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治療方法

心理療法

うつ病に有効な精神療法

 うつ病の症状は、薬である程度治すことはできても、病気の原因になっている心理的な問題を解決しないと、再発を繰り返すことになります。それを防ぐために用いられるのが精神療法です。精神療法は、初めに薬物療法である程度症状を落ち着かせた後、患者本人が少し自分を客観的に見られるようになってから精神療法を行うのが一般的です。自分はどのようなストレスがきっかけでうつ病になったのか、生活習慣のどこに問題があったのか、さらには自分の性格や考え方について、患者自身が見つめ直し、自分で解決できるように医療者が援助する方法です。

 患者の中には、「薬は使わずに精神療法だけで治したい」という方もおられますが、初めから精神療法を行うことは困難です。始めるタイミングは、医師が患者の状態をみて判断されます。最近は、かなり早い段階から薬物療法と精神療法の併用が試みられていますが、薬物療法と同じで、導入する時期や方法を誤ると、逆に症状が悪化し副作用も生じることがあります。精神療法には、いろいろな方法がありますが、最近注目されている「認知行動療法」や、神経症化したうつ病に効果をあげている「森田療法」、その他「簡易精神療法」「精神分析療法」「心理教育」などがあります。

認知行動療法

→認知行動療法の詳細についてはこちら

うつ症状は、認知の歪みによって引き起こされる

 「認知」とは、物事に対する「受け止め方」や「考え方」のことです。うつ病になると、どうしても物事を悲観的に受け止めるようになります。その原因は、「認知の歪み」によるもので、その好ましくない思考パターンを修正していくのが「認知行動療法」です。この療法は、3つの視点から成り立っています。一つは、「その人の感情は、認知によって決まる」ということです。例えば、同じ映画を見ても、ある人は「おもしろかった」といい、ある人は「つまらなかった」といいます。なぜこういう事が起こるかというと、その人の受け止め方や考え方、つまり認知の違いが「おもしろい」「つまらない」という感情を生み出しているのです。二つ目は「気分が落ち込んでいる時、また憂うつな時は、物事を悪い方向に考える」ということです。例えば、落ち込んでいる時に会社で仕事のミスをすると、「なんて自分はダメな人間だ」「もう誰からも信頼されない」「こんな自分は生きていてもしょうがない」と、全てを悲観的にとらえます。三つ目は「否定的、悲観的な考え方は、認知の歪みからきている」ということです。これは、現実を正しく受け止めず、事実を歪めてとらえているからです。抑うつ気分や不安などの精神症状は、そのほとんどがこうした認知の歪みによって引き起こされているのです。

 一般にストレスが長期間続くと、思考力や判断力は鈍り、物事を悲観的・否定的に考えるようになります。このマイナス思考が、気分を落ち込ませ、その気分の落ち込みがさらに悲観的・否定的な考えを助長させて、不安感や絶望感を生み出していくのです。人間の感情というのは、認知の仕方によって生じるものですから、マイナス思考という歪んだ認知を、プラス思考の方向に修正していけば、心から沸き上がる感情はおのずと変化して、楽観的・肯定的に物事を受け止めることができます。認知行動療法とは、心理面に働きかける治療法のことです。

認知の歪みのパターン

 うつ病になると、認知の歪み(考え方のクセ)が必ず見られますが、認知の歪みには幾つかのパターンがあります。自分では気づきにくいのですが、普段の自分の考え方や行動を振り返り、どの思考パターンに陥っているのかチェックしてみる必要があります。

1.白か黒か二つしかない極端な考え方

全てについて、全か無か、白か黒か、善か悪か、100点か0点かで判断する極端な思考のことです 。思考の根底には、完全主義、完璧主義があります。人間は完全な存在ではありませんので、どこかで必ず失敗し、思うようにならないことが日常いくらでもあります。ちょっとしたミスでも、自分は全てに失敗したと考えます。人生においてパーフェクトなことばかりではありませんので、もし完全だけを求めるならば、永遠に得られないものを求めて苦しむことになり、そのことが気分の落ち込みにつながっていきます。白か黒か思考は、きわめて非現実的な思考なのです。

2.一つの出来事を一般化してしまう思考

たった一度思うようにならなかった出来事があると、それを一般化して、すべてが失敗するのではないかという考え方です。たとえば、入学試験や就職試験で一度失敗すると「どうせ、どこを受けても落とされる」と思い込み落胆します。普通の人であれば、立ち直って次の目標に挑戦しますが、この思考が強すぎると、二度と立ち直ることができない程落ち込みます。

3.心のフィルターが常にネガティブな思考

自分によくない出来事や嫌なことが起こると、以前よかったことには目を向けられず、悪い方向でしか受け止められない思考です。例えば会社の上司から注意をされると、以前に褒められたことを忘れ、「俺はやっぱり嫌われているのだ」と思い込んで悩みます。つまり、うつ病になると、心のフィルターが、常に暗いネガティブなことしか見えないようになっているのです。

4.良いことでも悪い方向に考えてしまうマイナス思考

喜ばしい出来事でも、悪い方向へすり替えて受け止めてしまう、いわゆるマイナス思考です。うつ病になると、思考の出発点がマイナスからになります。ですから、自分は常に能力がないと思い込んでいて、仕事に失敗すると「やっぱり自分は無能だ」と考え、仕事に成功しても「この程度ではダメだ」といつも卑下します。すべて悪い方向に受け止める思考です。

5.結論を飛躍して考え、悲観的に受け止める思考

自分勝手に憶測し、悲観的な結論をだす思考です。ある出来事に対し、確かな証拠もないのに、一方的に推論して判断し、それを信じ込んでしまうタイプです。例えば知人を見かけたので挨拶をしたら、相手は気づかず通り過ぎて行ってしまった時、「あの人は私を避けている」と勝手に思い込みます。また、軽い病気でも「この病気は絶対に治らない」と決めつけて受け止め、悲観的になって落ち込みます。

6.成功や長所を過小評価する思考

人間には、成功や失敗、長所や短所の両面があるのに、成功や長所のプラス面は取るに足らないと考え、反面、失敗や短所などマイナス面ばかりにこだわってしまう考えです。つまり、良い面を過小評価し、悪い面を大げさに解釈してしまいます。ですから、自己評価が著しく低く、常に自分に満足することができません。

7.自分の感情を基準に物事を判断する思考

物事にとりかかる前から、「自分がこう感じるから、やってもそうなるに違いない」と、自分の感情を基準に判断する考えです。うつ病になると、マイナスの感情しか生まれないため、とりかかる前からマイナスに判断してしまうのです。

8.「すべき」という枠にはめ込む思考

「この仕事に全力で取り組むべきだ」「この試験には合格すべきだ」というように、全てを「べき思考の枠にはめ込んで考えます。このべき思考は、自分に必要以上にプレッシャーをかけることになり、それがうまくいかなかった時は、自己嫌悪と、罪責感に悩むことになります。これは他人に対しても「すべき」を要求し、それに応えられないとイライラして不満をため込むことになります。

9.「ダメ人間」のレッテルを貼る思考

自分に対して「ダメ人間」「落伍者」「敗北者」というレッテルを貼る考え方です。例えば、友達とうまくいかないと「自分は協調性や社会性に欠けるダメ人間だ」というレッテルを貼り、マイナスの自己像を作り上げます。これは他人に対しても同じで、「あの人は無能な人だ」とレッテルを貼り、その人の価値や能力を否定するようになります。

10.すべて自分の責任にする思考

物事がうまくいかなかった時、それが自分の責任ではなくても、すべて自分の責任として受け止めて自己関連づけしてしまいます。相手が約束の時間に遅れたりすると「こんな時間に約束した自分が悪い」と考えたり、相手に不愉快な思いをさせられても「そうさせる自分が悪い」と罪の意識を抱きます。

うつ症状は、認知の歪みによって引き起こされる

 認知行動療法の最大の目的は、うつ病の症状を取り除くことです。症状が生活に支障を来たしていれば、その支障を軽くし、さらにうつ病の再発や再燃を防ぐために行われる療法です。ものの見方やとらえ方、つまり認知に歪みやクセがないか検討し、必要があればそれを修正しなければなりません。したがって、患者自身が治療に参加するという意思をもっていることが、治療を始めるうえで大事な前提になります。

 軽症のうつ病ならば、最初から認知行動療法だけで治療していく場合もありますが、一般的には、薬物療法で症状をある程度改善し、その後に薬物療法と併用して認知行動療法を行います。他の治療との組み合わせを希望する場合は、患者から医師に伝え、判断してもらいます。うつ病の認知行動療法は、医療機関で行われ、外来での治療が一般です。ただ、認知行動療法の専門家が全国的に、かなり不足しておりますので、担当医に相談してください。また、この療法の対象になるのは、軽症または中等症の患者で、自分の気持ちを言葉で表現できることが前提になりますので、基本的には成人の患者であることです。子供さんや認知症の方は対象になりません。

 認知行動療法による治療期間は、一般的には、1〜2週間に1回くらの頻度で、3〜6カ月ほど続けます。1回当たりの治療時間は、医療機関で医師が行う場合は、30分程度が目安です。治療は、最初にはっきりとした治療目標を立てます。比較的短期間の治療で出来そうな目標を、患者に合わせて決めます。単に「うつ病を治したい」という漠然としたものではなく、「よく眠れるようになったら旅行にいく」など、具体的に決めることが必要です。なお、実際の認知行動療法の進め方については、医療機関にお尋ねください。




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