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統合失調症/Schizophrenia

病名変更の背景

 統合失調症という病気は、以前は「精神分裂病」または「分裂病」と呼ばれていた病気のことで、2002年8月に「統合失調症」という病名に変更されました。この病気は、英語でSchizophrenia(スキゾフレニア)といい、「物事の考えをつなげる働きが障害されている」という意味の言葉であって、「精神が分裂している」という強い内容を含んだ言葉ではなく、したがって「精神分裂病」という名称はほとんど誤訳にちかいものでした。日本では、戦前の1937年から精神分裂病という病名を使い続けてきましたが、この病名はあまりにも患者さんの人格を否定する病名ではないかということで、1993年に全国精神障害者家族連合会が日本精神神経学会に変更を要望してきました。それがきっかけとなって、日本精神神経学会は「精神分裂病」を改めて「統合失調症」という病名に変更されたのです。

 精神が分裂するというイメージは、一人の人間にいくつかの人格が存在する多重人格や、心が支離滅裂になる錯乱状態を想像する人もいます。多重人格は、ヒステリーの一種で、意識に亀裂が生まれる解離型が多重人格になるといわれ、統合失調症とはまったく別の病気です。錯乱状態においても、統合失調症がそこまでになることはまれです。このように精神分裂病は、誤解を与えやすい病名であったのです。一方、この病気に対する治療法の遅れも一因していました。有効な治療薬が発見されたのは1950年代のことで、それまでは統合失調症(当時の精神分裂病)に対する治療法といえるものがほとんどなく、重症化した患者さんは病院に収容されるしか方法がなく、人格荒廃になる患者さんも少なくなかったのです。このように統合失調症は、以前から悲観的な病気のひとつとして、暗いイメージを引きずっていたのです。

 そのことは医療の現場においても難しい対応を迫られていました。医師は、患者さんに病名を告げる際も、「精神分裂病」という病名をそのまま告知することをためらったと言われます。患者さんや家族が絶望的になりはしないかと気づかったのです。今こそ、インフォームド・コンセント(説明と同意)は、有効な治療を進めるうえで重要な要素となっていますが、当時では病名を告げられない状況で、治療においても患者さんや家族の協力が得られないことにもなり、病気回復に向けて不十分な対応になっていたことも事実です。

 統合失調症という病名に変更したことによって、ようやく特別な先入観や偏見もなくなりつつあります。そして何よりも、現在では副作用の少ない新しい抗精神病薬が開発され、症状がコントロール出来るようになりました。また、心理的、社会的なケアも進んで、過半数の患者さんが回復可能となり、再び家庭や職場や学校に復帰できるようになったのです。統合失調症は、克服可能な病気の一つなのです。

そもそも精神病(心の病)とは?

 統合失調症は、心の病の一つです。「心」というと、一般に「ハート」と言いますが、ハートそのものは「心臓」のことです。どうしてハートが心なのかはさておいて、心は今日の医学では「脳」の作用と考えられています。つまり、脳の細胞が働いた結果とされています。とはいえ、心の病気はすべて脳に還元できるかといえば、必ずしもそうではないようです。さらにわからないのが、心の正常と異常の違いです。誰でも少しはずれたところがあって、どこからが病気で、どこからが正常なのか判断の難しいところです。これは現代の精神医学でも明確な答えが出ていません。人格障害や精神遅滞(知能の未発達)、異常体験反応(神経症)などは、正常な心とつながっていて、正常の偏りではあっても、精神病とは言えないのです。

 では、精神病とは何かを、原因から分けると三つあります。一つは「器質性のもの」です。脳や体の障害が原因で起こる精神病で、たとえば脳の腫瘍、脳血管障害、事故による頭のケガ、甲状腺などの内分泌異常、脳炎やエイズなどの原因によって、重い精神病の症状が出る場合があります。このほか、覚醒剤や麻薬などの使用で精神症状が出ることもあり、なかでも覚醒剤による症状は、統合失調症と非常によく似ているのが特徴です。二つ目は「心因性」です。つまり、心理的な原因で精神病状態になるもので、その原因となる主なものは、大きな事故や災害にあった時、最愛の家族や友人を失った時、虐待やいじめを受けた時、また生死を分けるような体験をした時などで、それは人によってさまざまです。心因性の精神症状の特徴は、原因によって症状も異なり、原因が解決したり克服したりすると、症状もなくなります。中には、統合失調症とよく似た心因反応や短期反応性精神病があるので、注意する必要があります。三つ目は「内因性」です。内因性とは、原因がわからない場合の精神病のことで、体の内側から何らかの原因で起こってくる病気と考えられています。はっきりしたことはわかっていません。内因性の精神病の代表的なものが、統合失調症と躁うつ病です。

 精神病は、主に知覚や思考の面で障害が出るのが特徴的です。まず、知覚障害の面では、五感(見る、聞く、触れる、味わう、嗅ぐ)の知覚のほか、実際にはない「幻覚」が現れることがあります。例えば、存在しない人の声が聞こえたりする「幻聴」や、ないものが見えたりする「幻視」です。次に、思考障害の面では、話が支離滅裂になったり、考えている途中で、誰かが別の考えを吹き込んできたように感じる「思考体験の障害」が起こったりします。また、論理的に間違っていることを正しいと思い込んでしまう「妄想」が起きるのも大きな特徴です。


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