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診断基準

 非定型うつ病の診断は、アメリカの診断基準であるDSM-W-TRをもとに診断されますが、まずその前に非定型うつ病かどうかチェックしてみましょう。非定型うつ病は、うつ病の一亜型なので、まず始めにうつ病の診断基準を満たすことが前提です。そのうえで非定型うつ病の条件を満たすかどうか見極める必要があります。

【まず「うつ病」であるかどうかをチェックする】

  • ほとんど毎日、憂うつな気分が続く。
  • 何も楽しいと感じることができず、無気力で興味がわかない。
  • 食欲の低下、または食欲の増加がある。
  • よく眠れない、または睡眠過多になる。
  • 動作や話し方が鈍くなる、または落ち着きがなく、じっと座っていられない。
  • 疲れやすく、だるさがとれない。
  • 自分を責めてばかりいる。
  • 集中力が低下し、考えることができない。
  • くり返し死にたいと思う、また自殺を口にする。
上記の項目の、1か2のひとつを必ず満たし、その他の項目を含めて5つ以上が、2週間以上ほとんど毎日、ほとんど1日中続いている場合に「うつ病」と診断します。

【次に「非定型うつ病」であるかどうかをチェックする】

  • 以前より疲れやすい。
  • 1日中、眠くてたまらない。
  • 1日10時間以上眠る日がよくある。
  • 甘いものが無性に食べたくなる。
  • 体重が急激に増えた。
  • 手足に鉛が入っているかのように、体が重くてだるい。
  • ささいなことに激しくいらつく。
  • 1日のうちで、気分が激しく変動する。
  • 嫌なことはできないが、好きなことはできる。
  • 夜になると気分が落ち込む。
  • 人の言動に深く傷つく。
  • 他人がうらやましい。
  • どうしょうもないほど不安になるときがある。
  • 自分のつらさを誰もわかってくれない。
  • 耐えられないほど孤独。
上記のなかで、11項目以上当てはまっていると、非定型うつ病の可能性があります。ただし、このチェックリストはあくまでも目安で、診断を確定するものではありません。なるべく早く専門医を受診して、適切な診断を受ける必要があります。

【DSM-W-TRによる非定型うつ病の診断基準】

気分反応性(好ましいことがあると、気分がよくなる)

以下の症状のうち2つ(またはそれ以上)

  • 著しい体重増加または食欲の増加
  • 過眠(いくら寝ても眠い)
  • 鉛様のマヒ(手や足に鉛がつまったように重い感覚)や、激しい疲労感
  • 批判に対して過敏になり、ひきこもり(気分障害のエピソードの間だけに限定されるものではない)、いちじるしい社会的または職業的障害を引き起こしている。(拒絶過敏症)
  • 同一のエピソードの間にメランコリー型の特徴をともなうもの、または緊張病性の特徴をともなうものの診断基準を満たさない。
 非定型うつ病の診断は、主にDSM-W-TRの診断基準をもとにして、医師による問診を中心に行われます。臨床の現場で患者を診ていますと、うつは1日のある時間だけ、1週間の数日だけという「プチうつ病」の人が多いように思われます。いわゆる大うつ病エピソードの診断基準である「うつ病症状がほとんど1日中、ほとんど毎日、2週間以上続いている」や、気分変調性障害の診断基準である「うつ症状がほとんど1日中、ない日よりある日のほうが多く、少なくとも2年間続いている」といった基準を満たしている人は、それほど多くはありません。また、非定型うつ病を特定する基本症状として「楽しいことに反応して気分が明るくなる」という気分反応性については、実際の臨床では、気分が明るくなる人よりも、些細なことで気分が激しく落ち込んだり、ふさいだりする拒絶過敏性患者の方がずっと多くみられます。気分反応性は非定型うつ病以外のうつ病でも認められており、非定型うつ病を診断するうえで、それほど重要視しなくてもよいのではないか、という意見も一方にはあるようです。

 そこで、基本症状である「気分反応性」よりも、副症状としての「過食、または体重増加」「過眠」「鉛様麻痺」「拒絶過敏性」といった生物学的な疾病性を重要視する専門医もいます。この4つの副症状のうち、2つ以上があれば非定型うつ病の診断が確定し、1つであれば疑いがあることになります。副症状とはいえ、この4つの症状は非定型うつ病を診断するうえで非常に重要な症状で、気分反応性があるかどうかにかかわらず、過食と過眠の2つの症状だけで、非定型うつ病の診断には有効であるという報告もあります。また、拒絶過敏症こそが非定型うつ病の中核的な症状であるとする考えもあります。ただ、拒絶過敏症は回避性パーソナリティ障害と重なる部分があるため、しばしば非定型うつ病を見誤ることがありますので、診断は慎重に行う必要があります。

 いずれにしても、非定型うつ病は体の病気のように、測定や検査をしたり、X線・CT・MRI・MRA・SPECT・脳波などの画像検査でも確定診断をつけることはできません。確定診断は、専門医が患者と問診を重ね、臨床経験のなかから判断していきます。また、最近では光トポグラフィーによって、「躁うつ病のうつ状態」なのか、「うつ病のうつ状態なのか」なのか「統合失調症によるうつ状態」なのかはある程度鑑別診断出来るようになっています。いろいろな薬や治療法を試みながら、経過観察し、その人に合った治療を行いますが、薬の面では、非定型うつ病にもっとも効果があるとされているモノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)がまだ日本で認可されていないことが、治療を困難にさせている一面でもあります。

 非定型うつ病を診断するうえで、より大事なことは、DSM-W-TRの診断基準ができて確かに明確にはなりましたが、しかし一方で安易にこの診断基準を用いて、十分な問診も行われないまま、症状の個数だけを満たしたからといって直ちに診断を下すことは、過剰診断になるおそれが十分あります。逆に、症状が1つだけ診断基準を満たさないからといって、疾患を否定して、適切な診断が行われず治療できない状況になることも、避けなければならないことです。

似ている病気、併発しやすい病気

症状が似ている病気

 非定型うつ病は、従来型の定型うつ病とは正反対の症状が現れたりすることがあって、他の病気と間違われやすい病気といえます。主なものは、「双極性障害」「パーソナリティ障害」「慢性疲労症候群」「過食症やむちゃ食い障害」「ナルコレプシー」などがあります。

《双極性障害》

 双極性障害は、かつて「躁うつ病」と呼ばれた病気で、非定型うつ病と同じ気分障害のひとつです。双極性障害は、躁状態(気分が病的に高ぶっている状態)と、うつ状態(気分が落ち込んだ状態)が交互に現れる精神疾患で、非定型うつ病と間違われやすいのは、このうちの「うつ状態」のときです。よく似た症状があり、定型うつ病や非定型うつ病と双極性障害のうつ状態の鑑別は、なかなか難しいところがありました。従ってこれまでは、はっきりとした躁状態の既往歴があるかどうかを、問診のときや家族から聞き出せれば、それが決め手となっていましたが、それが出来ない場合は、近赤外光を使って脳内の血流を測定する光トポグラフィー検査などを用いて診断していました。しかし、これも補助的診断にすぎません。

 双極性障害には、T型とU型(欧米ではAkiskal分類としてY型まである)があり、T型はうつ状態と入院を必要とするような躁状態が見られる場合であり、U型はうつ状態と外来治療が可能な程度の軽躁状態を繰り返す場合をいいます。ただ、軽躁状態というのは、本人も周りも調子がいい状態だと勘違いしてしまい、なかなか双極性障害と気づくことが困難です。また受診する場合でも、うつ状態のときしか病院へ行かないので、医師も正しい診断ができず、定型うつ病や非定型うつ病と誤って診断してしまうこともあります。

 双極性障害の中心的な治療薬は、気分安定薬です。定型うつ病や非定型うつ病で使われる抗うつ薬とは違います。双極性障害のうつ状態なのに、抗うつ薬だけで治療してしまうと、躁状態に転じてしまうことがあるため、より的確な診断が求められます。

《パーソナリティー障害》

 パーソナリティー障害というのは、いろいろなきっかけによって人格が影響を受け、片寄った考え方や行動パターンが極端に現れ、日常生活や社会生活に支障をきたした状態をいいます。DSM-W-TRでは11のパターン(妄想性、シゾイド、失調型、反社会性、境界性、演技性、自己愛性、回避性、依存性、強迫性、特定不能のパーソナリティー)に分けています。基本的な症状としては、「白か黒かの両極端な認知に陥りやすい」「自分と他人の考え方や認知を混同しやすい」「理想的な自分と無価値な自分が同居している」「心の許容量が小さい」などが特徴的な症状です。11のタイプのなかで、特に非定型うつ病と間違われやすいのが「境界性パーソナリティー障害」です。

 境界性パーソナリティー障害の人は、子供のころ虐待を受けたり、また親から十分な愛情を受けられなかったために、常に恐怖や不安にさらされ続けていて、それがトラウマとなり、親や人から見捨てられることに強い不安を抱いている人に多いです。その不安感を払拭するために、心が激しく揺れ動き、他人の些細な言動に反応して、落ち込んだり激怒したりします。また、先ほどまで優しく接していたかと思うと、突然に暴力をふるったり、リストカットや薬物の乱用などをしたりする行為が見られるなど、衝動を自分でコントロールできなくなる状態をいいます。このような特徴が、非定型うつ病の「気分反応性」や「拒絶過敏性」の症状によく似ていることから、間違えられることもあり、また併発している事もあって、診断が困難な場合がります。

《慢性疲労症候群》

 これは、原因不明の強い疲労感が長期にわたって続く病気です。身体面でも思考面でも、激しく疲労して、日常生活に支障が出るほどです。この疲労感のほかに、微熱、リンパ節の腫れ、咽頭痛、関節障害、原因不明の筋力低下、睡眠障害、思考力の低下、強い光を受けたとき目に痛みを感じるなどの症状を伴うことがあります。非定型うつ病との鑑別は難しく、併存していることもあります。

《神経性大食症とむちゃ食い障害》

 神経性大食症というのは、一般に過食症と言われるもので、摂食障害のひとつです。大量に食べたあと、体重が増えることを恐れ、無理に嘔吐したり、下剤などで排泄したりします。このような代償行為をしないのが、むちゃ食い障害です。これらは、ダイエットをしたときや、強いストレスを受けた時に、それを解消しようとして、過食したりむちゃ食いしたりするケースがあります。

《ナルコレプシー》

 ナルコレプシーとは、夜十分睡眠がとれているにもかかわらず、日中激しい睡魔に襲われ、ところかまわず眠り込んでしまう病気です。この睡眠発作は、食事をしている時、おしゃべりをしている時、テレビを見ている時、自動車の運転をしている時などに突然眠り込み、数分から数十分ほど続きます。非定型うつ病に起こる過眠と間違われることがあります。

併発しやすい不安障害

 非定型うつ病は、ほかのうつ病と比べて精神障害を併発する頻度が高い病気です。特に不安障害がそれで、先に不安障害があって、それをベースに非定型うつ病が発症するケースです。不安障害は、かつては神経症といわれていた病気で、大きく分けて5つの種類があります。@ストレス障害、A全般性不安障害、B強迫性障害、C恐怖症(特定の恐怖症・社交不安障害・広場恐怖)、Dパニック障害の5つです。このなかで、非定型うつ病にもっとも併発する頻度の高いものはどれかについて、これまで疫学調査や臨床の場での調査が報告されています。いずれも、もっとも多いのが「特定の恐怖症」で、次に「社交不安障害」、次いで「パニック障害」の順となっています。その他、広場恐怖、全般性不安障害などとなっています。

 まず「特定の恐怖症」ですが、これは恐怖となる対象はいろいろで、たとえば高所、閉所、虫、動物、嵐、注射など、何でもよいのですが、その人にとって怖いと思う特定の事物や状況に対して、過剰な恐怖を抱き、それを回避しようとする病態をいいます。この特定の恐怖症をもつ人は、非定型うつ病にかぎらず、他の社交不安障害やパニック障害などの不安障害と併発しやすいのが特徴で、受診する時は併発したときに多くみられます。

 次に多い「社交不安障害」は、かつて対人恐怖といわれていた病態です。この社交不安障害が非定型うつ病に併発する割合は、疫学調査では29%、臨床データでは40%と非常に高い率になっています。自分の能力や要望が、人から低く評価されているのではないかという恐れが心の底にあり、人前に出ると強い緊張感に襲われ、人の視線が気になって、あがったり、話せなくなったり、行動できなくなってしまう病気です。この社交不安障害も、自分では気がついていないことが多く、うつ病を発症して病院を受診してから、初めて社交不安障害であることがわかったという事例が多いのです。

 また「パニック障害」も、非定型うつ病を高率で併発することがわかっています。臨床調査では20〜30%ですが、パニック障害の人の生涯をみると、約60%が非定型うつ病を伴っています。うつ病を併発するパニック障害は、強い不安や恐怖を伴い、長期間にわたる重症例が多いと言われます。このように、不安障害は非定型うつ病を併発することが多いが、パニック障害を除いてその他の不安障害は、非定型うつ病が現れる以前に発症しており、これらを土台にして併発しているのです。




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