トップページ tel:0792626871
統合失調症/Schizophrenia

薬物療法

治療効果が高い併用療法 

 統合失調症の治療は、薬物療法が基本です。しかし、より治療効果を高めるためには、薬物療法に心理社会的療法(心理教育、生活技能訓練〈SST〉、作業療法、家族技能訓練など)を組み合わせて行います。これは、薬だけの治療よりも、患者さんの生活能力や、患者さんを支える家族のケア能力を高めて、これらを組み合わせることで、よりすぐれた治療効果が得られていることが、国際的な研究報告によって明らかにされています。その中で、1年後の再入院率が最も低かったのが、「薬物療法と家族技能訓練」の組み合わせと、「薬物療法とリハビリテーション」の併用で、いずれも8%と低い率でした。また、「薬物療法と支持的な精神療法」を受けたグループは20%、「薬物療法と自己洞察を求める精神療法」を受けたグループは30%、という再入院率でした。「薬物療法」だけでも30%というから、いかに併用治療が功を奏しているかがわかります。他方、「薬物療法もしない」「全く治療をしない」状況では、70%という高い再入院率であることが明らかになっています。いずれにしても、統合失調症の治療においては、薬物療法が大前提であることはいうまでもありません。

抗精神病薬には2種類ある 

 統合失調症の治療薬は、大きく分けると「抗精神病薬」と「補助治療薬」です。ただし、治療の中心として使われる薬は抗精神病薬であって、補助治療薬はあくまでも、うつ・不安・不眠などの精神症状が現れたときに併用される薬のことです。ここで使われる補助治療薬は向精神薬の「抗うつ薬」「気分安定薬」「抗てんかん薬」「抗不安薬」「睡眠薬」などです。

 統合失調症の治療の主力である抗精神病薬は、1950年代初頭に「クロルプロマジン」という薬が登場したのがその始まりで、統合失調症の治療薬としては画期的なことでした。そして現在でも、統合失調症の治療にはなくてはならない薬です。その後も、抗精神病薬は異なった化学構造の薬が多く開発されてきました。だだし、この抗精神病薬は急性期の陽性症状(妄想、幻覚、興奮など)には非常に有効な薬ですが、慢性期の陰性症状(感情の平板化、意欲の低下など)にはあまり効果が認められないという欠点がありました。そこで、陰性症状などに効果があり、錐体外路障害(震え)などの副作用が少ない薬が開発されました。これが第二世代と呼ばれる「非定型抗精神病薬」(新規抗精神病薬)です。これに対し、以前に開発された薬を「定型抗精神病薬」(従来型抗精神病薬)と呼んでおり、抗精神病薬にはこの2種類があります。 

抗精神病薬の主な働き

 抗精神病薬が統合失調症に有効であることは、医学的にも十分証明されています。薬による治療で、統合失調症の患者さんのおよそ70%において症状(陽性症状)の改善がみられ、25%の患者さんにおいては軽度の改善または変化がなく、残りの5%は悪化するという報告があります。この有効性は、肺炎に対するペニシリンの効果、また結核に対するストレプトマイシンの効果にも匹敵するものとされています。ではその有効性はどのような作用によるものか、具体的にどのような症状を改善するのか、抗精神病薬の特徴について以下まとめてみました。

【ドーパミンの情報伝達作用を抑える】

 抗精神病薬には、定型抗精神病薬および非定型抗精神病薬を合わせると、さまざまな種類の薬がありますが、これらには共通の作用があります。それは、ドーパミンの情報伝達を抑える作用です。脳内には140億以上の神経細胞があって、細胞と細胞同士が、神経伝達物質という化学物質をやり取りして情報を伝え、脳のあらゆる活動を支えています。神経伝達物質にはいくつもの種類があって、それぞれ伝える情報が異なります。ドーパミンも神経伝達物質のひとつで、体を動かしたり、食欲中枢の働きを弱めたり、精神作用に関係する情報を伝える働きをしています。ドーパミンはうきうきした感情を高めてくれますが、多すぎると過覚醒の状態になって、逆にイライラし、不安感や緊張感が強くなってきます。統合失調症では、このドーパミンが神経細胞から多く出すぎる状態にあることがわかっています。これが、幻聴や妄想の起こる原因と考えられています。抗精神病薬は、このドーパミンを受け取る受容体に結合して、ドーパミンの作用をブロックすることによって、統合失調症の症状を改善するものと考えられています。



【幻聴や被害妄想を改善する】

 抗精神病薬は、幻聴や妄想などの陽性症状を改善し、または軽減する作用があることは確かです。中でも攻撃的な行動、あるいは奇異な行動に対しては効果があり、ほとんどの患者さんの行動が穏やかになります。また、「自殺しろ」といった幻聴、「盗聴されている、監視されている」といった被害妄想においても、完全に消えたり軽減したりする効果があります。激しい幻聴が四六時中起きていたのが、1日に1〜2度ぐらいに減り、静かな雑音程度に軽減します。このように、統合失調症の中心症状に効果があることは、抗精神病薬の大きな利点と言えます。

【興奮状態を抑える】

 統合失調症では、妄想や強い不安・緊張のために、興奮することがありますが、抗精神病薬を使うことによって、興奮を鎮めることが可能です。

【知覚を改善する】

 知覚とは、ものを見たり聞いたりして、入ってきた情報を脳が認識する機能のことです。統合失調症の場合、周りの人が何か言ったとき、耳はその音を受け取りますが、脳がその言葉を理解できないのです。抗精神病薬は知覚を正常にする働きがあるので、現実をそのまま見たり聞いたり、感じたり、理解できるように改善してくれます。

【不安感や恐怖感を軽減する】

 抗精神病薬を使った患者さんの実感として、「不安感や恐怖感が和らいだ」といいます。不安感や恐怖感は、適応障害のひとつで、外部で起こっている事に対応できなくなって現れます。抗精神病薬は、このような精神症状を軽減する働きがあります。

【意欲の回復効果がある】

 統合失調症になると、脳の活動が低下して感情の平板化や無関心、思考の貧困などの陰性症状が現れます。特に、消耗期や回復期には意欲の低下が大きな問題となります。抗精神病薬には、脳の障害を回復させる働きがあり、仕事や生活ができるようにはなりますが、この意欲回復効果はすべての人に効果がでるというわけではなく、20%程度の人には効果がでます。

【再発の防止効果がある】

 症状は一時的に改善できても、障害が起こっている脳の神経細胞の機能回復には時間がかかります。したがって、急性期の症状がおさまっても、薬を止めるのは危険です。消耗期にも回復期にも、再発のおそれが常にあるため、薬を飲み続けることが再発防止につながります。




インデックス
前のページへ 次のページへ




初めての方へ

症状と治療方法

初めての方へ

診断チェック