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パニック障害の治療方法

治療は、まず内科などと同じように問診から始めます。問診には特に時間をかけて、心身の具体的な症状、苦痛の頻度や程度、本人や家族の病歴、仕事や日常生活などについて詳しくお聞きします。次に、身体的な病気がないか、薬物の中毒による発作ではないか、身体的な検査を行って確かめます。また必要に応じて、脳や神経系の検査や心理テストや性格診断テストなどを行った末に、今後の治療方針を決めます。治療は大きく分けて「薬物療法」と「精神療法」の2つがあります。

パニック障害 心理療法

パニック障害の治療は、主に薬物療法が中心ですが、さらに効果を高めるために精神療法を併用しながら治療が行われます。精神療法として広く用いられているのが、認知行動療法と自律訓練法です。

《認知行動療法》

→認知行動療法の詳細についてはこちら

認知行動療法とは認知療法と行動療法のことで、認知(考え方、受け止め方、思い込み、認識、学習など)のゆがみや偏りを修正しながら、行動することによって認識を改めていく方法です。パニック発作自体は、薬物療法でかなり早い段階で改善することはできますが、予期不安や広場恐怖は完全に消えるまでに少し時間がかかります。それは誤った認知、つまり誤った考え方や認識や学習が、予期不安や広場恐怖を起こしている原因になっているからです。

例えば、エレベーターの中で最初のパニック発作が起きたとします。すると、「エレベーターの中」と「パニック発作」という2つの無関係な事柄を一つに関連づけて学習してしまいます。その結果、「エレベーターに乗ると、また発作が起きるのではないか」という予期不安が生じて、次はエレベーターに乗るのを避けようとする広場恐怖へと発展していくのです。

では、実際に認知行動療法を行う手順を追ってみましょう。まず最初は、心理教育です。なぜ、パニック発作や予期不安、広場恐怖が起こるのか、そのしくみについて学ぶことから入り、同時に認知行動療法の意義や進め方についても学び、理解が得られるように指導します。

次に、自分自身の毎日の状況を観察し、ノートに記録していきます。どんな場合に発作が起こるのか、自分が避けている事は何か、またパニック発作の頻度や症状についても、できるだけ正確に客観的に自分を見て記録していきます。また、刺激に対して、過敏に反応しないように、呼吸法や自律訓練法などの訓練を受け、自分を冷静にコントロールできるようにします。

次に、必要以上に不安や恐怖を感じる身体感覚や認識に対して、その解釈に誤りがないかを治療者と一緒に検討し、認知を再構築していきます。それが出来た段階で、最後に実際に恐れている場所や場面、状況に自分をさらしていくことによって、誤った認知を修正していきます。

さて行動療法ですが、自分が恐怖と思っている場所や状況に実際に身を暴露します。もちろん、いきなり恐れている場所に身を暴露すると、非常に大きな苦痛を伴い、逆効果になりかねませんので、医師と相談しながら慎重に進めていきます。

手順としては、まず治療計画を立てます。自分が不安に感じている場所や状況を、不安の程度が強い順にすべてを書き出します。その中で、最も不安が少ない場所や状況からトライし、何日か何回か行動して不安がなくなってきたら次のステップへトライします。そして、最後に最も不安を感じている場所や状況に身を置くことによって、これまでの思い込みや誤った認識を自覚し、恐怖を克服していきます。大事なことは、それぞれの場所や状況に自分をさらしたとき、ここに来ても何も起こらなかったということをしっかり確認することです。

具体的な一例を挙げましょう。電車に乗るのが不安だと思っている人が、一人で電車に乗れるようになりたいという目標をたて行動する場合です。目標に向かい、いくつかの段階に分けて挑戦していきます。

  • ○ 第1ステップ…駅の改札口まで行ってみる。(その場所に慣れたら次へ)
  • ○ 第2ステップ…プラットホームに立ってみる。(その場所に慣れたら次へ)
  • ○ 第3ステップ…誰かに付き添ってもらって1駅だけ電車に乗ってみる。(それに慣れたら次へ)
  • ○ 第4ステップ…1人で1駅だけ乗ってみる。(それに慣れたら次へ)
  • ○ 第5ステップ…各駅停車で2駅以上乗ってみる。(それに慣れたら次へ)
  • ○ 第6ステップ…急行電車で1駅乗ってみる。(それに慣れたら次へ)
  • ○ 第7ステップ…急行電車で2駅以上乗ってみる。(それに慣れたら次へ)

こうして、無理をせず段階を踏んで、1つひとつクリアしていきます。「ここに来ても何も起こらなかった」「大丈夫だった」ことを意識し、自覚し、認知することで、これまでの予期不安がなくなり広場恐怖も解消していくのです。

認知行動療法は、患者さんが意義を理解して取り組んでいけば、非常に高い治癒率で改善していき、再発も低く、治療期間も比較的短くてすむ治療法です。もとの生活に戻していくために、勇気をもって治療に踏み出すことが大切なことです。

《自律訓練法》

自律訓練法は、リラックス法の一つです。6つの背景公式に従って順番に暗示をかけて、自分でリラックス状態を作る方法です。パニック障害では、薬物療法や認知行動療法と併用することによって、予期不安や広場恐怖の解消に大きな効果をあげています。

6つの背景公式とは、@第1公式(重感公式)「両手両足が重たい」、A第2公式(温感公式)「両手両足が温かい」、B第3公式(心臓調整公式)「心臓が規則正しく打っている」、C第4公式(呼吸調整公式)「楽に呼吸している」、D第5公式(腹部温感公式)「おなかが温かい」、E第6公式(額部冷感公式)「額が気持ちよく涼しい」です。

自律訓練法は、1回5分程度で、1日2〜3回行います。訓練法の実際は、まず衣服やベルトをゆるめ、腕時計やアクセサリーなど、身に付いているものをはずしてリラックスし、仰向けに寝るか、または椅子にゆったり座って行います。目を軽く閉じ、足も軽く開き、腹式呼吸をゆっくりしながら「心がとても落ち着いている」と暗示をかけて、第1公式に入っていきます。

第1公式では、利き腕が右手だとすれば右手から始めます。「右手が重たい」「左手が重たい」「右足が重たい」「左足が重たい」「両手両足が重たい」と順番に暗示をかけていき、マスターできたら今度は第2公式に移って、同様に「右手が温かい」「左手が温かい」…とゆっくり心の中で繰り返しながら暗示をかけていきます。こうして第6公式まで行いますが、自律訓練法では特に第1の重感公式と第2の温感公式が重要ですので、この2つだけマスターしても十分効果が得られます。

自律訓練法は、最初は専門家の指導を受けてやることをお勧めします。初めは集中するのが難しく、すぐに重さや温かさは感じられないでしょう。自己暗示をかけたとき、意識的に感じようとしないで、リラックスした状態で自然に重たく感じるのを待ってください。繰り返して練習していけば自然とコツがわかり、慣れてくるとどんな場所でも訓練できるようになります。注意点としては、食事した直後や、空腹時は避けましょう。また、訓練が終わったら必ず消去動作を行ってください。消去動作は、気分がリラックスしてボーッとした状態から心身を目覚めさせる動作のことで、これをしないで立ち上がったりすると、ふらついたり転んだりして危険です。動作の方法は、目を閉じたまま両手を5〜6回握ったり開いたりを繰り返し、次に両ひじを2〜3回曲げたり伸ばしたりし、最後に両手を組み、手のひらが上に向くようにして頭上に上げ、大きく背伸びをしてからゆっくり目を開けます。

自律訓練法がもたらす効果としては、精神の安定・抗ストレス効果・集中力のアップ・疲労回復・血行促進・イライラの解消などがあげられます。

パニック障害 薬物治療

治療の中心になるのは薬物療法で、最も確実な効果が期待できる療法です。しかし、中には薬に対して抵抗感をもつ人が少なくありません。「脳に悪い影響を与えるのではないか」「一生飲み続けるのではないか」「くせになってやめられないのではないか」「副作用が強いのではないか」といった心配をされる患者さんがいますが、決して怖いものではありません。薬に対して不安があれば、遠慮せずに医師に相談されることです。

パニック障害の薬は、かなり高い確率でパニック発作を抑え、予期不安の症状を改善し、軽症であれば完治してしまうこともあります。個人差はありますが、3〜4週間ぐらいの服用で効果が出てきてほとんどの人が普通の生活ができるようになります。症状が改善しても再発予防のため約1年間は薬の内服を続けます。

では、薬物療法とはどのようなものかというと、抗うつ薬・抗不安薬と呼ばれる薬を使って脳や神経に働きかけ、パニック症状の改善をはかる治療法です。私たちは危険を感じると、脳幹にある青斑核からノルアドレナリンが分泌され、その刺激を大脳辺縁系に伝え、初めて不安や恐怖を感じ、身を守ろうとします。

ところが、危険でもないのに青斑核が誤作動を起こし、非常ボタンを押して警報を鳴らしてしまうため、突然激しい動悸や息切れ、めまいの症状を訴えることになります。抗うつ薬・抗不安薬は、この誤作動が起こらないように防いでくれ、発作が起きても、薬が神経の興奮を抑えて非常事態を鎮めてくれます。神経は発作を繰り返すと興奮しやすくなり、少しの刺激でもすぐに反応します。ですから、薬をしばらく服用し続けることによって、少しの刺激ぐらいでは興奮しないように、再発を防いでくれるのです。

【薬物療法の進め方】

  • ○ 急性期の1〜3カ月間は、薬の投与量を症状が顕著に治まる限度まで増量して服用する。
  • ○ 継続期の3〜6カ月間は、効果が最大になり、副作用が最小になるように薬の投与量を調整し、特に広場恐怖に対して効果を高める。
  • ○ 維持療法期の6〜12カ月間は、薬の量を減量していって、改善した状態を維持し、正常な生活に戻れるようにする。
  • ○ 薬物中止期の10〜18カ月間は、時間をかけて減量していき、投薬をしなくとも症状が起こらない状態維持できるようにする。

【主な治療薬の効果と特徴】

◇SSRI(分類名)
パニック障害の薬で、世界的に第一選択となっているのがSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)で、抗うつ薬の一種です。SSRIは、セロトニンだけに選択的に作用してアセチルコリンには影響しないため、副作用が少なく安全性が高いのが特徴です。パニック発作を強力に抑える効果があり、予期不安や抗うつ効果も高く、また広場恐怖や強迫性障害、過食症にも有効です。日本では、現在フルボキサミン(ルボックスデプロメール)とパロキセチン(パキシル)、塩酸セルトラリン(ジェイゾロフト)が認可されています。

SSRIの詳細についてはこちら

◇三環系抗うつ薬(分類名)
パニック障害の薬として最初に開発された薬で、SSRIが開発されるまでは、パニック障害の治療に最も多く使われていた薬です。三環系抗うつ薬は、パニック発作を抑える効果がきわめて高く、予期不安や広場恐怖、強迫性障害にも有効ですが、副作用が強いのがデメリットです。脳神経の機能を活発にするセロトニンとノルアドレナリンの働きを高める一方で、アセチルコリンの働きを低下させてしまうため、口の渇き、便秘、眠気、倦怠感、めまい、動悸、かすみ目、排尿障害、起立性低血圧、認知障害、性機能障害、頻脈、多汗などの副作用があります。用量を必ず守り、低用量からはじめて徐々に増やしていきます。効果が出るのは、最低でも2〜4週間くらいかかります。 現在、治療として認可されている薬には、イミプラミン(トフラニール)、クロミプラミン(アナフラニール)、アミトリプチリン(トリプタノール)、アモキサピン(アモキサン)などがあります。

三環系抗うつ薬の詳細についてはこちら

◇ベンゾジアゼピン系薬物(分類名)
ベンゾジアゼピン系薬物は、脳の興奮を抑えるGABAの働きを高める作用があり、不安や恐怖を緩和する抗不安薬です。いわゆる、俗にいう精神安定剤です。主にパニック障害の急性期に使われ、パニック発作や予期不安を抑える効果があります。 またこの薬物は、SSRIや三環系抗うつ薬の効果が出るのに2〜4週間かかりますが、その間にパニック発作が出たときのみ服用する頓服的な使い方をします。また、認知行動療法を行う際に予期不安を抑える目的で一時的に使うこともあります。ベンゾジアゼピン系薬物は、効果の発現が早くて安全性も高いが、耐性や依存性も生じやすいので、医師の指示に従うことが大切です。主な製剤には、アルプラゾラム(コンスタンソラナックス)やロラゼパム(ワイパックス)、エチゾラム(デパス)などがあります。
◇SNRI(分類名)
SNRIはSSRIに続いて認可された抗うつ薬で、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬です。SSRIがセロトニンだけに作用するのに対し、SNRIはセロトニンとノルアドレナリンの両方に作用するため、抗うつ効果が高く、また副作用も少なく依存性もないので、より大きな効果が期待できます。現在、ミルナシプラン(トレドミン)・デュロキセチン(サインバルタ)が認可されています。

SNRIの詳細についてはこちら

◇β遮断薬(分類名)
この薬は、激しい動悸があるパニック発作には効果があります。もともと、高血圧や不整脈の治療に使われている薬で、交感神経の働きを末梢で遮断するために、不安に伴う動悸や頻脈を緩和します。ただし、パニック発作そのものを改善する効果はありません。製剤名では、プロプラノロール(インデラル)やカルテオロール(ミケラン)などがあります。


パニック障害 漢方薬治療


柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
神経質でビクビクして不安が強く、よく動悸を起こす場合や、対人恐怖や視線恐怖があり人からどう思われているかが過度に不安になるタイプに用いられる。投与量は7.5mg/日
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
適応は柴胡加竜骨牡蠣湯と似るが、もう少し体力が弱い人や、気力が低下している人に用いる。冷えが強い人、胃が弱い人、うつ兆候がある人、寝汗をかく人などの恐怖・不安・不眠が対象となる。投与量は7.5mg/日
甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
柴胡系と違い、パニックや過換気症候群を起こす患者さんや、泣いてばかりで、時に衝動的な行動を起こす患者さん、フラッシュバックに伴う悲哀的感情のある患者さんに用いる。体力が弱くても使用でき、頓服としても利用される。投与量は7.5mg/日
桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
動悸・不安・緊張・不眠などの場合に用いるが、特にフラッシュバックや悪夢の繰り返しなどがある場合に有効。投与量は7.5mg/日
加味逍遙散(かみしょうようさん)
月経周期に関連しておこる不安障害、更年期障害に伴う神経症状、月経症状に伴う不安・イライラ・強迫観念・動悸・胸部症状に用いられる。投与量は7.5mg/日
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
鬱々として不安を伴い、食事がのどを通らない場合に用いられる。投与量は7.5mg/日
加味帰脾湯(かみきひとう)
不安だけでなく、体力・気力が低下している場合に用いる。投与量は7.5mg/日



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