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職場のメンタルヘルスとうつ病 (4/5) : 職場復帰

職場の産業医による環境調整

主治医は、患者さんのリハビリが順調に進んでいると、復職の時期を視野に入れていきます。

しかし、患者さんが復職後におかれる職場での仕事の量や質など、具体的なことはよくわからないのが実情です。 たとえば事務職と危険物を扱うような工場では、仕事の内容や体力、責任など求められるレベルはまったく異なってくるからです。

そこで職場の事情を熟知している産業医の判断が重要となります。 産業医の役割は、労働者が健康で快適に仕事ができるよう、専門的立場から職場のリスクマネジメントをすることです。

復職時期の決定

まず患者さん本人に、前向きな復職意思があることが前提です。 うつ状態がどれほど改善されたかは、評価尺度(HAM−D、MADRS、SDS、BDI−Hなど)により定期的にチェックします。 SASSという社会的適応能力がわかる尺度も参考になります。

復職にあたっては、これらが改善し安定していることに加え、日々のリワークプログラムヘの参加状況など、基本的な生活習慣、集中力や問題解決能力などの作業能力、他者との交流、適切な認知や感情表出などを項目とした評価表に基づき、個人面接をしたうえで、主治医が復職の可能性を判断します。 会社側では、提出された主治医の診断書を参考に、産業医が中心になって患者さんの直属の上司や人事・労務担当者と協議し、本人と面談したうえで、企業としての最終判断を下すことになります。

復職決定に関しては主治医の診断書が重要な参考資料となるわけですから、治療の入り口から会社側の産業保健スタッフとの連携プレーが必要といえるでしょう。 職場復帰のおおまかな目安としては、次の項目があげられます。

  • 復職への十分な意欲
  • 規則正しい睡眠覚醒リズム
  • 安全な通勤が可能
  • 通常の勤務時間内での就労が可能
  • 業務に必要な注意力・集中力が回復している
  • 睡眠により疲労が十分回復する

リハビリ出勤

試し出勤・慣らし勤務・復職プログラム
しばしばあることですが、「十分休養をとって、完全に治ってから会社に出てこい」という上司がいます。 しかし、患者さんの症状が良くなったように見えても、それは仕事上のストレスがない場合なので、いざ出勤・勤務となったとき、患者さんがさらされるストレスの量や質は、桁違いに上昇します。 会社はリハビリのためにあるのではないかもしれませんが、もっともリハビリに適した場が会社であるということを、企業側にもぜひ理解してもらいたいものです。

患者さんは、休職した分を早く取り戻そうと、最初からフル回転で仕事をスタートし、息切れをおこしてしまうことがあります。 そうすると、せっかく回復しかけたのに逆戻りしてしまう恐れがありますから、焦らず徐々に体を慣らしていくことが大切です。 理解ある職場では、回復期の助走期間として半日勤務などの時短勤務や、仕事量の軽減、残業なしといったリハビリ出勤を許可してくれるところもあります。 しかし会社によっては、「リハビリ出勤中はまだ休職扱い」というところもありますので、確認が必要です。

一方で、復職するからには万全の状態で臨んでほしいと、復職初日からフルタイム勤務を要求されることもあります。 また、診断書の期日や傷病休暇の期限が切れてしまうといった理由から、まだ完治していないのに復職を希望する患者さんもいます。 本来、病状の完全な回復を待って復職すべきですが、復職できなければ解雇というケースもあり、現実的には難しい点があります。

厚生労働省では「職場復帰支援の手引き」(2009.3改訂)として指針を示しています。

復職後のフォローアップ(アフターケア)

うつ病は再発しやすい病気であり、再発をくりかえすと根治が難しくなる傾向があります。 したがって、復職後のフォローアップは、再発防止の観点から大変重要となります。

調子が良いようにみえても、睡眠時間をきちんと確保することやストレスを溜めないこと、認知行動療法などリワークプログラムで身につけたことが、復職後も実践できているかどうかをチェックしていくことは、再発予防の観点から大切です。 そのために復職後も外来診療に加え、しばらくは休みの日を利用して、フォローアッププログラムに参加することをおすすめします。

復職すればすべて終了ということではありません。

デイケアプログラムから見えてくるもの

デイケアプログラムでは、外来診療の何倍もの情報量を得ることができるということを、これまでくりかえし強調してきました。

そうしたなかで、外来でうつ病と診断された患者さんの違う側面を見出すことがあります。

たとえば、基本的な生活リズムが整わなかったり、周囲との関わりのなかで軽躁状態が出現して診断を変更したり、スタッフへの攻撃性・依存性、不安障害の併存、本人の気質、周囲への配慮、薬の副作用による落ち着きのなさ、アルコールやギャンブルヘの依存の問題などが浮き彫りになったりと、別の視点からのアプローチが医療者側に求められることがあります。




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