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治療方法

心理療法

 薬物療法と並んで、非定型うつ病の治療において大事な療法は「精神療法」です。感情が過敏で、対人関係に悩みやすく、それがきっかけで発病しやすい非定型うつ病にとって、この精神療法は非常に有効な治療方法といえます。精神療法は、このほか心理療法とかカウンセリングとも呼ばれ、治療者は医師や臨床心理士で、患者の気持ちを受け止めることから始めます。精神療法は、主に「認知行動療法」と「人間関係療法」(または対人関係療法)の二つに分けられますが、他にも森田療法、内観療法、マインドフルネス認知療法、瞑想、アサーションなどの療法もあります。非定型うつ病にとって、これまでに高い効果が認められたのは、認知行動療法と人間関係療法ですので、この二つについて少し解説します。

認知行動療法

 認知行動療法はCBT(Cognitive and Behavioral Therapy)とも呼ばれ、アメリカで開発された療法で、もとは「認知療法」と「行動療法」の二つの考え方や手法が統合されて出来た療法です。認知療法の認知とは、ものの見方や考え方、感じ方という意味で、患者本人が病気に対するマイナスの見方や考え方を変えていくことに焦点をあて、歪んだ思考を修正しながら問題点を解決していく方法です。精神科医や臨床心理士のアドバイスによって行われます。一方行動療法とは、誤った学習によって身についてしまった好ましくない行動を、再学習することで、不適切な行動を減らして適切な行動を増やしていく治療方法です。恐怖症の治療に優れた効果があるとされています。

 この二つの療法を統合してできたのが認知行動療法で、治療法の基本は、「認知」と「行動」、それに「感情」を含めた三要素を重視し、この3つのバランスがとれているかをみながら問題解決をはかっていきます。方法としては、先ず認知の内容を深く掘り下げていきます。認知とは考え方ですが、そこには自動思考(自分でコントロール出来ていない瞬間的に思い浮かぶ考え)があって、それを掘り下げていくと、スキーマ(考え方のクセ、信念)が見えてきます。実はこのスキーマから自動思考が生み出されてくるのです。この自動思考とスキーマの関係性を捉えることによって、認知の全体像も見えてきます。そして、この自動思考とスキーマが、今度は行動や感情にも影響を及ぼしますので、まずスキーマを自覚し、マイナスとなる考え方を修正していくことによって、治療への道を開いていく方法です。自動思考は言語化すると、認知の意外性に気づきます。それが考え方のクセとなって、心の中核をなす信念となっています。この誤った信念が病気を引き起こしていることに気づき、信念がいつも正しいことではないことが認識できれば、治療への大きな第一歩となります。

 では実際に、認知行動療法をすすめる場合ですが、患者の症状や現在の状態をみて、それに合った形式(方法)で取り組みます。形式には5つあり、@「セルフ・ヘルプ認知行動療法」(本やパソコンなど使って、1人で取り組む)、A「アシストつきセルフ・ヘルプ認知行動療法」(通院してアドバイスを受けながら行う)、B「認知行動療法アプローチ」(セミナーに参加して理解を深める)、C「集団認知行動療法」(集団の中で治療プログラムに参加する)、D「個人認知行動療法」(治療者と1対1で取り組む)です。症状が軽い場合は、セルフ・ヘルプ認知行動療法でもよいかもしれませんが、重い場合は個人認知行動療法で取り組みます。ただ本格的に認知行動療法を受けるならば、やはり集団認知行動療法か個人認知行動療法です。人数が違うだけで、内容は同じです。

 集団認知行動療法は、治療者のもとへ定期的に集まって、同じような状態の患者が3〜10人ほど集まり、2〜3人のスタッフとともに、数カ月かけて12回程度のセッションを行います。患者は参加された他の患者や治療者との対話を通して、自分の認知、行動、感情面での問題点を見いだして、改善していきます。参加したそれぞれの患者も、他の人の考え方や状況に共感したり、客観視したりすることで、新たな見方や考え方を発見し、自分の改善に役立てていきます。セッションでは、お互いの発言に対しては、決して批判したり否定したりせず、お互いを認め合い、むしろ褒め合う言葉を掛け合うようにします。一方、集団療法では個人的な細部に焦点を合わせることは難しいため、そのような場合は個人認知行動療法のセッションを選択します。1対1で行うため、個人的な部分まで丁寧に対話でき、より効果的な治療を受けることができます。

 こうして、認知行動療法は週に1回のペースで、30〜50分の対話形式で行われ、全部で12回くらいのセッションですが、治療がスムーズに行われれば回数も少なく、なかなか進まない場合は16回程度行われることもあります。セッション毎に、最初10分程度でその日のテーマを決め、本題に入ったら改善点を探り、見つかったら具体的な対策を治療者と一緒に考え、最後に意見や感想を述べあって終了します。

 認知行動療法は、近年海外でも盛んに行われるようになってきており、これまでの研究でも、その治療効果が科学的にも認められ、薬物療法と同じくらいの効果があることがわかってきました。うつ病をはじめ、さまざまな精神障害に効果があることが、世界的にも認められており、アメリカやイギリスでは軽症うつ病や不安障害の治療において、認知行動療法が第一選択肢になっているほどです。

 最後に、認知行動療法を薬物療法と比較した場合の効果について触れると、非定型うつ病の場合、MAOI(フェネルジン)を使った薬物療法と同じくらいの効果があったという報告があります。有効率では、非定型うつ病に対して行われた認知行動療法の有効率は58%で、フェネルジンを使った有効率58%と同じでした。では両者を併用した場合ですが、非定型うつ病での調査はなく、慢性うつ病患者の場合での調査でみると、さらに高い有効率であったことがわかっています。また、虐待や両親との離別を経験した患者では、薬物療法よりも認知行動療法の方が高い効果が出ています。心の傷が深いほど、認知行動療法の効果は高いことがわかりました。

人間関係療法

 人間関係療法は、認知行動療法と並んで、その効果が実証されている精神療法のひとつです。問題を人間関係に絞り込んで、その患者にとって最も身近で大事な他者との関係性を改善していくものです。一口に人間関係といっても、職場や家族や地域やサークルなど、人との付き合いは広くていろいろな関係がありますが、この人間関係療法では最も親密な関係に絞ります。例えば、妻、夫、恋人、親子、兄弟、親友といったきわめて重要な他者との関係において、過去ではなく現在の関係に焦点をあてて治療を行うものです。

 人間関係をめぐるトラブルは、うつ病を発症させる重要な因子のひとつになっており、特に非定型うつ病の患者は、感情が過敏で人間関係に悩みやすく、それが病気の引き金になっていることがほとんどです。発病すると、家族など身近な人との人間関係に影響を与え、トラブルを生んで、それがまた病状を悪化させる要因にもなります。非定型うつ病の患者にとって、対人関係の不安解消は病気回復の第一歩にもなります。そこで人間関係療法においては、他者との関係における「感情のもつれ」「葛藤」「力関係の変化」「普通でない離別や死別経験への反応」などをテーマにして、治療者は患者と十分な会話を重ねながら、カウンセリングを行います。非定型うつ病の人は、人と接することが苦手だったり、親しい人間関係をつくれないことについては、対人関係の欠如によるものではないかと考えがちですが、意外にも役割の変化が原因だったりします。いずれにしても、人間関係における適応能力を高めることによって、心の病気を改善していくのが人間関係療法の役割だと思います。なお、この人間関係療法は、もともとはうつ病を治療するために開発された精神療法ですが、摂食障害にも有効であるという報告もあります。




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