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社交不安障害の種類

 社交不安障害は、「全般性社交不安障害」と「非全般性社交不安障害」の2つに分けられます。前者の全般性社交不安障害は、人とかかわるほとんど全般的な状況において、不安や恐怖する状態です。海外からの報告によると、社交不安障害の患者の80〜90%が全般性社交不安障害であるといいます。全般性社交不安障害の人の特徴としては、症状が持続しやすく、うつ病やアルコール乱用などの病気と併存しやすいことがわかっています。また、恐怖する状態が続くため、社会生活全般に支障が出て、時には生活が成り立たなくなることもあります。

 一方、非全般性社交不安障害はまたの名を「限局性社交不安障害」ともいわれ、不安および恐怖の症状がでる状況が限局されます。たとえば、「人前で話をする」という特定の状況に限って恐怖を抱き、それ以外の状況においては普通に生活できます。このように、特定の状況以外においては、普通とまったく変わらないため、その人が社交不安障害をもっていることに気づかない場合があります。ただ、特定の状況における場合の恐怖は持続しますので、その苦しみは全般性と同じです。生活の質の面では、恐怖となる状況が限定されているため、全般性社交不安障害と比べると、それほど大きな支障にはならないと思います。しかし、限局性であっても、社交不安障害の病気であることには間違いありません。

どんな人が発症するのか

 社交不安障害は、疫学調査によっては女性の方が多いというデータもありますが、一般的には男性にも女性にも見られる病気です。精神科に治療を受けにくる人だけを見ると、男性の方が多いという報告もあります。一般人口における罹患率は、障害の定義によっても異なりますが、アメリカの全国規模の併存調査(NCS)によると、一生のうちどこかで社交不安障害にかかる人は、13%にもなるといわれています。その後、この調査を臨床的にみて病気だと思われる人だけに絞り込んだところ、年間の有病率は、18歳から54歳の成人のうち3.7%と推定しています。いずれにしても、社交不安障害はかなり多くの人にとってかかわりのある病気といえます。

 では、少し絞って遺伝や生育環境、また気質などの観点から病気にかかる割合をみてみます。社交不安障害の患者のいる家族では、そうでない家族よりも社交不安障害が生じやすいことがわかっています。その傾向は、全般性の社交不安障害において強く見られます。こうした事例から、ただちに社交不安障害は遺伝する病気であると断定することはできません。社交不安障害の患者をもつ親は、不安の強い育児をする傾向にあり、その子供が社交不安障害になったからといって、遺伝なのかそれとも生育環境によるものかは今のところ不明です。また社交不安障害を持っている親は、社交不安障害以外の不安障害をもっていることが多いことから考えると、不安障害になりやすい気質が遺伝するのかもしれません。いずれにしても、その人が持っている性格や素質や環境との相互作用のなかで発生するものと考えられます。

 社交不安障害は、10代半ばで多く発症していますが、それより若い年齢で発症する例もあれば、もっと遅くに発症する人もいます。そして発症の仕方も、突発的に発症する人もいれば、徐々に始まって発症時期が特定できない場合もあります。

日常生活に与える影響

 社交不安障害であるがために、社会的にも職業的にも、また家庭や友人関係においても大きな影響を与えることになります。社会の人とうまくかかわれないために、定職につけない人もいます。職に就けないために、経済的に自立できないことにもなります。そのことが、結婚出来ないことに影響したり、友人関係が少なくなることにも関連しています。したがって、生活の質も全般的に低く、自殺を企図する人もいます。また、不安反応が身体の不調ではないかと考えて、医療機関を頻繁に変える人もいます。逆に受診に伴う人とのかかわりが怖くて、受診できないという人もいます。さらに、社会的引きこもりになる人もいれば、対人関係がほとんどないという人もいます。

 一方、働いていても本来の能力よりも低い仕事に甘んじている場合もあれば、また普通であれば転職を考えるのに、転職に伴う人との関わりが不安のため、転職をせずに我慢しているケースもあります。恋愛関係や結婚生活においても同じで、相手に不満をもっていても、新しい人との関係を始めることが怖くて、現在の関係にとどまっている人もいます。

治療しないとどうなるか

 治療しないまま放っておくとどうなるかというと、慢性の経過をたどり、回復する率が非常に低くなります。ある研究によると、自然経過をたどった場合、2年後の回復率はうつ病で80%であるのに対し、社交不安障害ではたったの20%といわれています。また、同じ不安障害であるパニック障害と比べても、8年後の診断でパニック障害と診断された人は33%だったのに対し、社交不安障害では67%の人が依然として社交不安障害のままで経過していました。このように、社交不安障害は自然経過では非常に治りにくい病気であり、放っておけば一生続く病といえそうです。心の病の中には、治療しないで時の経過を待った方がいい病気があるなかで、社交不安障害だけは放置して得るものは何もありません。

 その一番の理由は、社交不安障害の症状と取りまく環境が悪循環にはまり込みやすいからです。人の前に出たくない、話したくない、怖いから会いたくない、だから人を避けるといった「人との関係」に症状の特徴があるためです。この繰り返しの中で症状はますます悪化し、人との関係をさらに回避していって悪循環に陥るのです。かりに治療を受けようと思っても、結局は人とのやりとりがあり、恐怖の対象となるため、自然と治療を求めようとはしなくなるのです。つまり治る機会を自ら減らしているのです。そもそも、この種の病気の人は、自分が病気だとは思っていなくて、性格的なものだと思っている人も多く、積極的に治療を受けにいくという発想がないのも事実です。いずれにしても、社交不安障害の本質は、人とのかかわり方が症状そのものであり、同時に症状を左右する病気であることを理解する必要があります。そこで、対人関係療法が有効になってくるのです。

社交不安障害と合併する他の病気

 社交不安障害は、しばしば他の病気を併発することがあります。関連する主な病気は、「パニック障害」「うつ病(不安うつ病)」「アルコール症(依存・乱用)」「薬物乱用」「摂食障害」などがあります。社交不安障害とその他の心の病気は、明確に区別できることもあれば、区別しにくい場合もあります。たとえば、ある医療機関で社交不安障害と診断された人が、別の病院に行ったら「うつ病」と診断されたというケースもあります。このように、他の病気との合併がみられる場合は、社交不安障害が重症化している状態ととらえることができますので、早目の治療が必要です。

 まずパニック障害の症状ですが、予期しない状況で突然に起こるのが特徴です。動悸、震え、息苦しさ、発汗、胸部不快感、窒息感、めまいなどの強い不安発作が繰り返します。そして、不安が高まる状況になると発作を起こしたり、人前で発作を起こすことを恐れて社会的状況を回避するようになったりして、社交不安障害の症状と区別しにくい状態になります。見分け方としては、人と関わる(人前で話すなど)状況においてのみパニック発作が起こるのであれば、それは社交不安障害のよるものです。また、社交不安障害の場合は一人でいるときはほとんどパニック発作を起こしませんが、パニック障害は一人でいるときにも発作を起こします。このほか、パニック障害は命の危険を感じるような発作を繰り返しますが、社交不安障害ではそのようなことはありません。

 次に、社交不安障害と合併するうつ病は「不安うつ病」といわれ、従来のうつ病と少しタイプが違います。不安うつ病が社交不安障害と合併する例が非常に多く、社交不安障害の人の約3分の1に起こるともいわれます。不安うつ病は、うつ病と比べて症状の現れ方がちがいますが、やはり気分がひどく落ち込み、日常生活に支障をきたすほどです。不安うつ病を社交不安障害との関係でみると、症状の一つとして社交不安障害の症状が現れます。発症の前後でみると、社交不安障害の方が先行して発症する場合が多いです。また、社交不安障害による慢性的な不安や恐怖が脳機能を低下させ、不安うつ病を発症させています。

 このほか社交不安障害の場合、ほかの心の病気と比べ、アルコール依存症を併発する率が2倍以上ともいわれています。これは不安をやわらげるため、飲酒が常習化するためです。社交不安障害の患者の19〜28%に、アルコールの乱用が見られ、アルコール依存症の患者の15〜20%に社交不安障害の合併が見られるといわれます。アルコールや薬物の乱用、また摂食障害などは、自分の不安をどうにかしようと思って始めた自己治療のようなものですが、もちろんそれで治療効果があるわけではなく、むしろ逆効果で、どちらも治療しなければならない病気に発展するおそれがあります。




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