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躁うつ病(双極性障害)の診断基準

双極性障害は、躁から始まるか、それともうつ状態から始まるかは人によって異なります。最近の研究では約3分の2はうつ状態から始まるという報告があります。しかし、双極性障害の患者さんの場合、明らかに躁状態や軽躁状態が現れるまでに、数カ月から数年かかることがありますので、精神科医にとって正確に診断を下すのはなかなか難しいところです。そのため、躁状態になるまでうつ病と診断されても、一概に誤診とはいえません。なぜなら、双極性のうつ状態とうつ病のうつ状態の症状はほぼ同じだからです。また、治療においても、双極性障害であってもうつ病であっても、うつ症状そのものへの治療は共通するところがあります。

もちろん、残りの約3分の1は躁状態からはじまりますので、その後うつ状態が発症すれば、双極性障害という診断は容易になります。このように、初診時にうつ状態で受診するか、躁状態で受診するかによって、下される診断は大きく変ってきますし、その後の治療方針にも影響してきます。ここで、初診時の診断とその後の診断のプロセスを整理すると、4つのケースが考えられます。


○ 躁状態で受診→双極性障害と診断される。
○ うつ状態で受診→うつ病と診断される→その後躁状態が出現する→双極性障害と診断される。
○ うつ状態で受診→うつ病と診断される→治療してもなかなか治らない→その後躁状態が出現する→双極性障害と診断される。
○ うつ状態で受診→うつ病と診断される→治療してもなかなか治らない→難治性のうつ病に→その後躁状態が出現する→双極性障害と診断される。

さて、一般にうつ病と診断された患者さんの内訳をみると、その内の約60%が「1回のみの単極性うつ病」です。残りの内の約30%が「反復する単極性うつ病」で、最後に残った約10%が「双極性障害」と言われています。このことから、いかに10%の双極性障害の患者さんを、早く正しく診断し、適切な治療をするかが、病気回復への決め手にもなります。

そのためには、医師による患者さんへの問診が非常に大切になってきます。いま出現している症状はもちろんのこと、家族からも患者さん本人の普段の様子や病歴など、家族が知り得る少しの情報でも聞き出すことです。意外と、本人も家族も躁状態に気づいていない場合があるからです。また患者さん自身も、過去に躁状態があったことに気づいていたら、素直に話すことです。医師に話すことをためらって話さないケースもありますので、冷静に振り返って、これまでの自分の行動や体調の変化などを詳しく正直に話す必要があります。

DSM-W-TRに基づく診断基準

双極性障害は、気分障害の中のひとつの疾患です。したがって、さまざまな気分障害を構成している病相を知ることが大事です。この病相のことをDSM-W-TRでは、気分エピソードと言っています。気分エピソードには、「大うつ病エピソード」「躁病エピソード」「混合性エピソード」「軽躁病エピソード」がありますが、これらのエピソードはそれ自身の診断コードはありませんので、独立した疾患単位として診断はできません。あくまでも、疾患の診断の構成部分として用いるものです。つまり、双極性障害という疾患を診断するうえで、これらのエピソードは重要な構成要素となりますので、まず個々の気分エピソードについてDSM-W-TRに記載されている内容を紹介します。

気分エピソード

大うつ病エピソード

A.以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分、あるいは(2)興味または喜びの喪失である。〈注:明らかに、一般身体疾患、または気分に一致しない妄想または幻覚による症状は含まない〉

@その人自身の言明(例:悲しみまたは空虚感を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。〈注:小児や青年ではいらだたしい気分もありうる〉
Aほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味、喜びの著しい減退(その人の言明、または他者の観察によって示される)。
B食事療法をしていないのに、著しい体重減少、あるいは体重増加(例:1カ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の、食欲の減退または増加。〈注:小児の場合、期待される体重増加がみられないことも考慮する〉
Cほとんど毎日の不眠または睡眠過剰。
Dほとんど毎日の精神運動性の焦燥または抑止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)。
Eほとんど毎日の疲労感または意欲の減退。
Fほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある。単に自分をとがめたり病気になったことに対する罪の意識でない)
G思考力や集中力の減退、または、決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の言明による、または他者によって観察される)。
H死についての反復思考(死の恐怖だけではない)、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図するためのはっきりとした計画。

B.症状は混合性エピソードの基準を満たさない。

C.症状は、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の著しい障害を引き起こしている。

D.症状は、物質(例:乱用薬物、投薬)の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患(例:甲状腺機能低下症)によるものではない。

E.症状は死別反応ではうまく説明されない。すなわち、愛する者を失った後、症状が2カ月を超えて続くか、または、著明な機能不全、無価値感への病的なとらわれ、自殺念慮、精神病性の症状、精神運動制止があることで特徴づけられる。


躁病エピソード

A.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的で、またはいらだたしい、いつもとは異なった期間が少なくとも1週間持続する(入院治療が必要な場合、持続期間は関係ない)。
B.気分の障害の期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)が持続しており(気分が単にいらだたしい場合は4つ)、はっきりと認められる程度に存在している。
@自尊心の肥大、または誇大。
A睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけでよく休めたと感じる)。
B普段よりも多弁であるか、喋り続けようとする心拍。
C観念奔逸(考えがまとまらず発言がバラバラ)、またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験。
D注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないかまたは関係のない外観刺激によって他に転じる)。
E目標志向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動性の焦燥。
Fまずい結果になる可能性が高い快楽的活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた商売への投資などに専念すること)。 
C.症状は混合性エピソードの基準を満たさない。
D.気分の障害は、職業的機能や日常の社会活動または他者との人間関係に著しい障害を起こすほど、または自己または他者を傷つけるのを防ぐため入院が必要であるほど重篤であるか、または精神病性の特徴が存在する。
E.症状は、物質(例:乱用薬物、投薬、あるいは他の治療)の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)によるものではない。
<注:身体的な抗うつ治療(例:投薬、電気けいれん療法、光療法)によって明らかに引き起こされた躁病様のエピソードは、双極T型障害の診断にあてはまらない>


混合性エピソード

A.少なくとも1週間の間ほとんど毎日、躁病エピソードの基準と大うつ病エピソードの基準を(期間を除いて)ともに満たす。
B.気分の障害は、職業的機能や日常の社会的活動、または他者との人間関係に著しい障害を起こすほど、あるいは自己または他者を傷つけるのを防ぐため入院が必要であるほど重篤であるか、または精神病性の特徴が存在する。
C.症状は、物質の直接的な生理学的作用(例:乱用薬物、投薬、あるいは他の治療)、または一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)によるものではない。
<注:身体的な抗うつ治療(例:投薬、電気けいれん療法、光治療)によって明らかに引き起こされた混合性様のエピソードは、双極T型障害の診断にあてはまらない>


軽躁病エピソード

A.持続的に高揚した、開放的な、またはいらだたしい気分が、少なくとも4日間続くはっきりとした期間があり、それは抑うつのない通常の気分とは明らかに異なっている。
B.気分の障害の期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)が持続しており(気分が単にいらだたしい場合は4つ)、はっきりと認められる程度に存在している。
@自尊心の肥大、または誇大。
A睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけでよく休めたと感じる)
B普段より多弁であるか、喋り続けようとする心拍。
C観念奔逸、またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験。
D注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないかまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)
E目標志向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動性の焦燥。
Fまずい結果になる可能性が高い快楽的活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた商売への投資などに専念する人)
C.エピソードには、その人が症状のないときの特徴とは異なる明確な機能変化が随伴する。
D.気分の障害や機能の変化は、他者から観察可能である。
E.エピソードは、社会的または職業的機能に著しい障害を起こすほど、または入院を必要とするほど重篤でなく、精神病性の特徴は存在しない。
F.症状は、物質(例:乱用薬物、投薬、あるいは他の治療)の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)によるものではない。
<注:身体的な抗うつ治療(例:投薬、電気けいれん療法、光療法)によって明らかに引き起こされた軽躁病様のエピソードは、双極U型障害の診断にはあてはまらない。


双極性障害

双極T型障害

双極T型障害には、別々の6組の基準があります。それは、@単一躁病エピソード、A最も新しいエピソードが軽躁病、B最も新しいエピソードが躁病、C最も新しいエピソードが混合性、D最も新しいエピソードがうつ病、E最も新しいエピソードが特定不能、の6基準です。このうち、@の「双極T型障害・単一躁病エピソード」は、躁病の初回のエピソードだけをもっている人を記述するのに用いられ、他のA〜Eの基準は、反復性の気分エピソードをもっている人の最も新しいエピソードの性質を特定するのに用いられます。

1.「双極T型障害・単一躁病エピソード」

A.1回のみの躁病エピソード(※「気分エピソード」の項の「躁病エピソード」を参照)が存在し、以前に大うつ病エピソードが存在しないこと。<注:反復とは、抑うつからの極性の変化か、または少なくとも2カ月間、躁病の症状がない間欠期として定義される>

B.躁病エピソードは、統合失調感情障害ではうまく説明されないし、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、または特定不能の精神病性障害を合併していない。

2.「双極T型障害・最も新しいエピソードが軽躁病」

A.現在(または最も最近は)軽躁病エピソード(※「気分エピソード」の項の「軽躁病エピソード」を参照)にある。

B.以前に少なくとも1回、躁病エピソード(※「気分エピソード」の項の「躁病エピソード」を参照)または混合性エピソードが存在した。

C.気分の症状が、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の著しい障害を引き起こしている。

D.基準AとBの気分のエピソードは、統合失調感情障害ではうまく説明されないし、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、または特定不能の精神病性障害を合併していない。

3.「双極T型障害・最も新しいエピソードが躁病」

A.現在(または最も最近は)躁病エピソード(※「気分エピソード」の項の「躁病エピソード」を参照)にある。

B.以前に少なくとも1回、大うつ病エピソード(※「気分エピソード」の項の「大うつ病エピソード」を参照)、躁病エピソード(※「気分エピソード」の項の「躁病エピソード」を参照)、または混合性エピソード(※「気分エピソード」の項の「混合性エピソード」を参照)が存在した。

C.基準AとBの気分のエピソードは、統合失調感情障害ではうまく説明されないし、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、または特定不能の精神病性障害を合併していない。

4.「双極T型障害・最も新しいエピソードが混合性」

A.現在(または最も最近は)混合性エピソード(※「気分エピソード」の項の「混合性エピソード」を参照)にある。

B.以前に少なくとも1回、大うつ病エピソード(※「気分エピソード」の項の「大うつ病エピソード」を参照)、躁病エピソード(※「気分エピソード」の項の「躁病エピソード」を参照)、または混合性エピソード(※「気分エピソード」の項の「混合性エピソード」を参照)が存在した。

C.基準AとBの気分のエピソードが、統合失調感情障害ではうまく説明されないし、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、または特定不能の精神病性障害を合併していない。


5.「双極T型障害・最も新しいエピソードがうつ病」
A.現在(または最も最近は)大うつ病エピソード(※「気分エピソード」の項の「大うつ病エピソード」を参照)にある。

B.以前に少なくとも1回、躁病エピソード(※「気分エピソード」の項の「躁病エピソード」を参照)、または混合性エピソード(※「気分エピソード」の項の「混合性エピソード」を参照)が存在した。

C.基準AとBの気分のエピソードが、統合失調感情障害ではうまく説明されないし、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、または特定不能の精神病性障害を合併していない。


6.「双極T型障害・最も新しいエピソードが特定不能」

A.期間を除けば、現在(または最も最近は)、躁病(※「気分エピソード」の項の「躁病エピソード」を参照)、軽躁病(※「気分エピソード」の項の「軽躁病エピソード」を参照)、混合性(※「気分エピソード」の項の「混合性エピソード」を参照)、または大うつ病エピソード(※「気分エピソード」の項の「大うつ病エピソード」を参照)の基準を満たす。

B.以前に少なくとも1回、躁病エピソード、または混合性エピソードが存在した。

C.気分の症状が、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の著しい障害を引き起こしている。

D.基準AとBの気分の症状は、統合失調感情障害ではうまく説明されないし、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、または特定不能の精神病性障害を合併していない。

E.基準AとBの気分の症状は、物質(例:乱用薬物、投薬、または他の治療)や、一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)の直接的な生理学的作用によるものではない。



双極U型障害(軽躁病エピソードを伴う反復性大うつ病エピソード)

A.1回またはそれ以上の大うつ病エピソードの存在(または既往歴)。(※「気分エピソード」の項の「大うつ病エピソード」を参照)。

B.少なくとも1回の軽躁病エピソードの存在(または既往歴)。(※「気分エピソード」の項の「軽躁病エピソード」を参照)。

C.躁病エピソード(※「気分エピソード」の項の「躁病エピソード」を参照)、または混合性エピソード(※「気分エピソード」の項の「混合性エピソード」を参照)が存在したことがない。

D.基準AとBの気分の症状は、統合失調感情障害ではうまく説明されないし、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、または特定不能の精神病性障害を合併するものではない。

E.その症状は、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

気分循環性障害

A.少なくとも2年間にわたり、軽躁病症状(※「気分エピソード」の項の「軽躁病エピソード」を参照)を伴う多数の期間と、抑うつ症状を伴うが大うつ病エピソードの基準は満たさない軽度のうつ病の期間の存在。

(注:小児期および青年期においては、期間は少なくとも1年間はなければならない)

B.上記2年の期間中(小児や青年の場合は1年)、一度に2カ月を超える期間、基準Aの症状がなかったことがない。

C.この障害の最初の2年間に、大うつ病エピソード(※「気分エピソード」の項の「大うつ病エピソード」を参照)や、躁病エピソード(※「気分エピソード」の項の「躁病エピソード」を参照)、または混合性エピソード(※「気分エピソード」の項の「混合性エピソード」を参照)が存在したことはない。

(注:気分循環性障害の最初の2年(小児または青年の場合は1年)の後で、躁病または混合性エピソードが合併すること(この場合、双極T型障害と気分循環性障害の両方の診断が下される)、または大うつ病エピソードを合併すること(この場合、双極U型障害と気分循環性障害の両方の診断が下される)がある。

D. 基準Aの症状は、統合失調感情障害ではうまく説明されないし、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、または特定不能の精神病性障害には合併していない。

E.症状は、物質(例:乱用薬物、投薬)の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)によるものではない。

F.症状は、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

特定不能の双極性障害

特定不能の双極性障害のカテゴリーには、双極性の特徴をもつ疾患で、どの特定の双極性障害の基準も満たさないものが含まれる。例をあげると、以下の5つである。

1. 躁病症状とうつ病症状との間の、非常に急速な交代(数日)で、躁病、軽躁病、または大うつ病エピソードの症状閾値の基準は満たすが、最小持続期間の基準を満たさないもの。

2. 軽躁病エピソードの反復で、エピソード間にうつ病症状を伴わないもの。

3. 妄想性障害、残遺型の統合失調症、または特定不能の精神病性障害を合併する躁病、または混合性エピソード。

4. 慢性のうつ病症状とともに軽躁病エピソードがあるが、それぞれの出現がきわめてまれで、気分循環性障害の診断に至らないもの。

5. 双極性障害は存在するが、それが原発性か、一般身体疾患によるものか、物質に起因するものか、臨床家が決めることができなかった場合。

過剰診断と過小診断の現状

改訂第四版であるDSM-W-TRでは、双極性障害を「双極T型障害」と「双極U型障害」の2つに分類しました。双極T型障害というのは、簡単にいえば、入院が必要になるほど症状が激しく、放っておいたら本人の人生が台無しになってしまうほど躁状態がひどく、またうつ状態も繰り返す病態です。一方、双極U型障害というのは、本人も周りの人も困らない程度の軽い躁状態で、同時にうつ状態を繰り返す場合を言います。つまり、T型とU型の違いは、躁状態の程度の違いによって分けられます。一度でも激しい躁状態があれば、その後、軽躁状態やうつ状態であっても、双極T型障害と診断されます。

この診断基準の元になっているのは、DSMの前身である研究用の診断基準RDC(Research Diagnostic Criteria)です。このRDCでは、躁状態が入院するほど重症の場合と、入院するほどではない軽い程度の二つに分けていました。すると、重症の人がいた家族には重症の患者さんが現れ、入院しなかった軽症の人の家族には軽症の患者さんが現れたのです。この事実から、この二つは独立した疾患であることが分かったのです。

DSM-W-TRでは、躁状態の診断基準を7日間以上毎日躁状態が続いた場合としており、軽躁状態の診断基準は4日間以上軽躁状態が続いた場合としています。本人も周りの人も困らない程度の軽い躁状態が4日間続くだけということになれば、いろいろな症状の人がこの診断基準に当てはまることになります。これは躁うつ病と呼ばれていた頃の診断基準に比べると、少々甘い診断基準になるため、かなり幅広い患者さんが双極U型障害になることになります。

たとえば、躁うつ病という病名で診断されていた頃にうつ病と診断されていた患者さんの一部も、双極U型障害に含まれますし、最近では境界性パーソナリティー障害の方も、双極U型障害と診断される場合もあります。境界性パーソナリティー障害というのは、情動が不安定で、安定した対人関係がつくれない人格障害です。たとえば、他人の気を引こうとして手首を切ったりする人もいますが、このような気分の変動があった人の場合、気分安定薬を処方していました。それが、双極U型障害という新しい診断基準ができたことによって、薬による治療が積極的に行われるようになり、正式な治療として認められるようになってきたのです。最近のアメリカでは、双極性障害の人に、パニック障害やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などのような不安障害との合併が多いという報告もされています。その判断基準は、日本の事情とは少し違うところがあります。

こうした流れの中で、双極性障害と診断される患者さんの数は、T型にU型を加えると、かなり増えてきました。従来の躁うつ病は、双極T型障害にほぼ該当しますので、それにU型障害の診断が加わりますと、双極性障害の概念は広くなっています。アメリカでは、全人口の4.7%が双極性障害であるというデータも報告されていますが、これは少し極端な数字です。こうしたアメリカにおける双極性障害の診断が、いま過剰診断として問題にもなっています。

一方、逆に日本では過小診断が問題になっているとも言えます。本来は双極性障害の患者さんであるのに、誤ってうつ病として診断されて治療を受けているケースが少なくありません。以前に躁状態になったことがある患者さんが、うつ状態のときに診断を受けてそのままうつ病と診断され、不用意に抗うつ薬が処方されて、それを飲み続けてかえって病状が悪化してしまうケースがよくあるのです。双極性障害として正しく診断し、気分安定薬を使って治療していけば、再発は予防でき、仕事も続けられるのです。大事なことは、双極性障害の場合は最初の診断を誤らない事が重要なことです。

自己診断(セルフチェックシート)

双極性障害は、誰でもかかる可能性があります。しかし、病気であると気づかずに見過ごし、専門医の治療を受けていない人はたくさんいます。最近、気分的に少し変だと思ったら、次のチェックシートを使って自己診断してみましょう。そのうえで、早めに専門医の診察を受け、治療をする必要があります。

躁の自己チェック

【設問-1】
[以下の設問のうち、当てはまるものに○をつけてください]
□ 普段とは違う、異常に高揚した気分、開放的な気分が1週間以上続いている。
□ イライラしたり、怒りっぽくなったりしている。 
[1つ、または2つに○をつけた人は、設問-2に進んでください。○がゼロの人は、病的な躁ではありません]

【設問-2】
[以下の設問のうち、当てはまるものに○をつけてください]
□ 肥大した自尊心、また誇大感がある。
□ 睡眠をとらなくても、平気だと思う(睡眠時間が3時間でも十分眠った気がする)。
□ 普段より多弁になる。あるいは喋り続けなくてはならないと思う。
□ 考えが飛躍したり、思考が頭の中をかけめぐっていると感じる。
□ 注意力が散漫になっている。
□ 仕事、学業、性的な面のいずれかで目標に向けた活動が増えた。あるいは焦って活動している。
□ 後で苦痛になるとわかっていても、快楽的な活動を過剰にしてしまう。

《診断結果》
1. 設問-1で、2つに○をつけ、設問-2で1〜2つに○をつけた人は、病的な躁ではありません。
2. 設問-1で、2つに○をつけ、設問-2で3つ以上に○をつけた人は、病的な躁です。
3. 設問-1で、1つに○をつけ、設問-2で4つ以上に○をつけた人は、病的な躁です。
4. 設問-1で、1つに○をつけ、設問-2で1〜3つに○をつけた人は、病的な躁ではありません。

うつの自己チェック

【設問-1】
[以下の設問のうち、当てはまるものに○をつけてください]
□ 最近の2週間、ほとんど毎日、1日中憂うつでしかたない。
□ 最近の2週間、ほとんど毎日、1日中何をやってもつまらないし、喜びも感じない。 
[1つ、または2つに○をつけた人は、設問-2に進んでください。○がゼロの人は、病的なうつではありません]

【設問-2】
[以下の設問のうち、当てはまるものに○をつけてください。ただし、もともとずっと、そのような傾向がある場合は数えません]
□ いつもと違って、最近2週間、ほとんど毎日、ひどく食欲がないか、逆に食欲がひどく増加している。
□ いつもと違って、最近2週間、ほとんど毎日、眠れないか、眠り過ぎてしまう。
□ いつもと違って、最近2週間、ほとんど毎日、イライラしてしかたないか、動きがひどく低下している。
□ いつもと違って、最近2週間、ほとんど毎日、疲れやすくてしかたない。
□ いつもと違って、最近2週間、いつも「自分にはあまり価値がないと思う」
「悪い人間だ」などと考えてしまう。
□ いつもと違って、最近2週間、考えが進まず、集中力や決断力が落ちた状態が続く。
□ いつもと違って、最近2週間、死んだほうが楽だと考える。

《診断結果》
1. 設問-1で、2つに○をつけ、設問-2で2つ以下に○をつけた人は、うつ病ではありません。
2. 設問-1で、1つに○をつけ、設問-2で3つ以下に○をつけた人は、うつ病ではありません。
3. 設問-1で、2つに○をつけ、設問-2で3つ以上に○をつけた人は、設問-3に進んでください。
4. 設問-1で、1つに○をつけ、設問-2で4つ以上に○をつけた人は、設問-3に進んでください。

【設問-3】
 以上の症状のために、ひどく苦しんでおり、仕事や家事、学業などに支障を来たしていますか?
□ はい。
□ いいえ。

《診断結果》
1. 「はい」に○をつけた人は、うつ病である可能性が高いです。
2. 「いいえ」に○をつけた人は、うつ病ではありません。


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