トップページ tel:0792626871

「躁」と「うつ」を繰り返す双極性障害

 双極性障害は、かつては「躁うつ病」といわれていました。うつ状態と正反対の躁状態が交互に入れ替わり、この二つの極の間を揺れ動く意味から、双極性障害となりました。発症は、20代前半の比較的若い層に多く見られます。双極性障害と単極性うつ病は、病気の経過や使用する治療薬などが基本的に違うため、確実な診断が必要となります。双極性か単極性かは、経過を見なければ判断できませんが、病前の性格傾向で、ある程度の推察はできます。生真面目なタイプに多い単極性うつ病とは異なり、双極性障害になる人は賑やかでリーダーシップのある人に多いです。双極性は、一般にうつ状態から始まり、その後に躁が出てくることがあるので、経過観察が重要です。患者は、うつの状態で初めて受診したとき、以前に躁と考えられる状態がなかったかどうか、少しでも心当たりがあれば必ず医師に伝えるようにするとよいです。ただ、うつ状態だけをみていると双方ともよく似ていて、双極性か単極性かの区別がつかないため、十分経過をみながら正確に診断することが求められます。

 双極性障害は、単極性のうつ病に比べると患者数そのものは少ないですが、症状に伴う影響は深刻なものがあります。特に躁状態になると、行動面で周囲を巻き込む大きな問題を起こしたりするため、本人にとって失うものが大きいのが実情です。例えば会社などで上司や会社に相談することなく、勝手に顧客と商談を決めてしまって、会社に多大な損害を与え、結果的に会社の信用を失って失職する事もあります。また、家族や夫婦との人間関係が悪化して離婚にいたる場合もあります。さらには気が大きくなって、高価なものを惜しげもなく買い込み、浪費が重なって破産するまでお金を使い込むケースもあります。

 双極性障害の診断で難しいのは、うつ状態は分かっても、躁の状態がさまざまあって、軽い場合は見逃してしまう危険性があるのです。不眠については、どちらもありますが、単極性の場合は目が早く覚めてしまうのに対し、双極性は夜眠らなくても平気です。さらに双極性は食欲も性欲もアップし、気分も高揚し、疲れを感じないというのが特徴的症状です。

 双極性障害のタイプには「T型」と「U型」と「混合型」の三つがあります。T型は、躁の状態とうつ状態を繰り返すタイプです。単極生のうつに比べ、家庭内で発症する率が高く、遺伝的な影響が強いものと考えられます。U型は、うつ状態の症状が主に現れ、ときどき軽い躁状態が出ますが、躁が見逃されて単極性のうつ病として治療されているケースが少なくありません。またこのU型は自殺率が高いのも特徴で、アルコール依存症になりやすい傾向もあります。躁の状態が軽くても重症タイプなので、しっかりと治療する必要があります。最後に混合型ですが、文字通り躁とうつが混在するタイプです。意欲はありながら、頭が働かずに憂うつ感が強いのと、気分は高ぶってはいるが何もできないのがこの混合型です。アルコールやドラッグなどの濫用者が多いのもこのタイプです。

若い世代に増えている非定型うつ病

 非定型うつ病というのは、従来からあった定型的なメランコリー親和型うつ病とは少し違った症状があるタイプのうつ病です。最近のデータによれば、10〜40歳代の若い世代に多くみられ、特に30歳代で圧倒的に多く、また女性に多くみられるうつ病とも言われています。うつ病の約30%近くが、この非定型うつ病ではないかと想定されています。ただ、青年期に非定型うつ病だった患者が、40歳、50歳と年齢を重ねていくにしたがい、やがて定型的なメランコリー親和型のうつ病に移行していく臨床例もあるようです。

 では、非定型うつ病は、従来の定型的なうつ病とどこが違うのでしょうか?その項目を挙げると、@気分反応性、A拒絶への過敏性、B過食、C過眠、D疲労感の5つです。まず「気分反応性」は、生活の中で良い出来事があれば気分が明るくなって舞い上がり、良くないことが起きれば意気消沈してひどく落ち込むといったように、周りの状況に気分が大きく左右されやすいというのが特徴的です。「拒絶への過敏性」というのは、他者に拒絶されたり批判されたりすると、過敏に反応して気分が落ち込み、怒ったり、仕事や家事における大事な責任を放棄したりします。したがっていつも誉めそやされていないと心が安定しないので、拒絶を恐れて対人関係を回避することがあります。以上の二つが、特に非定型うつ病を特徴づける症状といえます。このほか「過食」ですが、心を満たすかのようにむちゃ食いをするため、短期間に体重が増えたりします。「過眠」は、とにかく眠くてたまらず、1日10時間以上眠ってしまうことが週に3日以上もあります。「疲労感」は、極端に疲れやすく、体が鉛のように重く感じられる症状です。

 以上、非定型うつ病の特徴的な症状をあげましたが、これらはいずれも単独では他の精神疾患でもよく見られます。診断にあたっては、よく似た症状をもつ摂食障害や境界性パーソナリティー障害など、他の精神疾患との関連を見極めながら、慎重に確認していく必要があります。また、非定型はパニック障害などのような不安障害との併発も多いのが特徴です。

気分変調症と気分循環症

 気分変調症の場合、抑うつ症状は比較的軽いのですが、憂うつ感と気力のなさ、また漠然とした身体的な不調が続き、スッキリしない状態が二年以上も続いている場合を「気分変調症」といいます。全人口の3〜5%の人にみられると言うから、かなり多くの人がこの病気を患っていることになります。症状が軽いだけに、病気というより性格的な問題として片付けられることがあります。受診しても見過ごされたり、適切な治療に結びつかないことがあるため、辛い状態が10年以上も続いたり、そのため社会生活上で問題を抱えたりします。そして、本格的なうつ病が生じることも度々あります。

 気分変調症は若い人に多く発症し、気分が落ち込み、やる気が出ない、疲れやすい、元気が出ないなどの症状を訴えて、精神科や心療内科、また内科などを受診します。しかし、うつ病と比べ抗うつ薬が効きにくく、薬物療法以外の認知行動療法や患者の環境を調整しながら症状を軽くするなどで対応していきます。一方、軽いうつ状態に加え、軽い躁の状態もあるのが「気分循環症」です。気分変調症よりも発病数はかなり少ないです。

新型うつ病と軽症うつ病

 最近、「新型うつ病」という言葉をよく耳にしますが、これには明確な定義や学術的な根拠はありません。うつ病なのに海外旅行に出かけたり、趣味の活動に積極的になったり、うつ病なのに自責感に乏しく、他罰的で職場でトラブルを起こしたり、また憂うつ感よりもむしろ身体の疲労感を訴えるなど、これまでの定型的なうつ病のイメージとは少し違ううつ病を総称して、便宜上「新型うつ病」と呼んでいるようです。この概念には、非定型うつ病や双極性障害U型、気分変調症などの病気が含まれているように思われますが、最近急増している非定型うつ病のことを便宜上新型うつ病と呼んでいる場合もあるようです。確かに非定型、双極U型、変調症などは、専門医でさえ鑑別に戸惑うことがあるため、「新型うつ病」でまとめてしまいたくなる気持ちも頷けます。ただ、この種の疾患群の病気は、個々に治療のアプローチが微妙に異なるため、診断・治療にあたっては慎重であることが望ましいと思います。

 次に、「軽症うつ病」ですが、この呼称も誤解を招く名前です。軽症というと、一般的なイメージでは、症状が軽いから「すぐに治る」「良くなる」と思ったりしがちですが、それは誤解で、病態そのものは結構やっかいな病気です。特に患者本人が、「軽症だから、大丈夫」などと安易に考えて、治療を放棄したりすることが心配です。軽症うつ病というのは、大うつ病のように症状が全部揃っているということではない、という意味で軽症という言葉が使われているようですが、実際はむしろ薬物がなかなか効きづらかったりして、患者の社会復帰が困難な場合がよくあります。また、この中には非定型うつ病に相当する場合もあり、「適応障害」のように、ストレスから解放されたら自然にうつ状態が改善したケースもあって、混乱していることは確かです。




インデックス
前のページへ 次のページへ

初めての方へ

症状と治療方法

初めての方へ

診断チェック