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心理療法

対人関係療法(人間関係療法)

 対人関係療法というのは、双方において影響しあっている対人関係の機能を改善していくことによって、不安症状を減じていく療法です。考え方としては、「不安がなくなれば対人関係が楽になる」という思いで治療するのではなく、「少しの不安を感じながらも、対人関係を改善していけば、自信がついて不安も軽くなってくる」という方向で取り組むことです。これまでも述べてきたように、社交不安障害の人は「否定的(ネガティブ)な評価を恐れる→だから対人関係を避ける→ますます否定的な評価を恐れる」といった悪循環に陥っているわけですから、それを対人関係療法でもって「否定的な評価を恐れる→実際に人とやりとりしてみたら、ある程度の成果が実感できた→少し自信がつき、次のやりとりをしてみる気になった」という方向へ、自分を軌道修正していくことです。少しずつ自分をコントロールしていくのです。もちろんこれは地道な作業ですが、しかし努力して繰り返していけば、徐々に変化は起きてきます。これは、ある意味で実験のようなもので、とにかくやってみることに意義があり、失敗に思えることも含めて一つ一つ前に進んでみることが成功体験であり、自信につながっていくものです。

 社交不安障害における対人関係療法は、定型的には16回ぐらいの面接をするなかで行われます。では毎週面接をおこなえば4カ月間ぐらいで完全に治るのかというと、そう簡単なものではありませんが、面接のやり方がわかると、続けていく段階で自分はよくなるという感覚がもてるようになります。つまり、不安が減じたという実感であり体験であり経験です。その延長線上に、自分で自分をコントロールできるようになれば、不安が不安でなくなるようになります。対人関係療法のポイントをまとめると、次のようになります。

自分をもっと認める

 人間関係がぎくしゃくしてくると、人間はつい悪者探しをしたくなります。まじめに考えようとする人の場合、その悪者は往々にして自分自身になります。自分の欠点を探し出して、自分たたきを始めます。自分で自分のあら捜しをしますから、欠点はいくらでも見つかりますし、辛さは増すばかりです。しかし、人間はそんなに簡単に自分を変えることは出来ません。欠点もありますが、それ以上に現在の自分にもプラス面がいろいろあるはずです。自分で自分のことを受け入れていないのであれば、他の人はそれ以上に受け入れてくれないものです。もっと自分のことを信じて、ありのままの自分を受け入れるところから始めることが大切です。

問題点は何かを具体的に考えてみる

 人付き合いがうまくいかなくなって原因探しをするときに、人間性を批判しがちです。「こんなことをした自分は駄目な人間だ」と自分を責めたり、「こんなことをするなんてひどいやつだ」と相手を責めたりするのです。しかし、それでは事態の解決になりません。なぜ人間関係がうまくいかないのかといった大きな問題ではなく、お互いの間にどのようなことが起きていて、どの部分でうまくいかなくなっているのかということを丁寧に考えてみることが必要です。そうして具体的な問題を浮き彫りにすることができれば、それに対する解決法も見つかりやすくなります。

完璧な人間関係はない

 人間関係がうまくいかなくなると、生じている問題にばかりに目を向けて、自分を追い込んでいってしまうことがあります。「これがいけない」、「あれがいけない」と、次々と問題が目に付いて、取り返しがつかないような気持ちになってしまうのです。しかし、すべてがうまくいく完璧な人間関係などありません。お互い違う世界に生きている人間なのですから、うまくいくこともあれば、ぶつかることだってあります。いくら恋人でも、家族でも、人はそれぞれ違う世界に生きています。「何でもわかりあえるはずだ」、「なんでもわかってもらえるはずだ」と期待しすぎると、人間関係は辛くなるばかりです。

意見の食い違いを恐れすぎない

 人間関係が窮屈だと感じているとき、人間は少しでも意見が食い違ってはいけないと考えて、自分の気持ちを抑え込んでいることがよくあります。しかも、そうしたことは親しい人の間で起こりやすくなります。相手の人を大切だと思えば思うほど、同じ考えでいたいと思うからです。少しの食い違いが、取り返しのつかない問題になるのではないかと恐れることさえあります。しかし、少しくらい意見が違っても、それですべてがだめになってしまうことは滅多にありません。そうした食い違いがあっても、それを認め合うことで人間関係に幅が出てきます。それくらいでだめになる関係であれば、どんなに配慮をしても、いずれどこかで破綻してしまうでしょうし、それはそれで構わないのです。

言いづらいこともしっかりと伝える

 相手の人と違う意見を口にするのはなかなか難しいものです。「相手が不快な気持ちになるのではないか」、「腹を立ててしまうのではないか」と言った心配が、次々と頭に浮かんできます。しかし、はっきりと口にしなければ伝わらないこともあります。黙っていたために、かえって後で関係がこじれてしまうことさえあります。要は、それをどのように伝えるかなのです。かといって、無理して気のきいたことを言おうとする必要もありません。相手の気持ちを傷つけすぎないように、表現の仕方さえ工夫すればよいのです。どうしても自分から言いにくいことは、他の人に伝えてもらうというやり方もあります。自分の意見を伝えることを恐れすぎないことが大切です。

言葉に頼り過ぎない

 自分の気持ちを相手の人に伝えるとき、言葉が大切な役割を果たすことはもちろんですが、言葉だけですべてが済むわけではありません。言葉が持つ意味は人によって違いますし、お互いの関係によって意味が違ってくることもあります。「それでいいよ」という同じ言葉でも、本当に同意していることもあれば、しぶしぶ同意していることも、腹立たしく感じていることもあります。人付き合いでは、言葉にならない言葉を伝えたり、感じ取ったりする必要があります。コミュニケーションは、言葉の内容はもちろん、態度や雰囲気、言葉の抑揚や調子など、私たちの存在すべてを使って行うものなのです。

思い込みから自由になる

 人間は現実を現実のまま客観的に見ているわけではありません。現実判断には、かなり自分なりの思い込みが影響しています。だからこそ、相手のことを即座に直感的に理解して、リズミカルな人間関係を作り上げることもできますが、いったんその歯車が狂いだすと、マイナス思考がどんどんわいてきて、関係がぎくしゃくしていくこともあります。「私のことが嫌いなんだろうか」という疑問が、「私のことを嫌いに違いない」という思い込みに変わるのに、そんなに時間はかかりません。人間関係が辛くなったときには、自分の思い込みに根拠があるかどうか、立ち止まって考えてみることも大切です。

思い切って自分流を捨てる

 人間関係に限らず、私たちは、自分のしていることがうまくいかなくなればなるほど、自分流のやり方にこだわるようになります。問題が起きると、人間はまず自分がやり慣れた方法で対処しようとします。それが一番良いと感じるからそうするのですが、それだけに、その方法がうまくいかないと自分が否定されたように感じて、ますますそのやり方にこだわるようになります。「うまくいかないはずがない」と考えて、自分流にこだわってしまうのです。それでは問題が解決できるはずがありません。思い切って自分流を捨てて、新しい視点から問題を眺めてみることも必要です。

困ってもよい

 人間は、すべての人といつも仲良くできるわけではありません。相性のあう人、あわない人、いろいろいます。仲のいい人であっても、ときには喧嘩をします。大事なことは、そうした問題が起きたときにどのように解決するかなのです。問題を一つ一つ解決して、それをその後の人間関係に生かせばよいのです。困らなければ問題は見えてきませんし、困る中に解決のヒントが隠されていることがよくあります。困ることを恐れず、自分を信じ、相手の人を信じて辛抱強く付き合ううちに、また新しい人間関係が出来上がってきます。

  • ○とにかく、30秒でいいから、相手の話をじっくり聞いて、「つらいだろうね」「楽しかったね」「せつないね」と、短い感情表現をする。
  • ○たまには親しい人に、「1日1回はあなたの声を聞かないと落ちつかないわ」と、返事のあとに一言う。別れるときは、「また、会おうね」「待っているからね」と、ひとことつけ加える。
  • ○話すときは、相手が割りこめるように間をつくって話す。また、会議ではないのだから、話の流れにあまり縛られないように。
  • ○相手の短所(欠点、弱点)が見えたりして、あからさまになっているときは、あえてふれないでそっとしておいてあげる。そういうときは、むしろ、自分のカッコ悪い部分を出してみる。
  • ○家庭や職場や町内で、親子、上司と部下、隣近所のトラブルや争いごとがあったら、そこに物理的に近づいてみる。勇気が出せたら、そのあいだを割って通り過ぎてみよう。「あっ、すみません」と言って。
  • ○相談や悩みごとをもちかけられたとき、アドバイスや励ましを求められても、ひと息つきながら、うなずくだけでまず聞きつづけてみる。
  • ○ごちゃごちゃに疲れたら少し離れて、またさびしくなったらすんなりと戻っていける。そんな日常をもてるように努力してみる。
  • ○親や上司や友人に腹が立ったりしたら、「その人と自分との関係、その人の置かれている立場に腹が立っているんだ」と思って、「親(上司)だから、そんなふうに言いたくなるんだよね」と、少しへりくだり、つぶやいてみる。
  • ○「なじんでいる」ことに対して、喜んで、具体的にほめてあげる。
  • ○身近な人が失敗したときは、それがその人のすべてだとは思わず、こんな部分もあるんだと見直してあげる。そして、心の底から「しかたがないよ、そんなこともあるよ」と、あきらめでもなく、なぐさめでもなく、言ってあげる。
  • ○まわりの人に本音をはいてもらうためには、建て前や開き直りや見せかけでなく、自分の弱さもふくめ、自ら本音で話す。
  • ○自信のない「心のくせ」が湧き起こってくるようなら、そのくせを最初にみんなの前で、「私、人前に立つとすぐあがってしまって」「僕、不安になると声が小さくなって」「私、ドキドキすると突っけんどんになるんですよ」などと、可能な範囲で打ち明けてみる。
  • ○大切な人から見捨てられそうな不安が湧いたときには、相手に対し、自分の足りないところ、迷惑や悲しい思いをさせている部分について、ごまかさず、埋めあわせをするよう努力する。
  • ○向こう三軒両隣、まず相手の目を見て、次に声に出して「おはようございます」と挨拶してみよう。ちょっと迷ったときでも、ひとまず頭を下げてみる。



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