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躁うつ病(双極性障害) 薬物治療

双極性障害に使われている主な薬について詳しく説明します。

リチウム(リーマス、リチオマール)

 リチウムは、双極性障害の治療の基本となる薬です。このリチウムは、天然に存在する単純な無機質で、化学的にこれ以上分割できない物質です。ナトリウム(食塩に含まれる)やカリウムと同族の元素で、1817年に発見されました。そして19世紀の後半に、オランダの医師が気分障害の治療薬として使ったのが最初ですが、あまり注目されませんでした。リチウムの効果が実証されたのは20世紀の中頃になってです。オーストラリアの精神科医であるジョン・ケイドが、モルモットにリチウムを使ったところ、偶然に鎮静効果があることを発見しました。その後、自分自身でも飲んでみて安全性を確認し、10人の躁病患者に投与したところ、全員が劇的に症状を回復しました。リチウムが気分障害に有効であることが確認したのはこの時が初めてです。

《リチウムの効果》

 リチウムが、アメリカで薬品として認可されたのは1970年のことです。毒性についての懸念が背景にありましたが、血中濃度を調べて、一定レベル以下に抑えられていれば危険性はありません。リチウムには、@躁状態を改善する作用、Aうつ状態を改善する作用、B躁状態を予防する作用、Cうつ状態を予防する作用、などの効果があり、これらの作用をもつ薬を気分安定薬と呼んでいます。気分安定薬が持つあらゆる薬理効果をもつ薬は、現在でもリチウムをおいて他にはないでしょう。

 服用量は、重症の入院患者で1日900〜1800ミリグラムが一般的です。効果のあるレベルというのは、普通、血液1リットルあたり0.8〜1.2ミリ当量(1ミリ当量は1000分の1グラム)とされていますから、量を7〜10日かけて少しずつ効果のあるレベルまで上げていきます。薬の効果が出始めたら、量を減らすことが多く、躁病が治まるとリチウムの血中レベルは有害なレベルまであがることがあります。急性の躁病患者さんでは、リチウムを大量に飲んでも血中レベルはそれほど上がりません。それほど重症でない外来の患者さんでは、1日900〜1200ミリグラムで目標の血中濃度に達しますので、1日分を夜1回だけ飲むように指示される医師もいます。これは、患者さんにとっても飲みやすく、また腎臓機能障害のリスクも減らすことができます。

 通常、服用には200ミリの錠剤が使われます。また、リチウム成分の放出が徐々に行われて、血中レベルの変動を最小限に抑えるタイプの調剤もあります。これによって、患者さんの副作用が緩和される場合があります。リチウムを服用することになりますと、血液検査を受けなければいけません。これは、リチウムが影響を及ぼすと考えられる甲状腺や腎臓などの臓器の機能をあらかじめチェックしておき、服用開始後は血中のリチウムのレベルや臓器の機能を定期的に測定することで、服用量の調整に役立てることになります。通常、人間の血液中には、リチウムはありませんので、リチウムの血中濃度を調べたり、器官の機能を調べることは重要なことです。

 このリチウムの血中レベルの検査は、最後に服用してから12時間後に行われます。夜の10時に服用したとしたら、翌朝の10時に検査を受けに行き、血液を採取します。リチウムは、ビタミンB群の吸収を妨げるため、服用している患者さんの場合は、B群の総合ビタミン剤を十分に摂る必要があります。

 さてリチウムには、もうひとつ重要な作用があります。それは自殺予防効果です。リチウムの自殺予防効果は、リチウムが躁やうつの症状を改善し予防する効果とはまた別の効果で、リチウムを服用しても躁やうつが改善されない人であっても、自殺率は低いと言われます。詳しいことは分かっていませんが、おそらくリチウムが衝動性を抑制するためではないかと言われています。気分安定薬で、自殺を予防する効果があるのはリチウムだけです。以上のことから、リチウムは双極性障害の治療や自殺をするうえで、最も基本的で有効性の高い薬として定着しています。

 しかし、患者さんにとっては非常に有り難い薬ではありますが、一方において大変に使い方の難しい薬のひとつでもあります。治療において、血中の濃度を測りながら使用することが定められています。一般に普通の薬は、定められた使用量の倍量くらい飲んでも、それほど問題になることはありません。そのくらいの範囲を、安全な薬の指標としています。ところが、リチウムの場合は、普段飲んでいる量より少し多く飲んだだけで、中毒になってしまうという、非常に安全域が狭い薬なのです。

 通常、リチウムを治療のために使う時は、0.6ミリモーラー(濃度の単位)から1.2ミリモーラーまでの間で使うことになっており、それが1.5ミリモーラーになると中毒症状が発現し、2ミリモーラーくらいになると中毒になります。このように安全域が狭いことが使い方を難しくしているのです。

《リチウムの副作用》

 リチウムを服用し始めたころ、しばしば出る副作用としては、下痢、食欲不振、喉が渇く、頻尿、手の震え、体重の増加などです。これらの症状は、普通の濃度でも出てしまう副作用ですが、一方、薬を飲んでも副作用が出ない患者さんも多数いることも事実です。手の震えについては出ない人もいますが、手の震えは中毒ではなく、治療に必要な0.6〜1.2ミリモーラーの範囲の血中濃度で効いている状態であっても、副作用として出てしまうことがあります。血中濃度が高くなったために出る中毒としては、フラフラして歩けない、意識を失ってしまうなどの症状です。その状態が長く続くと、腎臓に障害が出て、尿を濃縮できなくなり、尿量が増えたり喉がひどく渇いてきます。

 また、いつもと同じ量を飲んでいるのに、急に中毒症状を起こしてしまうことがあります。これは、加齢が原因であったり、また他の病気によって身体にリチウムが多く蓄積してしまうことが原因しています。例えば、腎臓の病気によってリチウムが排泄できなかったり、水分を十分とらなかったために脱水状態になってしまうなど、その時の身体的状況によって、リチウムの血中濃度が急に上がってしまうためです。また。高齢者の患者さんには、しばしば頭の働きが鈍った、情緒的に鈍感になった、記憶力がわるくなった、やる気が起こらなくなった、などの症状を訴えることもあります。

 このほかの副作用として、甲状腺機能低下症というのがあります。これは、脳の下垂体と呼ばれるところから甲状腺刺激ホルモンが分泌されていますが、この甲状腺刺激ホルモンの働きが悪くなって起こるものです。甲状腺機能低下症は女性の患者さんによく見られる症状で、このまま放っておくと双極性障害の経過にも影響がでます。時々、甲状腺刺激ホルモンを測定し、甲状腺機能が低下していないかチェックする必要があります。仮に、機能が低下していても、甲状腺刺激ホルモンそのものを補うことができます。そして問題なくリチウムを飲んで、治療を続けることはできます。

 また、リチウムを飲むことで白血球が非常に増えることがあります。顆粒球といって、最近感染症のときに増えるタイプの白血球ですが、これは増えてもそれほど問題になることはありません。

 リチウムを服用する場合は、他の薬との飲み合わせにも注意が必要です。併用する薬によっては、リチウムの血中濃度が急に高くなることがありますので、一緒に服用する時は必ず医師や薬剤師に相談することです。特に利尿剤(チアジド系利尿薬・ウォーターピル)の場合は注意が必要で、身体のリチウム排出能力を低下させ、血中リチウムを危険なレベルまで上げる恐れがあります。また市販の消炎鎮痛剤も、血中リチウムのレベルを上昇させる可能性があります。

 高血圧用の薬も、リチウムのレベルを上げる可能性があり、逆にリチウムが高血圧薬の効果を下げることもあります。いずれにしても、他の薬がリチウムと相互作用して、急激に血中濃度を高くすることがありますので、一緒に飲んでいる薬に十分注意する必要があります。院外薬局の場合、たいていは薬を出す際に、一緒に飲むと危険かどうかをある程度チェックしてくれます。できれば、他の内科や外科の薬も、リチウムを処方してもらっている同じ院外薬局で処方してもらうと安全です。

《血中濃度の測定》

 リチウムの治療が始まったら、血中濃度を一定に保つために、血中濃度の測定が欠かせません。リチウムは服用してから数時間の間にもっとも血中濃度が上がり、その後徐々に下がってきて、8時間後くらいにもっとも安定した濃度になります。ですから、翌日の午前中の10時くらいに測定しようとするならば、前日の午後10時から11時ころにリチウムを服用しておけば、8時間以上(厳密には12時間後)経っているため、安定した濃度を測ることができます。朝にリチウムを飲んで、その日の午前中に採決すると、非常に高い数値が出ます。8時間以上経った血中濃度の値を、トラフ値といいます。このトラフ値をみて、正しい濃度になっているかをチェックします。最終内服時から12時間経過した時点が最も正確なトラフ値であり、0.6〜1.2ミリモーラーの範囲内であれば薬剤の効果が現れます。

 リチウムの血中半減期はおよそ10時間とされていますので、通常は1日3回飲むことが多いのですが、実際の脳内濃度はもう少し安定しているらしく、必ずしも1に3回飲む必要はないと言われています。腎臓への副作用を考えますと、1日1回まとめて飲んだ方が良いという報告もありますので、寝る前に1日分のリチウムをまとめて服用するのも選択肢のひとつです。薬剤の副作用として、頻度的には稀ですが、薬剤性肝機能障害、薬剤性腎障害、薬剤性甲状腺機能低下症を起こすことがあるため、1〜2ヶ月ごとに医師による定期的な血液検査を行います。


バルプロ酸(デパケン、セレニカ)

 バルプロ酸は、リチウムに継ぐ気分安定薬のひとつとして使われています。バルプロ酸はもともと、抗けいれん薬(抗てんかん薬)として使われていた薬です。てんかんの患者さんが、気分が不安定のためにこのバルプロ酸を飲んだところ、気分が安定してきたことから、バルプロ酸を気分安定薬として検討され始めました。双極性障害の治療として使われ始めたのは、1990年代です。リチウムの代替薬としてまた補助薬として、次第に多く使われるようになりました。アメリカでは1995年に、躁うつ病の薬として米国食品医薬品局(FDA)から正式に認可を受け、リチウム以来の認可となったのです。

 現在では、バルプロ酸は躁状態の改善に高い有効性がある薬として知られていますが、予防的にも有効であるとも言われています。躁状態の治療においては、かなり多めの量を使った方が有効であるとされており、その効果も投与量あるいは血中濃度に比例していると言われます。したがって、躁状態の時は、少し量を増やして使い、落ち着いてきたら量を減していくという方法が良いかと思います。バルプロ酸は、躁の患者さんに不足していると考えられる神経伝達物質・GABAの働きを高めると言われます。脳細胞が正常に機能するために欠かせない天然の必須脂肪酸の一部の機能を肩代わりするのではないかと考えられています。またバルプロ酸は、うつ病状態の予防効果にも期待できるというデータも報告されていますが、この点はリチウムの効果には及びません。

 バルプロ酸治療を始めるにあたっては、医師が血液検査を行って、患者さんの肝機能をチェックします。その後、定期的に血液検査をして肝機能とバルプロ酸の血中濃度をモニーします。治療効果が期待出来るのは、血液1ミリリットルあたり50〜125マイクログラム(1000万分の1グラム)です。この血中レベルを得るために、多くの患者さんは、1日1000〜2500ミリを服用しています。但し、肝臓病のある人はこの薬の服用はできません。また、他の薬との相互作用で注意する点は、抗けいれん薬(とくにカルバマゼピン)です。この薬は、体内のバルプロ酸成分を急速に排出させる働きがあります。バルプロ酸の服用中はアルコールは飲んではいけません。

 バルプロ酸は、リチウムに比べると比較的安全域の広い薬です。血中濃度も、50〜125マイクログラム/ミリリットルくらいの間で使われることがほとんどです。バルプロ酸は通常、甲状腺や腎臓の機能に悪影響を及ぼすことはありません。服用量が多い時でも、リチウムほどの毒性は現れません。副作用はリチウムよりも少ないのですが、飲み始めに吐き気がするとか食欲がなくなるといった消化器系の副作用が出ることがあります。胃腸の不調傾向は、食事後あるいは大量の水と一緒に飲むことで、このリスクは軽減できます。またリチウム同様に体重の増加があったり、飲み始めて数週間は眠気をもよおしたり、肝機能への悪影響、毛髪が抜けるなどの副作用が考えられます。バルプロ酸の毒性の兆候として、不定愁訴、衰弱、倦怠感、食欲不振、嘔吐などがあります。バルプロ酸の副作用は、血中濃度をゆっくり高めることができる除放剤を使うことによって、少し軽減することはできます。また1日1回、寝る前だけの服用で済ませることもできます。

 バルプロ酸の副作用で最も問題になるのは、高アンモニア血症と呼ばれるものです。これはごく稀にしか起こらないですが、意識がボーッとして混乱し、重い意識障害を起こすことがあります。こういう場合は、アンモニアの測定をしなければなりませんが、その測定が非常に難しく、十分注意して測定しないと非常に高い値が出てしまいます。バルプロ酸は、血中のアンモニアのレベルを上げることがあり、これが認知的障害を引き起こしている可能性があると考えられます。

カルバマゼピン(テグレトール、レキシン)

 気分安定薬として、3番目に挙げられるのが、現在国内でも使われているカルバマゼピンです。この薬も、もともとは抗てんかん薬で、これが双極性障害に有効であることが発見されたのは日本です。現在、双極性障害の躁状態に有効であることが証明されており、躁状態の予防にも有効である可能性が指摘されています。

 カルバマゼピンの治療は、通常、1日2回200ミリずつ食後に服用しますが、リチウムと併用する場合は、もっと少量から始めます。効果が現れるのは、1日800〜1200ミリです。場合によっては1600ミリを処方される患者さんもいます。有効な血中レベルは、1ミリリットル当たり、4〜12マイクログラムです。治療開始前と、治療中は定期的に血液検査を行い、白血球、血小板、肝機能などの機能をチェックします。

 カルバマゼピンは、比較的副作用が多い薬です。問題になる副作用としてはスティーブンス・ジョンソン症候群で、最初全身に発疹ができ、放置すると肝臓や脾臓が腫れて高熱が出て、場合によっては生命の危険にいたる重篤な状態になることもあります。発疹が出てきたら、早期に服用を中止する必要があります。こうした副作用は、少量から始め、ゆっくり増やしていくことで症状の軽減ができると言われています。もうひとつ指摘されている副作用では、白血球減少症です。これは、カルバマゼピンが、血液細胞や白血球、赤血球をつくる骨髄などの機能を抑制してしまうことによって起こるとされています。重篤になる前に早めに気づいて、投与を中止するなり、薬剤を変更するなどして経過をみる必要があります。また、服用開始時によくみられる副作用としては、めまい、眠気、ふらつき、吐き気などがあります。毒性の兆候としては、意識の障害、筋肉のひきつり、震え、発熱、のどの痛み、あざの付きやすさ、発疹などあります。

ラモトリギン(ラミクタール)

 ラモトリギンは、日本においては2011年の7月に双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制の効能・効果がある薬として、厚生労働省より承認された新しい薬です。ラモトリギンはもともと抗てんかん薬で、1990年11月にアイルランドで成人部分てんかん患者に対する療法薬として承認されて以来、現在では世界の112カ国または地域で使われています。日本での抗てんかん薬としては、2008年10月に、他のてんかん薬で十分な効果が得られなかったときの併用療法として承認されました。そして2011年に、双極性障害の再発を抑える治療薬として、国内で始めてラモトリギンが認められたのです。この薬は、海外のおもな双極性障害治療ガイドラインで、気分エピソードの再発予防を目的とした維持療法の第一選択薬として広く用いられ、とくにうつ症状の予防に推奨されています。   既に世界84カ国または地域において承認されている実績のある薬です。

 双極性障害は再発を繰り返す疾患で、再発率は1年間で48〜60%、5年間では81〜91%であると報告されています。薬物療法の場合、気分エピソード(そう状態およびうつ状態)の急性期および再発予防が治療上の重要な課題となっています。しかしながら、国内においてはこれまで再発・再燃抑制の適応を持つ薬はなく、治療の選択肢が限定的でした。ラモトリギンが承認されたことによって、国内の双極性障害の再発予防に大きく貢献するものと考えられます。ラモトリギンが、気分の浮き沈みを抑え、そう状態やうつ状態の再発や再燃を防ぐ効果があることは、国内臨床試験でのプラセボ(にせ薬)比較試験で検証されています。半年間にわたる臨床試験の結果、再発までの日数を比較検討したところ、プラセボを飲んでいた58人の平均の再発日数が68日(中央値)であったのに対し、ラモトリギンを飲んでいた45人の患者さんの再発までの日数は平均で169日でした。また、半年間で症状が発現した人の割合は、プラセボで74%、ラモトリギンで53%でした。このように、ラモトリギンは双極性障害の再発を有意に抑制することが明らかになり、症状の再発を軽減することによって患者さんの日常生活に支障のない平穏な期間が長く続くことが可能となったのです。ラモトリギンの有効特性をまとめると、以下のようになります。

  • @、ラモトリギンは、双極性障害における気分エピソードの再発や再燃を有意に抑制することが、プラセボ比較試験で検証された国内初の薬剤である。
  • A、ラモトリギンは、海外ではてんかん薬として20年の実績がり、双極性障害患者における維持療法では約8年の臨床使用経験がある。その有効性や安全性において、豊富なデータの蓄積がある薬剤である。
  • B、ラモトリギンは、長期投与時の忍容性が高く、長期にわたる継続投与ができる薬剤である。
  • C、ラモトリギンは、妊婦さんが服用した場合でも、赤ちゃんが奇形になる可能性(=催奇形成)は他の薬より少ない薬剤である。リーマスのように血中濃度を調べる必要がない。
  •  さて、ラモトリギンの生理学的効果ですが、グルタミン酸やアスパラギン酸のような、興奮性アミノ酸神経伝達物質のシナプス前放出を阻害することで発揮されています。つまり興奮を抑える効果をもっているということです。ラモトリギンは肝臓で代謝され、タンパク質に50%以上の度合で結合しています。ラモトリギンの薬理学的特性ですが、半減期は25時間程度ですので、単純に1日1回の投与が可能です。ただし、バルプロ酸と併用すると、バルプロ酸がラモトリギンの代謝を阻害するために、半減期は60時間と延びます。一方、カルバマゼピンやフェニトイン、プリミドンはラモトリギンの代謝を促進するため、併用した場合は半減期が15時間と短くなります。

     ラモトリギンの基本的な治療法としては、バルプロ酸の投与を受けている場合は、25mgを隔日に投与することから開始し、投与5週目には1日50mgに増量し、6週目に目標用量の100mgにします。またカルバマゼピンやフェノバールなどの投与を受けている場合は、1日50mgから開始し、投与3〜4週目に1日100mgに増やし、投与5週目に200mgに増量、そして投与7週目に目標用量の400mgにします。それ意外の場合においては、1日25mgから開始し、投与3〜4週目には1日50mgに増量、5週目には100mgに増やし、6週目に目標用量の200mgとします。また、薬物相互作用のある薬物を中止した場合は、それぞれ3週間かけて通常の目標用量である1日200mgとします。

     しかし実際的には、ラモトリギンの投与量は50〜200mgが有効範囲といえます。最大投与量は1日500mg以上とありますが、一般には200mg以上投与しても投与量が増えることで利益が増えるというエビデンスは今のところありません。ある研究によると、1日200mgを投与しても400mg投与しても変わりはなかったという報告もあります。そのうえ、発疹のリスクは増量している限り最大となりますので、量を多くすればするほどリスク期間が長くなってしまいます。またある臨床報告によると、1日400mg程度の高めの量を投与したところ、認知面における副作用が観察されたり、そう病の誘発もあったといいます。投与量の増大は、デメリットはあってもメリットには繋がらないということになります。特に、1日25mg以上の急速な増量は、重篤な発疹のリスクがありますので、注意を要します。

     ラモトリギンで起こる副作用についてですが、これまで国内臨床試験で安全性については検証されており、発現した頻度については34.4%にとどまっています。起こったとしても多くは軽度で、発疹、頭痛、胃腸障害、震せん、眠気などがみられますが、重篤な副作用が発現することはありません。臨床的な統計によると、双極性障害の患者さんでラモトリギンを中止したのはたったの2%です。

     ただし、10〜20%では,通常型の発疹が出る場合があり、FDAでは発疹が出たらラモトリギンを中止するように勧告しています。これはまれに死に至る可能性のあるスティーブンス・ジョンソン症候群になる恐れがあるからです。スティーブンス・ジョンソン症候群は、他の薬が原因で起こっている抗生剤アレルギーをもつ人に多く、気管支喘息、自己免疫疾患、枯草熱、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどが危険因子として考えられます。いずれにしても、ラモトリギン薬剤は有効性が高く、副作用も少なくて続けやすい薬なので、患者さんにとっては利益になる薬物療法のひとつといえます。

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