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疾患の原因

 うつ病がなぜ発症するのか、その原因やメカニズムについては、まだはっきりと解明されていません。うつ病のような精神疾患は、人間の心に関する病気であるだけに、内科的また身体的な病気以上に、その原因を探ることは難しいのです。ただ言えることは、うつ病は一つの原因だけでなく、幾つかの原因が複雑に重なり合って起きているのではないかと考えられます。現在、発症の要因と考えられている主なものは、「性格」「遺伝」「ストレス」「生物学的な原因」などが挙げられます。

 昔から、うつ病はうつ病になりやすい性格が原因しているのではないかと指摘されていますし、近親者にうつ病が多い家系があることから、うつ病は遺伝が大きく関与しているのではないかと言われていました。しかし、性格や遺伝だけがうつ病の原因だとすれば、患者の数はほぼ一定して変わらないはずですが、近年のうつ病の罹患率が急増していることを考えると、性格や遺伝の側面だけでは説明がつかなくなります。また、急速に変貌する現代社会の中にあって、それに対応しようとすると大きなストレスが現代人を襲ってきます。近親者の死亡、家庭内のトラブル、病気、離婚、会社の人事異動や転勤、仕事上のトラブル、過労などさまざまなストレスがうつ病の発症の大きな誘因となっているという調査や研究も行われています。しかし、同じようなストレスを受けながら、うつ病になる人とならない人がいることを考えると、必ずしもストレスだけが要因という事にはならなくなります。それから、近年研究が進められているのが生物学的な原因説です。脳の中で、重要な情報伝達の働きをしている神経伝達物質といわれるセロトニンやドーパミンなどの代謝異常が、うつ病の発症と深く関わっているのではないかという有力な説もありますが、これもまだ解明されたわけではありません。

 ただ、うつ病のタイプによっては、要因の影響度は異なります。例えば、内因性タイプのうつ病でも、躁状態とうつ状態を交互に繰り返す「躁うつ病」(双極性障害)では、遺伝的要因が大きいことがこれまでにわかっています。また心因性では、最近、急増している「軽症うつ病」などがこのタイプになりますが、この軽症うつ病においては、ストレスの影響が非常に大きいことが認められています。ストレスといっても、人によって感受性や耐性は異なり、また性格的な面もありますが、軽症うつ病のほとんどのケースにおいて、ストレスが発症の要因となっています。日常生活でのさまざまな出来事において心理的葛藤が多い現代社会は、まさに高ストレス社会であり、誰でも軽症うつ病にかかる可能性は高いといえます。

 うつ病の原因に関する分類としては、以前から「内因性うつ病」と「心因性うつ病」(神経症性)に分けて考えられていました。内因性うつ病というのは、ストレスのようなきっかけがあって発症するうつ病ではなく、純粋に脳内の生物学的な原因によって発症するうつ病です。一方、心因性うつ病というのは、何らかのストレスがきっかけになって発症するうつ病のことです。こうしてみると、非常に解りやすい分類のように思えますが、実は脳科学的なうつ病のメカニズムからみて、この分け方は必ずしも明快なものではありません。うつ病の患者を診ていると、それが心因性のうつ病であっても内因性のうつ病であっても、ほとんどの人が発症前にストレスを体験していることがわかっています。はっきりしたきっかけがある心因性のうつ病だから、抗うつ薬を飲む必要はないかといえば、決してそうではなく、気分が沈み込んでいるときは脳内の神経伝達物質がバランスを崩しているときですから、抗うつ薬を使って調整する必要があります。

 アメリカのうつ病研究者として知られているアキスカル氏が、論文の中で次のような報告をしています。心因性のうつ病と診断された100名の患者を3〜4年間にわたって追跡調査したところ、3分の1強の36名の患者が、内因性うつ病と診断できる状態に変わっていたといいます。そして36名中21名が、現実認識に強い障害がある精神病になっていたほか、18名は双極性障害の状態になっていたといいます。つまり、ストレスが原因で起きた心因性うつ病の患者のうち、かなりの数の患者が、生物学的原因による内因性うつ病の状態になっていたということです。このほか、双生児の遺伝研究でも、内因性うつ病と心因性うつ病は区別できないという結果が報告されています。こうした研究成果から、精神学的障害の診断においては、原因ではなく、障害の中心になる症状によって分類するのが妥当な方法ではないかとして、アメリカをはじめ世界各国で行われるようになりました。

 この観点に立ち、今までのように原因になっている病因に基づいて分類しようとする立場から、表に現れた症状に基づいて分類しようとする方向に変わってきたのです。その分類の集大成となったのが、アメリカ精神医学会が作成した『DSM-W』(精神疾患の診断・統計マニュアル)といえます。以下、うつ病の主な原因について解説していきます。




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