トップページ tel:0792626871

現代のうつ病性障害とその分類

 うつ病の周辺にある病気は、病名は違っていても共通しているところがあったり、連続しているところがあったりして、明確に区別できないのが現状です。たとえば、双極性障害(躁うつ病)と単極性のうつ病では、はっきりと分けられないところがあります。過去において、うつ病は躁うつ病の一つとされていたことがありました。ところが、躁うつ病といってもほとんどはうつが中心的な症状であって、躁は全く見られないこともあったため、躁うつ病という呼称は適切でないことになり、その後に双極性障害とうつ病性障害は分けられたのです。そして、現在は「うつ」にしても「躁」にしても、それは気分や感情の問題であるということから、医学的には双方とも「気分障害」という大きなくくりの中に収められたのです。

 ここで、もう一度「気分障害」という大きなくくりの中身を、DSM-W-TRに基づいて整理しておきたいと思います。気分障害に含まれる疾患を分けると、大きく二つになり、一つは「双極性障害」、もう一つは「うつ病性障害」になります。さらに双極性障害には「双極性」と「気分循環症」が含まれ、うつ病性障害には「大うつ病」と「気分変調症」がふくまれます。ところが、近年クローズアップされている病気に、新型うつ病と言われる「非定型うつ病」があります。この非定型うつ病を気分障害の中の三つ目の疾患とするのか、またはうつ病性障害に含まれる一つの病気とするのか、いろいろな見方がありますが、いずれにしても最近とくに患者が増えてきているのが、非定型うつ病です。

 これらの病気を図にして表せば、きれいに分類でき解りやすいように思えますが、しかし実際は気分障害をスペクトラムで捉えると、これらの病気は違うように見えながらも、ある部分では重なり、ある部分では共通し、ある部分では連続していて、病気と病気の境界線が明確とは決して言えません。「気分障害」という一つの家系であって、みな血がどこかで繋がっていると考えればよいでしょう。この不透明さが、気分障害という病態そのものなのです。上記に示した病名のほかに、「ディスチミア親和型うつ病」「軽症うつ病」「適応障害」「パーソナリティー障害」などといった病気も、周辺にある疾患です。このほか、便宜的に用いられている病名として、「仮面うつ病」「微笑みうつ病」「季節性うつ病」「難治性うつ病」などがありますが、これはどのような特徴のあるうつ病なのかわかりやすく示すためにつけられた名称です。通称であって、正式な分類名ではありません。

うつ病の分類

患者は大まかに気分障害の特徴を把握しておく

 医師は、最初に診断した病名のままで治療を継続していき、途中で診断を修正することが困難な場合があります。こうしたケースでは、患者がしばしば転院することによって、他の専門医が新たに診察することで、修正されることがあります。普通、専門医はそれ相応の経験や病気への理解もあり、適切に診断できますが、ケースによって治療経過が長期にわたると、最初の病態がわからなくなり、その後、診断や治療において大きな軌道修正を迫られることもあります。そうかと思えば、初診の段階で正確な診断ができず、経過を観察していく中で、初めて気がつくこともあります。

 また、専門医は典型的なうつ病のケースであっても、よほどの理由がない限り、患者にうつ病のタイプについて、詳しく告げることはしないと思います。それは、診断について慎重を要することもありますが、それ以上に、具体的な病名を告げることによって、患者自身が必要以上に悲観的になったり、否定的に捉えたり、また病気に逃げ込んだりすることになると、かえって治療を遅らせることになり、結果的に患者にとって不利益になるからです。もちろん、医師は患者との信頼関係をつくる意味でも、症状のどこまでが病気によるもので、どう対応していけばよいか少しずつ話すことによって、間接的に病気について理解してもらえるように、また患者がそれを受け入れて病気に向き合ってくれるように努力する事が求められています。

 一方、双極性障害のように、薬物療法のアプローチが大きく変わる場合は、その内容について患者に説明しなくてはなりません。例えば、気分の波が激しいような時は、その波をコントロールするために気分安定剤を中心に使い、抗うつ薬はあくまで補助的なものであることを伝える必要があります。病気の説明もせずに、気分安定剤や抗精神病薬などを長期にわたって使うようなことがあってはならないと思います。また、患者自身も、自分の病気について独断で診断するようなことは、大変危険なことですので謹まなければなりません。ただ大事なことは、患者においても、種々のうつ病の特徴についてはある程度理解しておくことが大事です。自分のうつに軽い躁の要素が入っていないか、非定型の特徴的な症状がないかなどを知っておくことは、薬物療法を行う上で、重要なポイントになります。例えば、薬物療法の効き目が良くない場合、薬剤の変更や代替療法の可能性を医師と相談するうえで大きな手がかりとなり、治療効果を高めるうえでも大きなプラスになります。

メランコリー親和型うつ病とディスチミア親和型うつ病の違い

 ここ20数年でうつ病性障害の臨床像が、大きく変わってきています。特徴的なことは、これまで中高年に多く見られた、古典的・定型的なうつ病である「メランコリー親和型うつ病」が減ってきて、それに代わって台頭してきたのが「ディスチミア親和型うつ病」です。20代から30代の若者層を中心に発症しており、退却傾向や無気力の気質が特徴的です。憂うつ感はそれほどないが、億劫で面倒くさい、何もやる気がしない、ちょっとしたことですぐに落ち込んでしまいます。また、身体的な症状が前面に出やすくなり、疲れやすい、体がだるいなどを訴えます。そして自宅に引きこもり、外に出ようとしないのも特徴です。双方を比較すると以下のようになります。

【メランコリー親和型】

年齢層:中高年層に多い。
性格や気質:秩序を重んじ、配慮的で几帳面。仕事が熱心で規範を好み、社会的役割への愛情がある。メランコリー性格や粘着気質がある。
病的変化:罪悪感と疲弊感、焦燥と抑制、自殺企図が常にある。
治療と経過:初めはうつ病に抵抗感があるが、次第に認知して役割意識をもつ。
薬物効果:比較的に良い。
認知と行動:病気による行動の変化が明らかになり、役割意識を獲得する。
予後:服薬と休養で軽快しやすい。

【ディスチミア親和型】

年齢層:若年層に多い。
性格や気質:秩序に対して否定的。規範に対して抵抗する。自分自身に愛着がある。ぼんやりした万能感。あまり仕事熱心でない。退却傾向と無力感。
病的変化:他者への避難。回避と他罰感情。不全感があり倦怠感がある。衝動的な自傷や軽い自殺への思い。
治療と経過:初めから診断に協力的。その後うつ症状の有無に固執しがちとなり、慢性化することも。
薬物効果:部分的な効果に終わる。
認知と行動:行状において、それが生き方なのか症状なのか分かりにくい。
予後:環境の変化で急速に改善することがある。



インデックス
前のページへ 次のページへ

初めての方へ

症状と治療方法

初めての方へ

診断チェック