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治療方法

二つの治療法

 社交不安障害の治療には、現在、大きく分けて「薬物療法」と「精神療法」の二つがあります。薬物療法というのは、薬を用いて社交不安障害の症状を抑え、改善をはかる治療法のことです。主に使われる薬は「SSRI」「TCA(三環系抗うつ薬)」「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」「βブロッカー」(β遮断薬)などです。一方、精神療法は他に「心理療法」または「カウンセリング」とも呼ばれています。この精神療法の中には「認知行動療法(CBT=Cognitive Behavioral Therapy)」と「対人関係療法(IPT=Interpersonal Psychotherapy)」の二つの療法があって、患者と医師などの治療者が話し合いによって問題を解決していく治療法です。

 社交不安障害には、全般性社交不安障害(ほとんどすべての状況で著しい不安を感じる)と非全般性社交不安障害(特定の社会的状況、たとえば人前で話したり文字を書いたりするときだけ強い不安や恐怖を感じる)の二つに分けられますが、後者の非全般性社交不安障害の患者の場合は、薬よりも認知行動療法を中心に治療する場合が一般的です。しかし、患者によっては、SSRIが効果的な場合もありますし、また不安症状を抑えるためにベンゾジアゼピン系抗不安薬やβブロッカーなどを頓服薬として使用することもあります。全般性社交不安障害の症状が重い患者においては、薬物療法と精神療法を組み合わせた治療が行われます。初めは、SSRIなどの薬物をつかって治療をすすめていきますが、薬物だけでいったんは改善しても、再発することが少なくないことから、認知行動療法なども併用して治療をすすめていくことになります。

薬物療法

 社交不安障害の治療に用いられる薬には、大きく三つのタイプに分けられます。一つは行動パターンを変えるための薬として「SSRI」、二つ目に不安を軽くするための薬として「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」、三つ目に身体の症状を抑制するための薬として「βブロッカー」の三タイプで、それぞれの特徴をいかし、患者の状態に合わせて適切に組み合わせながら治療をすすめていきます。

【SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)】

 現在、社交不安障害の薬物療法の基本となる薬がこのSSRIで、主にフルボキサミン(商品名ではルボックスやデプロメールなど)などが基本的な治療薬として使われています。この薬は抗うつ薬の一種で、不安を生じにくくさせることから、回避行動を減少させ、新たな行動パターンの獲得が期待できます。比較的、症状が重い全般性社交不安障害の患者や、その他の精神障害を併存している社交不安障害の患者に効果があります。また、それほど重くない不安障害にも効果がある場合もあります。1年程度は、定期的に服薬を続けることが望まれます。

 SSRIは、もともとは新しいタイプのうつ病治療薬として開発された薬で、アメリカやヨーロッパでは1980年代から使われていました。この薬の特徴は、脳内伝達物質であるセロトニンなどに関連した神経系に作用する薬で、うつ病だけではなく不安障害に対しても効果があることがわかってきました。不安で思いつめている人には、ホッと息をつかせる効果があります。副作用としては、飲み始めに吐き気などの胃腸症状や軽い頭痛などが出ることがありますが、通常は内服を開始して1〜2週間で改善します。そのほか眠気や性機能障害が出現することもあります。また、賦活症候群(アクティベーションシンドローム)といって、薬を飲み始めたころに、かえって不安やうつが強くなったり、焦燥感が高まったりすることがあります。この副作用は、しばらく飲み続けた後にでることもあります。またこの他に、SSRIの薬を急に飲むのを止めたり、量を減らしたりしたとき、焦燥感、不安、知覚障害、睡眠障害、めまい、嘔気、発汗などの症状が出ることがあります。時によっては、うつ症状や不安が強くなったり、死にたいと思ったりすること(これらの症状を離脱症状と呼びます)もありますので、自分の判断だけで薬の量を急に減らしたり止めたりせず、医師とよく相談しながら服薬することが大切です。

【TCA(三環系抗うつ薬)】

 この薬も、SSRIと同様に、神経細胞の樹状突起接合部(シナプス)において、セロトニンの再取り込みを阻害することによって、セロトニンの濃度を高めて神経の伝達をスムースにして、DLPFC(背外側前頭前野)が扁桃体をコントロールするのを助けることによって、不安・心配・恐怖を軽減します。また、セロトニンだけではなく、ノルアドレナリンと呼ばれる神経伝達物質の再取り込みも阻害して、意欲を高める作用もあります。

【ベンゾジアゼピン系抗不安薬】

 この薬は、脳内神経伝達物質の一種であるギャバの働きを調整することによって、不安症状や興奮を改善する薬です。SSRIより即効性があり、定期的に服用することもありますが、必要な時だけ頓服として使うという方法が一般的です。定期的に常用すると依存が形成されますので注意が必要です。ベンゾジアゼピン系抗不安薬には、超短時間作用型のアルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)、エチゾラム(デパス)、ロラゼパム(ワイパックス)、ジアゼパム(セルシン、ホリゾンなど)、超長時間作用型のロフラゼプ酸エチル(メイラックス)、フルトプラゼパム(レスタス)をはじめ、多くの種類の薬が使われていますが、効果がすぐに現れすぐに消えていくものや、比較的長時間にわたって効果があるものなど、タイプは様々です。患者の症状に合わせて使い分けていきます。

 社交不安障害の患者においては、即効性のあるベンゾジアゼピン系抗不安薬を、SSRI、TCAと併用して、治療の初期に使うことがあります。これは、とくに不安が強い患者に最初に服用してもらうことで、薬の有効性を実感してもらい、今後の治療をより取り組みやすくする効果もあります。副作用としては、めまい、眠気、食欲不振、疲労感、ふらつきなどが見られます。欧米の医学界からは、副作用や依存性の可能性があるとして、使用は短期にとどめるなど慎重に使用するように勧めていることもあり、患者の症状や治療経過を見ながら、慎重かつ柔軟に処方することが大切です。

【βブロッカー(β遮断薬)】

 不安や緊張が高まると、動悸、息切れ、発汗、震えなどの身体症状がでてきますが、これらを抑制する時に使われる薬がβブロッカーです。必要時のみの頓服的使用が一般的です。動悸や息切れなどの身体症状は、アドレナリン(脳内神経伝達物質の一種)が全身の交感神経を刺激することによって起きていることがわかっています。βブロッカーは、このアドレナリンが結合する神経細胞のβ受容体を遮断する働きがあり、それをブロックすることによって交感神経の刺激が抑制されて、症状が緩和するというものです。社交不安障害の人が、強い不安や緊張を感じやすい場面、たとえば大勢の人がいる会議の場で、大事な発表をしなければならないような時、会議の直前に服用することによって症状を抑えようというものです。つまり、ある特定の状況や場面で、強い不安を感じる非全般性社交不安障害の患者で、しかも比較的病状が軽い場合において、抗不安薬やβブロッカーなどの薬を頓服薬として服用します。その場合、βブロッカーなどの処方の目的が、一時的な身体症状を抑えることもありますが、むしろ服用することそのものよりも、薬を常時携帯することで一定の安心感が持てるという効果の方が大きいのです。もし、頻繁に使用しなければならないような場合は、頓服薬ではなく、継続的に使用する薬物療法の方が望ましいと考えます。




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