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主な一般的症状

 摂食障害の症状には、大別して「身体症状」「精神症状」「行動異常」の3つがあります。食行動の異常によって、それぞれどのような症状が起こるのか、その特徴について詳しく見ていきます。


身体症状

体重減少

 まず、神経性無食欲症では体重減少がみられるのが特徴です。摂食障害と判断される体重の値は、厚生労働省の診断基準では3カ月以上持続して標準体重の20%以上、またDSM-Wの基準では15%以上の体重減少を認めた場合と定められています。標準体重の算出は身長によって定義されます。一般的な算出方法は〔身長(m)×身長(m)×22=標準体重〕が用いられています。例えば、身長が155cmであれば、身長をメートル単位に直して計算します。1.55m×1.55m×22=52.86が標準体重となりますので、厚生労働省のマイナス20%の基準に従えば42.29kg以下が、一方DSM-Wの15%の基準に添えば44.93kg以下の体重になったとき摂食障害と判断されます。ただし、15歳以下の成長期にある子どもの場合は、正常であっても痩せている人が多いので、年齢に応じた成長曲線によって標準体重が求められます。


 標準体重の算出方法としてもうひとつ有力なのは、16歳以上の場合、身長が160cm以上であれば〔(身長-100)×0.9=標準体重〕、身長が160〜150cmであれば〔50+(身長-150)×0.4=標準体重〕、身長が150以下であれば〔身長-100=標準体重〕の算出方法も用いられています。しかし、この標準体重は、現代の若い女性には適用しがたく、検討されるべき課題とされています。この標準体重は国によって異なるため、ICD-10では国際比較できるようにBMI(体格指数)値の計算式〔体重(kg)÷〈身長(m)×身長(m)〉〕で算出した数値が、17.5以下(平均値は22)も低体重とされています。


 標準体重が求められた理由は、それくらいの体重がもっとも死亡率が低いことが確認されているからです。しかし、若い女性の患者さんに標準体重の話をしてもなかなか理解が得られないのが現状です。実際に10代の女性の平均体重をみても標準体重より少ないのが現状です。標準体重より15%痩せるだけで生理が止まったり、いろいろな身体症状や精神症状が出てくることがあります。さらに30%もマイナスになると、日常生活が困難になります。厚生労働省の研究班が出した基準では、夏季に標準体重のマイナス40%以下で、冬季にマイナス30%以下で、早期入院治療の必要性があるという指針を出しています。いずれにしても、著しい体重減少や急激な体重減少は、生命の危険性を伴うことを知っておく必要があります。


 また、神経性無食欲症の患者さんの場合、体重が大きく減っても、なかなか受診しなかったり、入院を拒否したりするケースがほとんどです。体重減少が病気であるという自覚がないからで、こんな場合は家族や周囲の人がフォローして、入院をすすめることも必要です。低栄養状態になると、甲状腺ホルモンが低下し、体内の代謝が低下します。少ない燃料でどうにか体を動かしている状態といえます。この状態が改善してくると、食事量が増えるために、最初は勢いよく体重が増えることはありますが、そのままどんどん増え続けて肥満になるということはありません。食事がきちんと摂れるにつれて、代謝も良くなり、消費するカロリーも増えていき、体重は次第に安定してきます。 


 一方、神経性大食症の患者さんの場合は、神経性無食欲症の患者さんと比べて少し様相が異なります。大食症とはいっても、体重は肥満者のように過体重になったり、無食欲症患者さんのように極端に痩せることは少なく、標準体重の範囲内にあることが多いです。このため、体型から見ただけではその人が大食症患者さんであることが周囲からは気づかれない場合がほとんどです。


 神経性大食症の患者さんが大食するのは、些細な人間関係で悩んだり、ちょっとしたストレスが誘因となって、いわゆる気晴らし食いという独特な摂食行動をとるのが特徴です。にもかかわらず肥満に対しては病的な恐れを持っています。したがって、肥満にならないように自己誘発性嘔吐(指を喉に突っ込んで吐く行為)をしたり、下剤や利尿剤を乱用したり、また大食と絶食をある程度の間隔をおいてくり返すことで肥満を防ごうとします。このため、体重の変動が激しく、標準体重の上下限の範囲か、それを少し超える程度で揺れ動きます。普通、神経性大食症の患者さんは体型に対してはこだわりを強くもっているため、痩せている患者さんが多いです。それは、神経性無食欲症の患者さんのような身体像の障害ではなくて、社会通念上の痩身賛美を強迫的に志向するためと考えられます。


無月経

 神経性無食欲症では、体重減少に伴って、必ず生理が止まります。生殖機能は、母体が健全であってはじめて成り立つことですから、低体重や低栄養の状態で生理が止まるのは極めて理にかなったことです。大部分の患者さんは体重が減少した後に無月経が生じますが、一部の患者さんにおいては痩せる以前か、または同時期に月経が止まることがあります。また患者さんの中には、かなりの低体重であるにもかかわらず、無月経を認めないケースもあります。DSM-Wでは、月経周期が連続して3回欠如することを基準としています。ただし、すでに婦人科に通ってホルモン療法を受けている場合、ホルモン投与を中止しても月経がこないということであれば、無月経と判断します。


 一般に、神経性無食欲症の場合、体重が回復すれば無月経は改善します。通常、月経が止まったときの体重ぐらいまで回復して、その状態がしばらく維持できれば、生理が再び起こるようになります。標準体重の90%程度まで体重が回復すれば、約90%の確率で月経が再度起こるというデータもあります。規則正しい生理が起こるには、最低でも体脂肪率が17%は必要です。また、体重が戻っていても嘔吐している限りは生理が戻りにくいことがあります。いずれにしても、月経が本来の周期に戻れば、その後の妊娠や出産は問題ないものと思われます。


 一方、神経性大食症の患者さんにおいても、体重が正常範囲にもかかわらず、無月経や月経不順などの月経異常がしばしば見られます。また、患者さんの中には、まれに1カ月に2回ほどの過剰月経を示す場合もあります。


むくみ(浮腫)

 むくみも摂食障害ではよく見られる特徴的な症状です。むくみは体の組織に水が溜まった状態ですが、神経性無食欲症で見られるむくみの原因は低アルブミン(たんぱく)血症、つまり栄養失調によるものです。体重が著しく減少すると、腎臓の機能が低下してむくみの原因となります。むくみは、食事の摂取量が急激に増えた場合にも見られますが、これは一過性のものです。通常のむくみは利尿剤を使って水分を排泄すれば治りますが、神経性無食欲症によるむくみは低アルブミン血症が原因なので、利尿剤を使って見かけだけむくみを取ろうとすると、それが習慣になり、低カリウム血症になる恐れがあります。したがって、神経性無食欲症の場合は、原則的に利尿剤は服用しない方がよいでしょう。 


腹部膨満

 腹部膨満もよくある症状です。これは、消化管の機能が低下していて、胃にある食べ物が十二指腸に行くまでにかなり時間がかかるためです。当然便秘にもなりやすくなります。また食後に激しい痛みを訴えることがありますが、これは内臓のまわりの脂肪までが落ちてしまった結果として、食後に膨張した胃や十二指腸が周辺の血管を圧迫するために痛みが生じます。摂食障害の人は、食べたものは全部出してスッキリさせたいという心理的な欲求が強いために、お腹が張ると下剤を使用することが多くなります。しかし、下剤を使ったからといって、食べたものが全部排泄されるという訳ではありません。実際には、多量の下剤を飲んでも、摂取したカロリーの12%分しか排泄されず、残りの88%は吸収されてしまいます。 


皮膚の症状

 皮膚は乾燥し、かさかさになります。顔面や手のひら、足の裏が黄色っぽくなることもありますが、これはカロチンの代謝が悪くなるために起こります。また髪の毛が抜けることもありますが、これは食事量が減った時期から何カ月か経ってから目立ってくる症状です。その一方、神経性無食欲症では、顔面や背中にうぶ毛が見られるようになります。これらは摂食障害を診断するうえで重要なポイントになります。


血液検査による異常

《低カリウム血症・低血糖》
 神経性無食欲症は、一種の慢性的な自殺行為と言われるくらい生命の危険につながることがよくあります。それは、低カリウム血症と低血糖の状態を招くからです。自分の意志によって嘔吐したり、下剤を乱用したり、利尿剤を使ったりして、食べたものを出してしまう行為をパージングといいますが、このパージングをすると、体にとって重要な電解質であるカリウムが水分と一緒に排出されてしまい、低カリウム血症になります。カリウムは筋肉を動かすのに必要ですが、不足すると手足のしびれやけいれんを起こすことがあります。また、カリウムは心臓を動かすために必要ですが、不足することで疲労感や動悸や不整脈が生じ、重い場合は心不全を引き起こして突然死の原因にもなります。たかが下剤と思っても、乱用すると1日4〜6リットル相当の水分が失われますので、使い過ぎると大変に危険です。また食事量が少ないと、低血糖発作による意識消失が起こりたいへん危険ですので、極端な拒食行為は避けるべきです。
《白血球の減少》
 神経性無食欲症では、しばしば白血球が減少します。白血球は免疫に関係していますが、神経性無食欲症では白血球が減少していてもウイルス感染に対しては意外に免疫力があります。ただし程度によりますが、やせが高度となれば当然感染に対する抵抗力も低下します。一方、赤血球の減少(貧血)はあまり目立ちません。とはいっても貧血は存在するものの、脱水も同時にあるために血液が濃縮されて、みかけ上は正常範囲にとどまっているものと考えられます。従って、飲水量や食事量がもとに戻ってくると血液検査による数値のうえで貧血が現れてくることがあります。また貧血は女性の場合、鉄欠乏性貧血の場合が多いのですが、神経性無食欲症の場合は栄養失調による骨髄の低形成が原因で、ビタミンB12や葉酸が不足しています。 
《肝機能障害》
 肝機能検査では、正常範囲のこともありますが、栄養障害が高度になってきたり、神経性無食欲症の状態から急激に食物を摂取したときに肝機能障害が起こります。通常GOT(AST)やGPT(ALT)の正常値は30〜40程度ですが、この血中の酵素の値が三桁になってきた場合は、定期的な検査を行って経過をみる必要があります。中には、四桁になって重篤な状態になることもあります。また血清アミラーゼ値が上昇することもありますが、アミラーゼには膵臓から出るものと唾液線から出るものの2種類がありますので、どちらのアミラーゼが上昇しているのか詳しく検査する必要があります。嘔吐をすると、唾液腺が刺激されて唾液腺からのアミラーゼが上昇します。
《コレステロール》
 体重減少の初期にはコレステロールが高くなることがあります。HDL、LDLともに増加しますが、この場合コレステロール値を下げる薬を服用する必要はありません。また低栄養が重症化すると、低コレステロール血症になります。
《血糖値》
 血糖値が低くなっている時は注意が必要です。血糖値が下がり過ぎると、低血糖性昏睡となり生命の危険があります。これは、体重減少が著しい場合や、嘔吐の習慣が激しい場合に起こることがあります。  
《その他の内科的検査》
 体重減少にともなって甲状腺ホルモンが低下します。神経性無食欲症では、甲状腺ホルモンが低下することで代謝が低下し、少ないエネルギーでどうにか生きていくことができるように調節されている状態といえます。低体温や徐脈は、この甲状腺ホルモンの低下による作用で、甲状腺機能低下症とは区別する必要があります。摂食障害で甲状腺ホルモンが低い場合は、甲状腺ホルモンの補充をする必要はなく、むしろ逆効果になります。  また、レントゲン検査を行うと心臓が小さくなっている所見がみられます。心電図検査では、徐脈、低電位などがみられます。血液中のカリウムが低い場合には、不整脈を起こすことがありますので定期的な検査が必要になります。また、頭部をCTスキャンやMRIで撮影すると、脳の萎縮がみられることもあります。極端な場合、老人の脳に見られる様な萎縮が認められます。これは体重が減少したときに見られる症状で、体重が回復すると正常化してきます。脳が萎縮すると、思考力や集中力が低下したり、感情の変化、こだわりの強さなどの精神症状と関係しているものと考えられます。脳に限らず、臓器は使わないと萎縮しますから、長期間生理がないと卵巣も萎縮してきます。  摂食障害の患者さんでは、しばしば骨粗しょう症が問題になります。骨折率が高いという報告もあります。これは、閉経後の女性と同じように、女性ホルモンの減少によるものですが、思春期における骨は発育過程にあり、その時期に女性ホルモンが低くなることが影響しているものと考えられます。体重が少ない段階でのホルモン補充療法は、骨密度の回復にはならないという報告もあり、将来的な健康のためにも体重の回復はどうしても必要なことになります。

低身長

 女性の骨端線が閉じるのは21歳とも言われています。理論上はその年齢までは身長が伸びることになりますが、成長期のダイエットの行き過ぎによって、低身長のままになる恐れがあります。


虫歯

 摂食障害の患者さんは、その期間が長ければ長いほど虫歯の数が増え、25歳以上では90%の人に虫歯が見られるという報告もあります。また、20歳以下ですでに歯周にポケットが形成される歯周病がみられます。健康な人の口の中には存在しないカンジダという真菌(性感染症などの原因となるカビの仲間)が、摂食障害の患者さんの約25%から発見されています。嘔吐を続けていると、歯のエナメル質が、胃から逆流した胃酸で溶けてしまうからです。エナメル質はいったん溶けてしまうと元にはもどりません。栄養障害や大食、また吐くことが体への悪影響となっているのです。


吐きダコ

神経性大食症の患者さんの多くは、指などを喉の奥に入れて食べた物を吐いています。これを咽頭反射と言いますが、習慣的に喉の奥に手を突っ込んで吐いていると、手の甲に歯が当たって吐きダコができることがあります。ただし、嘔吐をくり返していると次第に慣れてきて、手指を使わなくても容易に吐けるようになり、米国の調査によると吐きダコの頻度は27.5%とそれほど高くないことが分かりました。咽頭反射を起こすのに、指ではなくフォークなどの器具を使って吐くことも出来ますが、これは非常に危険なことで、フォークを使って吐いているうちにフォークが胃の中まで落ちてしまい、開腹手術を受けた例もあります。


唾液腺の腫れ

 嘔吐をくり返していると、唾液腺(耳下腺や顎下腺など)が酷使されるために腫れてくることがあります。嘔吐を止めると自然に小さくなる事が多いのですが、中には唾液の排出量が一旦減るために、さらに大きくなって疼痛や発熱を伴う炎症を合併することがあります。唾液が大量に出るため血中のアミラーゼの値が高くなりますが、それ自体は問題ありません。 


その他の身体症状

 身体所見で頻度の高いものは、背部の〈産毛(うぶげ)密生〉です。背中などに産毛が密生するのは、摂食障害に特徴的な症状のひとつです。これは痩せて皮下脂肪が少なくなり、低体温に対する身体の防御メカニズムのひとつです。次に多いのが、〈慢性便秘症〉です。これは食事量の減少、催便性食品の減少、脱水、不規則な食事、腸内細菌叢の変化、内臓下垂、腸管筋力の低下、消化管運動能の低下などが原因しています。逆に食事量を増加させると、便秘が悪化することがあります。胃のもたれや便秘のために食事量が増やせないこともあります。下剤を使って下痢を起こすと、便秘はさらに悪化しますので、下痢にならない程度の下剤を使います。


 また〈カロチン症〉になることもあります。これは、代謝遅延によって皮下にカロチン色素が沈着するためで、カロチンの多い野菜を大量に摂取していることも原因となっています。〈低血圧・徐脈・低体温〉症状もみられます。これらはいずれも生体の省エネルギー調節による症状です。体重減少が著しく血圧を低下させ、循環血漿量の減少や、心機能の低下も関与しています。低体温は皮下脂肪が減るためで寒がりになり、36°C以下の低体温者が65%にみられたという報告もあります。脈拍が遅くなる徐脈も起こります。


 また夏でも暑がらず、〈汗をかかない〉ことがありますが、これは痩せに伴う自律神経失調症状です。夏期の熱中症には注意が必要です。栄養状態がよくなると改善しますが、再栄養時にはむしろ多汗になることがあります。また重症の〈冷え性〉になることもあり、夏でもカイロを必要とします。低温火傷も合併し、末梢循環不全を伴って、露出した手や下肢の皮膚が紫藍色に変色し、凍瘡(しもやけ)を合併することもあります。ビタミンE製剤や漢方薬も用いられますが、患部を温めることがもっとも有効です。


 この他、〈低血糖〉〈意識障害〉〈循環器症状〉〈筋力低下〉〈末梢神経麻痺〉〈骨折〉〈筋肉痛〉〈関節痛〉〈脱毛〉〈思考・記憶力の低下〉〈意識がぼんやりする〉〈認知障害〉〈不眠〉〈痔核〉〈失禁・夜尿〉などの症状がみられます。 


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