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疾患の詳細

うつ病の定義

 大うつ病エピソードは、診断基準でも定義されているように、基本的な特徴として、抑うつ気分または、ほとんどすべての活動における興味または喜びの喪失のいずれかが、2週間以上続くことです。「気分障害」という大きな分類の中に、「うつ病性障害」と「双極性障害」の二つがあり、そして「うつ病性障害」の中に「大うつ病」と「気分変調症」、また特定不能のうつ病性障害が含まれます。なお、これらのうつ病性障害では、躁状態の既往歴は存在しません。さて、最も頻度が高いのが大うつ病(単極性うつ病)で、1回のみの病相か、あるいは病相を繰り返します。生涯単一病相で、それが2年を超える長期の場合もあります。この患者の75%は病相を反復し、病相と病相の間は寛解するのが基本ですが、症状が残ることもあります。

 大うつ病は、さらに単一エピソードと反復性の2つに分けられます。単一エピソードは、単一の大うつ病エピソードだけが存在しますが、反復性は大うつ病エピソードが2回またはそれ以上存在しなければなりません。その場合、別々のエピソードと見なすには、大うつ病エピソードの基準を満たさない期間が、少なくとも2カ月連続して存在しなければなりません。また双方とも、統合失調感情障害・統合失調症・妄想性障害、また特定不能の精神病性障害と重ならないと同時に、躁病エピソード・混合性エピソード・または軽躁病エピソードが存在したことがないのが基準になります。

 次に気分変調症の方ですが、これは少なくとも2年間、抑うつ気分が存在する日のほうが、存在しない日よりも多く、さらに大うつ病エピソードの基準を満たさない抑うつ症状を伴うのが、この病態の特徴です。この障害は気分循環性障害と同じように基本気質の障害とみることができます。多くの患者は、最終的には境界性パーソナリティー障害と診断されることが多く、気分変調症の根底にある気分の障害が認知されないことによるものであります。気分変調症と大うつ病の鑑別が難しいのは、双方の症状が共通していて、持続期間と重症度が異なるだけというところにあります。気分変調症は、神経症性うつ病や抑うつ神経症などの疾患に近いとも言われていますが、これらの疾患の定義もあいまいなので、必ずしも同じ状態とはいえません。またしばしば、気分変調症の患者には、大うつ病の症状を呈することもあります。

 最近、臨床において特に注目されているのが、現代うつ病(非定型うつ病)などです。従来からの典型的なうつ病といえば、メランコリー親和型うつ病、または中高年に発病の多い単極性うつ病でした。このような執着性格を病前性格とするうつ病の人が減少し、異質のタイプのうつ病が多くなってきています。この現代うつ病と称されるうつ病は、すでに30年以上も前から議論されており、葛藤反応型うつ病として議論されてきました。その特徴は、若年層に多く発症し、他人への配慮や秩序愛に乏しく、他責的で自己中心的な性格が強いことがわかっています。この現代型うつ病を含め、未熟型うつ病、ディスチミア親和型、逃避型抑うつなどの病態も、それぞれ異なった病像を呈するものの、共通して言える特徴は、依存性が強いうえに、未熟な人格、自己愛に強く他責的で、他者配慮のない若者に発現しているということです。なお、未熟型うつ病と逃避型抑うつについては、その後双極性障害のU型に収められています。(※なお、「非定型うつ病」(新型うつ病)については、別項でまとめて述べます)

大うつ病性障害の臨床症状

精神症状

 大うつ病性障害は、1つ以上の大うつ病エピソードによって特徴づけられる臨床的経過です。大うつ病エピソードの診断基準は、DSM-Wに記載されているように、「抑うつ気分」と「興味または喜びの喪失」が、きわめて重要な症状として特徴づけられています。

1) 抑うつ気分
抑うつ気分は、憂うつ・空虚・不快・沈うつ・心がふさぐ・悲哀・希望がない・気落ちするなどといった言葉で表現される心の症状です。この抑うつ気分は、本人の表情や態度から推測したり、本人の訴えや他者の観察によっても確認できます。症状はほとんど1日中、ほとんど毎日が2週間以上続きます。
2)興味または喜びの喪失
興味や喜びの喪失は、社会的にひきこもり、以前は楽しんで興じていたスポーツ・趣味・読書・テレビや映画鑑賞などの娯楽に、全く興味を示さなくなります。性的関心や欲求も低下してきます。この興味や喜びの喪失は、本人の表情や態度、本人の訴え、また他者の観察によっても確認できます。症状はほとんど1日中ほとんど毎日が2週間以上続きます。
3)精神運動性の焦燥または制止
精神運動性の変化として、ほとんど毎日、焦燥と制止があります。焦燥感からくる足踏み、着座不能、髪のかきむしりなど、いらだってあせる状態が見られます。制止には、思考の抑制、思考内容の貧困、無口などがあります。これらは、他者によって観察は可能ですが、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないものです。
4)思考力や集中力の減退
ほとんど毎日、思考力や集中力の減退、また決断困難が認められます。本人の言明や他者によって観察されます。
5)疲労や気力の低下
疲労感、倦怠感、疲れやすさ、また気力の減退がほとんど毎日出現します。
6)無価値観や罪責感
ほとんど毎日無価値観や、過剰もしくは不適切な罪悪感があります。これは自己の価値に対して、非現実的で否定的な評価でもあり、罪へのとらわれとして、過去の些細な失敗を繰り返し思い悩むことです。罪責感は妄想的であることもあります。単に自分をとがめたりして、病気になったことに対する罪の意識ではありません。
7)自殺念慮や自殺企図
死についての反復思考、特別な計画はないが反復的な自殺念慮や自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画などがしばしば存在します。自殺の動機は、困難な障害と感じたことに直面したとき、それを断念したいという欲求、自己の無価値感から自分はいないほうが周囲は幸せになるという妄想です。また、終わりがないと感じている、耐え難いほどつらい感情状態を終わらせたいという願望を含んでいると思われます。
8)病的な思考内容
思考の過程および内容に変化が生じます。悲観的になって、自己評価が低下し、強い劣等感や自責感に悩まされます。将来に対しても悲しんで失望し、虚無的、厭世的な考えに繰り返し強迫されます。それらの思考が発展すると抑うつ妄想になって、自責感や劣等感の感情状態から、了解可能なものと不能なものがあり、気分が一致した妄想と一致しない妄想に分けられます。
9)妄想
うつ病にはしばしば妄想が見られます。主に高齢者に観察される妄想として@罪業妄想、A心気妄想、B貧困妄想があり、その他に被害妄想(これは統合失調症との鑑別が必要)や、実在性を否定する否定妄想なども見られます。
10)その他の精神症状
◇不安・焦燥:この不安と焦燥は同時に出現することが多いです。焦燥は、心の不安が行動面に現れたもので、じっとしていることができず、室内や廊下を落ち着きなく歩き回ったりします。初老期や老年期にみられる激越性うつ病は、不安や焦燥と同時に強い運動興奮が出現します。
◇強迫症状:抑うつ症状と強迫症状は近縁性の関係にあります。したがって、うつ病と強迫性障害の併存がしばしば見られます。
◇離人症状:抑うつ症状の変化に伴って、実在感の喪失、疎隔感、違和感を訴えます。

身体症状

 うつ病が発症すると、その初期から多彩な身体症状が出現してきます。頭痛、倦怠感、動悸、息切れ、腰痛、めまい、口渇、呼吸困難、関節痛、しびれ、下痢、便秘、頻尿、月経不順などさまざまな症状がでます。また食欲の不振や亢進が起き、著しい体重減少、あるいは体重増加がみられます。食欲の減退や増加はほとんど毎日あります。減退では、毎日無理して食べていると感じたり、味を感じなかったり、砂を噛んでいるように感じたりします。そのため体重減少を招きます。一方、食欲の亢進では、甘味や炭水化物を渇望し、体重が急増することもあります。

 このほか、特徴的に現れるのが睡眠障害です。主には不眠ですが、時には過眠も出現します。不眠障害のタイプとしては、入眠困難、中途覚醒及び早朝覚醒です。寝付きが悪い、寝付けても途中で覚醒して熟眠はできず、再び眠りにつけない障害です。早朝の覚醒も再び入眠できないのが、うつ病の睡眠障害です。このように身体症状が常に出現するため、患者の多くは内科等を受診することが多く、各種検査等に時間がかかって、結果的にうつ病の適切な診断や治療が遅れることになります。

 それから、うつ病を患う高齢者に見られる「うつ病性仮性認知症」です。高齢者には、しばしば思考障害、見当識障害、記憶障害などの器質性認知症を思わせる症状が現れますが、実はこれによってうつ病が軽快したり、認知症症状も減退したりすることがあります。この状態こそ、認知症の不可逆性とは異なる、治療によって改善するうつ病性仮性認知症と言われるものです。

 いずれにしても、うつ病の診断は正しく行われ、適切な治療が行われなくてはなりませんが、依然として身体症状が持続することで、長期間にわたって不適切な診断治療を受けている患者も決して少なくはありません。その意味で、鑑別すべき疾患として挙げるならば、不安障害、統合失調症、統合失調感情障害、正常範囲の悲哀反応のほか、パーソナリティー障害、アルコール気分障害、物質誘発性気分障害、うつ病性仮性認知症、慢性疲労症候群、身体疾患に伴う抑うつなどがあります。




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