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パニック障害の診断

では、パニック障害の診断はどのようにして行われるでしょうか。診断基準としては、現在次の13項目の症状が対象になります。このうち4つ以上の症状が同時に起こり、10分以内でピークに達して、そのあと30分くらいで症状は治まって行く状態をパニック発作といいます。症状が3つ以下の場合はパニック発作とは言わずに症状限定性発作と言って、パニック発作とは区別しています。

【パニック発作の基準】
  • @動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
  • A発汗
  • B身震いまたは震え
  • C息切れ感または息苦しさ
  • D窒息感
  • E胸痛または腹部不快感
  • F嘔気または腹部の不快感
  • Gめまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
  • H現実感消失(現実でない感じ)、または離人症状(自分自身から離れている)
  • Iコントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖
  • J死ぬことに対する恐怖
  • K異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  • L冷感または熱感
(『DSM-W 精神疾患の診断・統計マニュアル』から)

以前のDSM-V-Rの基準では、パニック発作の診断基準がパニック障害の診断基準に含まれていましたが、DSM-Wではパニック発作の診断基準を独立させています。理由は、パニック発作はパニック障害ではない他の精神障害、例えば特定の恐怖症、社会恐怖、心的外傷後ストレス障害においても、同じような症状を呈するからです。

またDSM-Wでは、広場恐怖を伴わないパニック障害と広場恐怖を伴うパニック障害の2種類の診断基準を挙げていますが、いずれも上記に挙げた13項目のパニック発作のうち4つ以上の症状が突然に発症し、10分以内にそのピークに達するものでなければならないと決めています。

さらに、パニック障害の診断基準を決めるうえで重要な問題は、診断に適合するのに必要なパニック発作の閾値数(症状の程度)および発作の頻度です。閾値数が低すぎると、発作が起きただけでパニック障害ではない人までパニック障害と診断されてしまうし、逆に高すぎると、本来パニック障害と診断されるべき人がパニック障害の診断基準を満たさないことになります。ちなみに、研究用診断基準(RDC)では、6週間に6回のパニック発作が認められることを必要としており、国際疾病分類第10版(ICD-10)では、3週間に3回のパニック発作があれば中程度の病気、4週間に4回の発作があれば重篤な病気としています。そしてDSM-Vでは4週間に4回のパニック発作が起きるか、または1回以上のパニック発作があって、また発作が起こるのではないかという持続的な恐怖(予期不安)が最低1カ月以上続くとしています。

しかし、DSM-Wではパニック発作数と時間枠の必要最小限度は設けていませんが、最低1回のパニック発作があり、それから最低1カ月間以上にわたって、また発作が起こるのではないかと憂慮する場合、あるいは行動上に重大な変化があることが必要とされています。いずれにしても、いつ起こるかもしれない発作に対して常に不安を抱き、生活にも支障を来す状態をパニック障害といいます。

パニック障害診断テスト DSM-Wはこちら


疾患の詳細

パニック障害は、長い経過をたどる病気です。最初は突然のパニック発作から始まって、発作を何度も繰り返し、やがて発作の回数が減ってきます。その後は「発作が起きたらどうしよう?」という予期不安や広場恐怖に変わり、それを避けようとする回避行動も起こります。

こうした過程を経て慢性化し、やがて引きこもりやうつ状態へと移行し、不安障害なども併発するようになります。パニック発作の起きる時期を急性期とすれば、その後の予期不安や広場恐怖、またうつ状態を慢性期ということになります。

パニック障害の確定診断は、一定の時間において激しい不安や恐怖感と一緒に4つ以上の発作がほぼ同時に出現し、10分以内にピークに達して、その後30分以内に症状が消えた場合に限ります。中には、症状が半日以上も続く人もいれば、発病時の発作症状数が6つの人や9つの発作症状を持つ人もいます。一方、症状数が1?3つだけの小発作の人もいます。小発作は、病気の程度が軽い人、不十分な治療を受けている人、激しい時期が過ぎた経過の長い人にみられます。

また、初期のパニック発作の頻度は、人によって違いますが、週に3?7回の人が最も多く、中には毎日1回以上頻繁に発作を起こす人もいます。1週間に4回以上起こり、それが4週間以上続くと重症となります。少ない人では、1カ月に1?3回程度の発作ですみます。初期の発作がしばらく続いた後は、発作の起こる間隔が次第に長くなってきて、発作の強さも軽くなってきます。しかし、その後は慢性期へと移行します。

慢性期に入ると、「また発作が起きたらどうしよう」という不安が一層強くなり、不安が不安を呼んで「発作で死んでしまうかもしれない」「気が狂ってしまうかもしれない」と思い込むようになります。これを"予期不安"といってパニック障害の典型的な症状です。

【不安の内容】
  1. @ 発作症状がまた起こるのではないか?
  2. A 発作により病気になるのではないか?
  3. B 死んでしまうのではないか?
  4. C 気を失ってしまうのではないか?
  5. D 気が変になってしまうのではないか?
  6. E 事故を起こすのではないか?
  7. F 発作を起こしても助けてくれる人がいないのではないか?
  8. G 発作を起こした場所からすぐに逃げ出せないのではないか?
  9. H 人前で自分は取り乱してしまうのではないか?
  10. I 人前で倒れたり、吐いたり、失禁したりするのではないか?
  11. J 他人に迷惑をかけるのではないか?

このような不安の対象が広がっていくと、今度は発作が起こりそうな場所や状況に不安を感じるようになります。これを"広場恐怖"といいます。"広場恐怖"は、もしパニック発作が起きたら、逃げるのが難しい状況、助けが得られないかもしれない状況に対して抱く恐怖感のことです。したがって、人前で恥ずかしい思いをするような場所、すぐに逃げられない場所、すぐに助けを求められない場所にいることに強い恐怖を感じるのです。

【広場恐怖を感じる主な場所】
  • ・閉じ込められた場所、またそこから逃げるのが困難な場所(狭い部屋、エレベーター、トンネル、地下鉄、電車、飛行機、バス、美容院、理容院、歯科医院、映画館、長い行列など)
  • ・混雑した場所(劇場、スーパーマーケット、ショッピングモール、スポーツイベントなど)
  • ・運転(高速道路や橋の上の運転、渋滞中や長距離の運転、誰かが運転しているときでも車内に座っているのが困難な場合)
  • ・外出(家から離れていても安全だと思える距離がある場合、それを超えるのが困難な場合もある。まれに家から一歩も外に出られないケースもある)
  • ・一人でいるとき

このような場所にいると、発作が起きたら困るという恐怖感がありますので、おのずと"広場恐怖"の対象となる場所や状況を避けようとする回避行動をとるようになり、日常生活に支障を来してきます。この"広場恐怖"は、パニック障害の患者さんの7?8割の人に見られます。

発作に対して、不安や恐怖を感じると、外出や行動を起こす気がなくなり、日常生活も出来なくなります。自然と家に引きこもることが多くなって、精神的なエネルギーを消耗し、「何もやりたくない」状態へと陥ります。この状態をうつ状態といいます。

うつ状態はうつ病とは違い、妄想的になったり自殺するようなことはありませんが、何となくだるい、好きなことをしても楽しくない、おっくう、気分が憂うつ、さらに食欲や性欲も低下し、仕事や勉強に集中できなくなって不定愁訴を訴えるようになります。中には、うつ病を併発する人もいます。

いずれにしても、慢性化したパニック障害は、治療が長くかかるので、できるだけ早期に発見し、適切な治療を受けることが大切です。
次に、パニック障害と関連する病気としては、同じ不安障害である「強迫性障害」「全般性不安障害」「ストレス障害」「恐怖症」などを併発することもあります。また、間違えられやすい病気としては「過呼吸症候群」があります。過呼吸症候群も、突然に呼吸が激しくなって、めまいや耳鳴り、不安に陥って一見パニック発作に似た症状が現れますが、これはまったく別な病気です。

ただし、パニック障害を起こしたとき、過呼吸症候群を併発している患者さんも少なくありません。過呼吸による息苦しさや不安が、パニック発作をエスカレートさせる要因にもなります。

この他、よく似た病気に「低血糖」「狭心症」「不整脈」「僧帽弁逸脱症」「褐色細胞腫」「更年期障害」「甲状腺機能亢進症」「側頭葉てんかん」「メニエール病」など、心臓の病気や甲状腺、内分泌ホルモンの病気です。これらは、いずれも循環器の異常やホルモンの異常によって、パニック発作と同じような激しい動悸や息切れ、めまいなどの症状を伴います。動悸や息苦しさがあったからといって、ただちにパニック発作を疑うのは危険です。血液検査や心電図検査などの基本的な検査をすれば、それがパニック発作かそうでないかはすぐに判別できます。パニック発作は、体に異常がないことが、診断基準のひとつになっているからです。

また、働き盛りはパニック障害が起こりやすい年代であると同時に、心の病にかかりやすい年代でもあります。「統合失調症」「気分障害」「摂食障害」「依存症」「過敏性腸症候群」などは心の病を代表する病気で、原因は日常的に抱えている悩みやストレスによることが多いです。

心の病の原因は複雑で、外因(身体的要因)、内因(生物学的要因)、心因(心理社会的要因)の3つの原因によって起こると言われています。外因は、薬物や脳の病気などによって起こる脳の機能障害により、内因は遺伝的な素因や個人の素質などによるものです。心因は、その人の考え方や行動が原因していると考えられます。

パニック障害は、また依存症との関係もあります。「アルコール依存症」「薬物依存症」「カフェイン依存症」「ニコチン依存症」などがそれです。アルコール依存症は、お酒で不安を紛らわせようとしてお酒をのみ、次第に量が増えていって依存症になるケースです。アルコールで一時的には不安が軽くはなっても、醒めるとリバウンドが起こり、かえって不安が強くなります。アルコール依存症になると、むしろ心が不安定になり、言動も荒くなって判断力が低下しますので、酒の力に頼らないことです。

薬物依存症は、覚醒剤、麻薬、マリファナ、コカイン、咳止めシロップ、シンナー、タバコなどに依存することで不安から逃れようというものです。薬物による脳や神経への作用は、やがて心身に深刻な影響を及ぼすことはいうまでもありません。薬の種類によっては、パニック発作にも似た症状を起こしますが、薬物の刺激による発作は、パニック障害とは区別されます。

コーヒーや紅茶、また緑茶も多く摂り続けると、カフェイン依存症になります。コーヒーなどに含まれるカフェインは神経を興奮させる作用がり、1日250ミリグラム以上摂取すると依存症になって、パニック発作が起こりやすくなります。また急にやめると、離脱症状を起こし、頭痛や疲労感、吐き気や不安感を訴える原因にもなります。

タバコに含まれるニコチンも、神経を興奮させる作用と鎮静させる両面の効果があって、特に興奮作用はパニック発作を招く原因になります。健康にもよくないので、禁煙をすすめます。

※参考文献
  • ・『カプラン臨床精神医学的スト』(メディカル・サイエンス・インターナショナル刊)
  • ・『DSM-W-TR精神疾患の分類と診断の手引』(医学書院刊)
  • ・『パニック障害の治し方がわかる本』(山田和男著/主婦と生活社刊)
  • ・『パニック障害 心の不安はとり除ける』(渡辺登監修/講談社刊)
  • ・『パニック障害ハンドブック』(医学書院刊)





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