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うつ病をひき起こす主な誘因・原因

ストレス

 うつ病を発症させる大きな誘因のひとつにストレスがあります。ストレスが大きくて強いほど、うつ病を引き起こす危険性が高くなります。ただ、ストレスの大きさや強さは、人それぞれによって違います。同じストレスでも、その人の受け止め方やストレスに耐える力(ストレス耐性)によって異なります。ストレスに敏感な人は、小さな出来事であっても心の大きな負担になりますし、比較的ストレスに強い人であっても、突然大きなストレスに襲われると、やはり心に大きなダメージを受ける事になります。つまり、ストレスがある限り、誰でもうつ病になる可能性はあるということです。

 では、ストレスというのはそれほど有害で“悪玉”なのでしょうか。たとえば、仕事で「○○日までに、○○を達成しよう!」という目標が打ち出されたとします。最初は、このノルマに対して「できるだろうか?」という不安と緊張感に包まれてストレスを感じますが、そのうちに「頑張れば、出来るかもしれない」という意欲に変わってきます。その意欲が努力や行動に変わっていきます。つまり、最初に打ち出された目標はストレスだったのが、「やれば出来るかもしれない」という活動のエネルギーに変わっていったのです。それによって、当然目標が達成されれば、自信がつき、さらに意欲がわき、次なる目標に向かってチャレンジすることができます。『ストレス学説』で有名なカナダの生理学者ハンス・セリエが「ストレスは人間が活動するときのエネルギー源でもある」と述べていることはこのことです。このようにストレスと言っても、受け止める人によってプラスに作用することもあれば、反対にマイナスに作用(うつ病などを誘因)することもあるのです。

 私たちは日頃「ストレスが溜まった」「ストレスが原因で体調を崩した」などと、ストレスという言葉を日常的によく使います。では、そもそもストレスとは何でしょうか?「ストレス」とは、もともとは物理学用語です。このストレスについてよく例えられるのは、弾力性のあるゴムまりと人の指との関係で説明されます。ゴムまりを指で押さえるとへこみますが、この時ゴムまりは内側からの反発力で指を押し返そうとします。もちろん指を離せばすぐにゴムまりは元の状態に戻ります。この外圧としての指の力(刺激)を「ストレッサー」といい、それを跳ね返そうとするゴムまりの反応(反発力、または復元力)を「ストレス」と厳密には使い分けています。この関係を、人間にそのまま置き換えると、ゴムまりは私たちの「心」を表しており、指は心を取り巻く外からの「刺激」ということになります。本来のストレッサー(刺激や負荷)のことを、一般的にはストレスと呼んでいることが多いようですが、ここではストレッサー(刺激)もストレス(反応)もひっくるめて、「ストレス」という概念の中で考えていきたいと思います。いずれにしても、本来の物理学用語を、医学や生物学に転用したのがハンス・セリエで、「ストレス学説」を提唱することによって、人間の心のあり様、また健康のあり様を研究されたのです。

 もう一度、ここで「ストレス」という言葉の概念を医学的にまとめておくと、ストレスとは「心や体に受けた刺激によって起こる精神的な緊張」または「外圧に抗して体が懸命に持ちこたえようとする防衛反応」ということになると思います。ゴムまりで象徴されるように、人間の心はもともと弾力性があり、ストレスを跳ね返す力をもっています。仕事はきついけれども、頑張れば高い給料をもらえる。練習は大変だけれども頑張れば金メダルだって獲れる。ということで、きつい仕事や猛練習というストレスがあるからこそ、人の心にはそれを乗り越えようとする意欲や気力、活力がわいてくるのです。セリエの言う「ストレスが人間の活動のエネルギー源」とはこのことです。もし、ストレス(精神的な緊張)がなかったら、人間はどれほど楽だろうと考えますが、しかし適度なストレスがなかったら、おそらく人間は生きる意欲や活力を失い“生ける屍”になってしまうかもしれません。

 では、なぜストレスが「うつ病」の誘因になるのでしょうか? それは、ストレスの度合いによる問題です。ゴムまりと言えども、ストレスの負荷が過度に、また慢性的にかかると、弾力性を失い、外圧に抗しきれずついには萎えてしまいます。人間の心も同じです。過度のストレスを受け続けると、耐性があるとは言っても限度があります。ストレスが強いと、緊張や不安、イライラが募って、うつ病をはじめさまざまな病気を引き起こす原因になります。もちろん人によって強い心(ストレスに強い人)弱い心(ストレスに弱い人)の個人差もあります。心とストレスの強弱が微妙に関係し、影響しあって、うつ病を発症させる複雑なメカニズムを作り出しているものと考えられます。

 一般に、ストレスを感じる「外圧」または「刺激」となるものには、身体的なもの(痛み、発熱、空腹、過労、睡眠不足etc.)物理的なもの(天災、騒音、寒い、熱い、細菌、化学物質、感染etc.)精神的なもの(心労、怒り、悲しみ、不安、恐怖、興奮etc.)そして社会的なもの(経済、仕事、家族、家庭、人間関係、etc.)などが挙げられます。こうして見ると、私たちの日常生活すべてがそのままストレスであり、誰もがうつ病を発症してもおかしくない状況です。普通、何らかの強いストレスを受けると、身体面では自律神経系・内分泌系・免疫系に作用して体に変調をきたし、精神面では不安・イライラ・気分の低下などを招き、行動面ではタバコや酒の量が増えたり、過食になったりすることがあります。それでも、うつ病やその他の病気にならず元気にいる人は、身体の中でうまく処理しているからです。

 私たちの体は、「生体恒常性=ホメオスタシス」といって、生体の内部および外部の変化にかかわりなく、生理的活動を常に一定に維持しようとする仕組みが備わっています。例えば、外界から強い刺激を受けると、体のさまざまな機能が乱されます。すると、体の内部ではその乱れを修復しようとして、自動的に調節機能が働きます。これが生体の恒常性です。つまり、体にストレスが加えられたとき、それがどんなストレスであってもホメオスタシスが働いて、体内では必ず一定の反応が起こります。こうしたストレスに対する反応を、セリエは「全身適応症候群」と名づけて、その過程を3段階に分けて説明しています。

セリエの全身適応症候群

 第1段階は『警告反応期』です。まず、体がストレスを受けると、そのショックで体温・血圧・血糖値などが下がって、体の機能が一時的に低下します。この時期を「ショック相」といい、通常はこのショック相は数分から1日程度で終わって、「反ショック相」に移行します。反ショック相になると、間脳(視床下部)から自律神経を通して副腎髄質に命令が伝わり、アドレナリンなどのホルモンを分泌させて血圧を上昇させます。同時に、心拍数や呼吸数なども増加させます。急に強い刺激をうけると、心臓がドキドキしたりびっくりしたりするのは、自律神経の作用によるものです。さらに間脳(脳下垂体=内分泌系を司る)から副腎皮質に命令が送られ、さまざまな抗ストレスホルモンを分泌して全身の臓器を刺激し、体温、血圧、血糖値などを上げたりして、神経や筋肉などの活動を活発にさせます。これはすべて、ストレスに対する体の防衛反応で、ストレスから心身を守ろうとする働きです。

 第2段階は『抵抗期』です。なおも継続して重くのしかかるストレスに対して、なんとかそれを跳ね返そうとして体が抵抗している時期です。体内では反ショック相でみられた防衛状態が続いていて、さらに防衛力が高められ、必死でストレスに打ち勝とうと体が戦っています。したがって、抵抗力は普段よりも強くなっています。

 第3段階は『ひ 疲はい憊期』です。大量に、長期にわたってストレスを受け続けたために、体が疲労困憊し、もはやストレスに適応できなくなった状態です。つまり、ストレスとの戦いに敗れ、疲れ果てた状態です。長期化したストレスに対しては生体の抵抗力にも限界があり、体の調整機能では処理できなくなってしまうのです。こうなると、最初ストレスを受けた時のショック相に似たような症状が起きてきます。ホメオスタシスが破綻してしまったために、それ以降のストレスはすべて生体にとって“悪玉”以外のなにものでもありません。疲憊期になると、もはや体の持っている抵抗力は極端に減退して、非常に病気になりやすくなり、うつ病や心身症などの発症率も高くなってきます。そして、このまま放置すると、生命を維持するのは困難になって、死に至ることもあります。

 以上が、セリエのストレスに対する学説です。ここから学ぶことは、いかに第3段階までいかないようにして、ストレスとどう向き合うかです。ストレスをどのように受け止めるかが問題です。ストレスをストレスと感じるか感じないかは、その人自身の問題になります。同じ仕事をしていても、それをやり甲斐のある仕事だと思って張り切ってやる人もいれば、自分には出来ないと最初から諦め、大きな負担を感じてやる人もいます。もちろん、ストレスの強弱や程度もありますが、やはり受け止め方が最大のポイントになります。

 ストレスを上手に受け止める方法としては、ストレスと上手に付き合うという発想が重要です。ひとつは、ストレスを日常生活の中でうまくかわしていく方法です。趣味や運動、旅行などで、上手に気分転換をはかってストレスを解消することです。もうひとつは、ストレスから逃げず、積極的に立ち向かっていく方法です。むしろ、ストレスをうまく活用していくのです。上司や親などから叱責されても、うつうつと悩まず、「自分の成長のために」「自分の幸福のために」叱ってくれたと発想転換し、「よし、必ず結果をだしてみせる」と自分自身を励まして頑張る生き方です。うまくかわすか、それとも真正面から向き合ってバネにしていくか、人によって解消方法は違うと思いますし、またストレスの内容によって使い分ける方法もあります。うつ病を未然に防ぐためにも、セルフコントロールが大切です。

 最後に、主なストレスを度合いの高い順に並べると、次のようになります。

  • @配偶者の死
  • A倒産・失業
  • B離婚
  • C夫婦の別居
  • D仕事上のミス
  • E単身赴任
  • F転勤・配置転換
  • G労働条件の変化
  • Hポストの変化
  • I上司とのトラブル
  • J結婚
  • K子供の受験勉強
  • L職場のOA化
  • M家族数の変化
  • N長期休暇
などといったところです。また中高年になると、失業や病気といったマイナスの出来事ばかりでなく、昇進や新築移転など嬉しい出来事もストレスの要因になっています。この年代は、男女を問わず、喪失体験や環境変化に見舞われることが多くなり、そうした事態に直面した時に強いストレスとなって、うつ病になる場合があります。中高年にとって、うつ病を起こしやすいストレスは次のようなものです。

《大切な人との死別》

 親や配偶者、親友など自分にとって大切にしていた人を亡くしたとき、それをきっかけにしてうつ病になる人も多くいます。また、これまで献身的に介護していた人が亡くなったときも、うつ病を発症する要因になっています。この場合は、亡くなった悲しみと同時に、張りつめていた気持ちが突然に解き放たれ、その虚無感がうつ状態を招くことになります。中には、家族同然に可愛がっていたペットが亡くなって、うつ病になる人も増えています。

《離婚》

 最近は中高年の離婚も増えてきました。特に相手から一方的に離婚を迫られた時は、精神的なショックが大きく、立ち直れずにうつ病になるケースです。離婚によるうつ病は、これまで女性が圧倒的に多かったのですが、最近は男性にもみられます。仕事や趣味にのめり込み過ぎて家庭を顧みなかったために、妻から離婚を迫られる男性も多くなっています。

《病気》

 大きな病気をしたことが引き金となって、突然うつ病になることがあります。高齢者の場合は、腰や膝が悪くなって歩けなくなり、寝たきりの状態になってうつ病を発症する人も多くなっています。病気という肉体的な苦痛や不安がストレスになるだけでなく、社会から取り残されたような孤独感や焦燥感がたまって、うつ病になるのです。現役のころ病気知らずに働いてきた人ほど、落ち込みやすいと言われています。

《人間関係》

 人間関係では、家族であれば夫婦、親子、嫁姑などの関係、親戚づきあいや近所づきあい、また職場や組織などにおける人間関係の不和などが、うつ病の引き金になることがあります。また身近な家族関係の不和によって、うつ病になる危険性は高くなります。逆に家庭内が円満であれば、うつ病になる危険性は低くなります。人間関係がこじれると、慢性的なストレスを受けやすくなります。

《子供の独立》

 子供が、就職や結婚で家を離れたとき、うつ病を発症することがあります。それまでは、子供の成長を生き甲斐にしてきただけに、特に母親にとっては大きな喪失体験になります。

《転居》

 「引っ越しうつ病」という言葉があるほど、転居は大きなストレスになります。まず、引っ越しにかなりのエネルギーを要します。準備から引っ越し後の整理など、心身ともに疲れてストレスが溜まります。引っ越しが済むまでは気が張っているのでよいのですが、転居先に落ち着いたころに、突然発症することがあります。それと専業主婦にとっては、人づき合いが苦手の人が多く、転居先の環境や地域にすぐに溶け込めません。子供や夫が家を出たあと、孤独感が強くなって、それがストレスとなり、うつ病の引き金になります。

《更年期障害》

 女性は、50歳前後の10年間は更年期になります。この頃になると、何十年も続いてきた周期的な女性ホルモンの分泌が、急激に減少してきます。ホルモンバランスが崩れると、いわゆる更年期障害といって、身体的にも精神的にも不調をきたしてきます。めまい、動悸、肩こり、頭痛、便秘、不眠などの不快な症状が現れ、大きなストレスとなります。加えて、老後への不安や喪失感が心理的なストレスとなり、うつ病の発症につながります。これが「更年期うつ病」といわれるものです。

《リストラや倒産》

 最近、中高年の自殺が増えており、その主な原因が会社のリストラ、倒産、出向、また事業の失敗などが挙げられます。先が見えない不安や絶望感、経済苦に責められてうつ病を発症し、自殺につながっているものと思われます。

《転職・転勤など》

 転職や転勤など環境の変化は、ビジネスマンにとって大きなストレスになります。新しい職場や仕事に対する不安、それに伴う責任感が心労となり、心を病む人が増えています。また部署の配置転換などで、初めての仕事に対して自信喪失し、うつ病になるケースも目立ちます。さらに人事による昇進や栄転も、うつ病のきっかけになることがあります。コンピューター化に伴う仕事への適応ができなくて、うつ病を発症する人もいます。

《定年退職》

 定年退職を機に、うつ病を発症する人もいます。退職した後、これから先どう過ごそうかという不安感、自分の役割は終わり、社会は自分をもう必要としていないという喪失感などがストレスとなっています。特に、仕事一筋できた人は友人も少なく、趣味もあまり持っていないこともあり、孤独感や不安感が影響しているものと思われます。

以下の項目の中で、最近1カ月のうちに思い当たるものがあったら、項目の数字を○で囲ってください。

  1. 家庭内で、いろいろ問題があった。
  2. 仕事において、多くの変化があった。
  3. 日頃から楽しみにしている趣味などがない。
  4. 何時も実践している運動などがない。
  5. 気分が沈みがちで、憂うつである。
  6. ささいな事に腹が立ち、イライラする。
  7. 仕事へのやる気がなくなり、疲れやすい。
  8. 人に会うのが億劫で、面倒くさい。
  9. 前日の疲れがとれず、朝方から体がだるい。
  10. 寝つきが悪く、夢を見ることが多い。
  11. 朝、気持ちよく起きられず、気分が悪い。
  12. 頭がすっきりせず、頭重感がある。
  13. 肩こりや背中、腰が痛くなることがある。
  14. 食欲がなくなり、次第に体重が減ってきた。
  15. お腹が張り、下痢や便秘を交互に繰り返す。
  16. 目が疲れ、めまいや立ちくらみがある。
  17. 急に息苦しくなり、胸が痛くなる。
  18. 手足が冷たく感じ、汗をかきやすい。
  19. よくカゼをひき、治りにくく長引く。
  20. 医者の診察をうけたら、気のせいだと言われた。

判定法=項目を○で囲った数が5個以下は「正常範囲」。6〜10個は「ストレス予備状態」。11〜15個は「ストレス状態」(要注意)。16個以上は「ストレス病」(要治療)。




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