(性機能不全、月経異常など)が現れている人が、薬を切り替えるときの選択肢としても期待されています。糖尿病の人には使えません。1日の用量は、150〜600mg。最初は50〜75mgから始め、次第に増量していきます。剤形は、錠剤と細粒があります。注意点は、体重増加や惰眠の副作用が指摘されています。また、高血糖や糖尿病性ケトアシドーシス(酸血症)との関連が否定できないため、糖尿病の患者さんや糖尿病の既往歴のある人の使用は禁忌です。

【DSS系】(ドーパミンシステム安定薬)

 DSS(Dopamine System Stabilizer)は、ドーパミンが過剰に働いているときは抑制し、少量しか放出されていないときは、刺激して放出するように作用する薬です。陽性症状も陰性症状も、どちらにも効果のある薬です。

アリピプラゾール(商品名:エビリファイ)
 2006年に発売された新時代の抗精神病薬です。ドーパミンの経路を完全に遮断しないので、副作用がより少なくなることが期待されています。ドーパミンのほか、セロトニン、アドレナリン、ヒスタミンなどの受容体に結合します。その中で、ドーパミンが過剰の場合は遮断し、不足している場合はそれを刺激する作用があり、ドーパミンシステムを安定させる働きがあるのが特徴的です。陽性症状や陰性症状、不安や抑うつ症状に効果があるとされ、気分を安定させる効果も認められています。他の非定型抗精神病薬と比較して、眠気が少なく、肥満や糖尿病といった代謝系の副作用が少ないのが特徴的です。錐体外路症状が少なく、また血液中のプロラクチン(性機能にかかわるホルモン)の濃度を上げないために、男性の性機能不全や、女性の月経異常などの副作用も少ないとされています。1日の用量は、6〜24mg。最初は6〜12mgから始め、その後増量していきます。剤形は錠剤と細粒、内用液があります。
 注意点は、鎮静効果が弱いために急性期の症状改善には、反応が鈍い感があります。しかしその際、不必要に薬の量を増やさないことが重要です。また、他の薬からの切り替えを急激に行うと、リバウンドなどの影響によって、症状が不安定になるリスクがあります。他の抗精神病薬との併用は、薬の特徴を殺してしまうので、単剤での使用が望まれます。

【その他の薬】

 このほか、治療に難しい病態に効果が期待されている非定型抗精神病薬があります。欧米ではすでに治療が行われ、日本では2009年4月に承認された新規の抗精神病薬としてクロザピンがあります。

クロザピン(商品名:クロザリル)
ドーパミン、セロトニン、ムスカリン、アドレナリン、ヒスタミンなど、広範囲の受容体に結合して、それぞれの神経伝達物質の作用が高まるように刺激します。その特徴は、以下のような点が挙げられています。

  • @錐体外路性の副作用が現れにくい。
  • A血中のプロラクチン値が上昇しにくい。
  • B攻撃性、死にたいと思う、自殺を図るなどの強い衝動性に有効である。
  • C遅発性のジストニア(筋肉の緊張が続くことによって、体が斜めに傾いたりする)や、ジスキネジア(体の一部が勝手にくねくね動いてしまう)を憎悪させることが少ない。
  • D初めて発病した際の陽性症状や、他の抗精神病薬による治療でも改善を示さない場合の第一選択薬となる。 

 一方、マイナス面としては、重い副作用があります。最も重い副作用としては無顆粒球症があり、血液中の白血球である顆粒球が減少して、細菌や真菌による重症の感染症を併発します。1%の頻度で、無顆粒球症が発現するといわれますので、クロザピンの服用中は、定期的に血液検査を行う必要があります。この他、便秘、頻脈、体重増加、血糖値の上昇、2型糖尿病なども報告されています。




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