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パニック障害の原因

パニック障害の症状が起きる原因は、脳の構造や機能の生物学的異常にあるとされています。パニック障害は、病態生理学的には末梢と中枢神経系の両方の調節障害が関わっているといわれます。研究では、パニック障害患者さんの自律神経系において、交感神経系の緊張が亢進していることや、繰り返される刺激に対して順応が遅いことや、中程度の刺激に対して過剰に反応することなどが報告されています。この障害と深く関わっているのが、脳内にある神経伝達物質と言われています。 私たちの脳は140億個の神経細胞(ニューロン)から出来ており、この神経細胞同士がネットワークを作って、お互いに情報を交換していますが、その情報交換の仲立ちをしているのが、神経伝達物質です。この物質がバランスを崩したり、うまく働かなかったりすると脳にさまざまな障害が起こります。

パニック障害に関与している神経伝達物質といえば、ノルアドレナリン、セロトニン、γ-アミノ酪酸(GABA=ギャバ)の3つのモノアミンです。この中で、セロトニンは、ノルアドレナリンによって引き起こされる不安感が行き過ぎないように抑えて活動を調整する役目をもっていますが、そのセロトニンが不足したり、または過剰分泌になっても不安の要因になっているとも言われます。 一方、γ-アミノ酪酸も神経細胞の興奮を抑え、不安を軽くする働きがあります。ところが、ストレスによってDBI(ジアゼパム結合阻害物質)という脳内物質が増えると、γ-アミノ酪酸の働きを邪魔します。そのため、γ-アミノ酪酸は神経細胞の興奮を抑えることができなくなり、不安が起こる結果となります。つまり、DBIのためにγ-アミノ酪酸がうまく働かないことが、パニック発作を引き起こす一因となっているのです。

生物学的には、脳幹の青斑核にはノルアドレナリン系神経細胞が、正中縫線核にはセロトニン系神経細胞があります。そして、大脳辺縁系(扁桃体)は予期不安の発生に関与している可能性があり、また前頭葉は恐怖症的回避の発現に関与しています。 私たちは危険に直面すると、脳幹にある青斑核から神経伝達物質であるノルアドレナリンが分泌され、その刺激を大脳辺縁系に伝え、初めて恐怖や不安を感じて危険から身を守ろうとします。

つまり青斑核は、不安や恐怖などの感情をつかさどる部位であり、大脳辺縁系は喜怒哀楽や本能をつかさどる部位であり、前頭葉は創造・思考・意志・感情など人間らしさをつかさどり、行動をコントロールする働きをしています。

ところが、何らかの原因で青斑核が正常に働かずに誤作動を起こすと、危険でもないのに危険を感じて、青斑核から大量のノルアドレナリンを分泌します。ノルアドレナリンは直ちに大脳辺縁系に情報を伝え、自律神経の中枢である視床下部に指令を出して、動悸やめまいなどの自律神経症状を引き起こします。これが、パニック発作を生じさせるメカニズムです。

さらに発作を起こしたことで、大脳辺縁系は予期不安を感じ、その興奮を今度は前頭葉に伝えます。発作を感知した前頭葉は、広場恐怖を発症させることにつながっていきます。このように、パニック障害は、心因性の病気ではなくて、脳の機能障害によって起こる病気であることが理解できます。

パニック障害は、この脳内不安神経機構の異常のほかに、発症にはストレスが大いに関係しているという報告もあります。パニック障害の患者さんの多くが、発作を起こす数カ月前に、必ずといっていいほど苦痛となるストレスを体験しています。つまり、特に心理的な反応がパニック障害を引き起こす可能性を高めているのです。

では、ストレスとパニック障害はどのような関係なのか詳しく見てみましょう。私たちはストレスを感じると、脳ではノルアドレナリンが分泌されます。ストレスには物理的なストレスと心理的なストレスの2つがあって、物理的なストレスは、脳全体からアドレナリンが分泌されて広範囲に脳を刺激し、時間が経てば消えますが、心理的なストレスの場合は視床下部や青斑核、扁桃体の部分を集中的に刺激するため、ストレスがある限り不安や情動の変化が続くことになります。 ストレスが脳を興奮させることで、神経伝達物質のバランスを乱す引き金になっているということです。その意味では、ストレスはパニック障害の直接の原因というよりも、発作をおこす"誘因"であり、 "きっかけ"や"引き金"になっていると考えられます。

では、どのような事がストレスになるかというと、就職・退職・栄転・昇進・失業・単身赴任・結婚・離婚・不倫・別居・妊娠・出産・病気・事故・子供の受験・入学・進学・子供の結婚・引っ越し・家の新築・旅行・配偶者の死・近親者の死・失恋・ペットの死など、辛いことも嬉しいことも全てストレスになります。しかし、ストレスは人によって程度が違います。同じストレスであっても、強く感じる人もいれば、それほど感じない人もいます。

ストレスが体の病気の原因になっていることはよく知られていますが、主な病気を挙げると、気管支ぜんそく・片頭痛・筋緊張性頭痛・頸肩腕症候群・円形脱毛症・緑内障・甲状腺機能亢進症・神経性嘔吐・神経性狭心症・摂食障害・過呼吸症候群・本態性高血圧症・関節リウマチ・腰痛症・書痙・更年期障害・自律神経失調症・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・潰瘍性大腸炎・過敏性腸症候群・痙性斜頸・メニエール病・インポテンツなど、多岐にわたっています。

そして、このストレスがパニック発作のきっかけになっているという意味では、ストレスに弱い人や、常にストレスにさらされている人は、パニック障害になりやすいので、出来る限りストレスを避けることが重要です。また、同じストレスを受けながら、パニック障害を起こす人と起こさない人の差もあります。

働き盛りの人にとって、最もストレスを受けやすい所といえば職場であり、仕事の内容です。ストレスがパニック発作の引き金になっているとすれば、職場や仕事でのストレスを軽減させる努力が必要です。特に最近、職場のストレスが原因で「職場不適応症」(出勤を拒否する)の人が増えています。職場で一番多いストレスといえば人間関係です。上司や同僚との人間関係がうまく築けず、孤立無援になっているのが原因です。 職場のストレスには次のようなものがあります。「人間関係」「仕事の量と質」「会社の将来に不安」「役割の混乱」「技術や能力が活かせない」「勤務形態」「裁量権がない」「悪い環境」「技術革新」「仕事と私生活の葛藤」などが挙げられます。このようなストレスで悩む一方、不安やむなしさから逃れるために、何かに頼ってしまう依存症の落とし穴にはまってしまう人も少なくありません。

一見、仕事人間と思われていた人が、実は"仕事依存症"だったケースがよくあります。仕事が生き甲斐といい、仕事熱心で、いつも仕事のことしか頭になく、疲れていても休まずに会社に行きます。それは、自分の仕事の達成感ではなくて、他人から認めてもらい評価してもらうことで安心を得ているのです。しかし、体や心はストレスで悲鳴を上げています。そんな無理な状態が長続きするわけがなく、やがて破綻します。その先にあるのは、パニック障害、うつ病、心身症、などの精神疾患、または生活習慣病などの病気、家庭の崩壊です。心の健康を守るためにも、ストレスの解決が緊急の課題です。

この他、パニック障害の原因として遺伝的素因も考えられると言われます。高血圧や糖尿病のような遺伝的な体質が、パニック障害を起こしやすくしていると言われます。さらに、肉親などにパニック障害の人がいる場合は、発症率が一般の人に比べて8倍も高いという報告がアメリカで行われました。環境要因を指摘する学者もいます。例えば親と死別または離別した人、また親から虐待を受けた人においてもパニック障害はそうでない人よりも多くなります。

では、性格とパニック障害の発症率の関係はどうかというと、こちらはほとんど関連性がありません。しばしば、自分は「気が弱いから」、「神経質で依存的だから」という理由でパニック障害になったという患者さんもいますが、それは誤解で、性格とパニック障害の関連性はないのです。

パニック発作を誘発しやすい物質にはどんなものがあるかというと、タバコ、コーヒー(カフェイン)、ドライアイス(二酸化炭素)、ソーダ(二酸化炭素)などがあり、刺激に敏感な体質の人の場合も発作が起こりやすいです。また過労、寝不足、深酒、生理の前、季節の変化なども発作を誘発する要因です。

以上、パニック障害の原因と考えられる項目をいくつか挙げましたが、現在のところ原因究明には至っていません。いろいろな要素が重なって発症する可能性が高いとみられます。現在のところ、原因はあくまでも脳内不安神経機構の異常という身体因性(生物学的)によるもので、心因性によるものではないと言う考えが主流です。

疫学的統計頻度

パニック障害にかかる割合は、現在日本では100人中に2〜4人と言われており、日本全国には200〜400万人の患者さんがこの疾患で苦しんでいます。性差でみると、国内では男性と女性の患者さんはほぼ同じくらいの割合か、やや女性の方が多く発症しています。

一方欧米諸国では、男性1人に対して女性は2人以上の割合で発症すると言われています。アメリカの臨床精神医学者・カプラン博士の報告では、女性の障害は男性の2倍から3倍と言われています。この性差の開きは男性のパニック障害が過小診断されている結果によるのではないかと記しています。

好発年齢は働き盛りの若い人に多く、男性では25歳から30歳くらいがピークになり、女性では35歳前後の発病が最も多くみられます。






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