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周りの人が見た場合

 うつ病の人の症状は、精神面はもとより身体面においても、さまざまな形で現れます。そしてそのほとんどの症状が程度の差はあっても、元気で健康な人ならば日頃、特に苦痛もなく行っていることばかりです。それだけに、このような症状だけで、それがうつ病であるかどうかを判断することは、非常に難しいことです。では、こうしたうつ病の症状を、家族や周囲の人達にはどのように見えているのでしょうか。本人は気が付かなくても、周りの人が見た客観的な症状によって、うつ病ではないかという判断材料のひとつになることがあります。

  • いつも悲しそうな顔をしている。
  • 前と比べて元気がなくなった。
  • ときどき溜め息をつく。
  • ちょっとした事でもぐずぐずしていて決断ができない。
  • やるべきことがあるのにやらない。
  • 1日中ごろごろして寝てばかりいる。
  • 仕事や勉強を怠けてやらない。
  • 人と会うのを嫌がる。
  • 以前に比べイライラして怒りっぽくなった。
  • 落ち着きがない。

 周囲から見ると、実際にそれがうつ病であっても、一見しただけでは病気ではなく単なる「怠けている」「さぼっている」としか映らず、誤解されることがしばしばあります。以上、ここまでうつ病の典型的な症状についてみてきました。そして、うつ病と言えば「元気がない、表情も乏しい、動きも鈍い」などといったイメージが強いと思われますが、実はそうしたイメージとは違った状態(症状)があることも知っておく必要があります。例えば常にイライラしたり、じっとしていられずに落ち着きのない態度をとったりするケースがあります。特にお年寄りにおいては、激しい形をとることがあります。不安感、焦燥感、抑うつ感などを身体症状の形で訴えることがお年寄りにはよくあることです。心の面も十分考慮しながら見ていくことが重要ですし、痴呆のように見えることもありますので注意が必要です。

 それから、別の項でも説明しますが、「仮面うつ病」というのがあります。これは、精神的な症状があまり表には出ず、身体的な症状だけが強く表に出てくる場合を、身体症状という仮面をかぶったうつ病であるという意味で「仮面うつ病」と言われています。もちろん、この名称は正式な診断名ではありません。仮面うつ病になりやすい性格として、クラールは「几帳面、まじめ、凝り性、完璧主義」などを挙げています。強く出る身体症状というと、倦怠感、食欲低下、不眠、体重減少などで、不安感や緊張感を伴うことが多いとしています。

 また、精神面で挙げた症状の中の、ちょっとした体調不良があっても「自分は何か重大な病気をした」と思い込み、「自分はがんになってしまって、もう治らない」と思ってくよくよすることがありますが、これが神経症の“がんノイローゼ”なのか、それともうつ病なのか、その判断は非常に難しいところです。早朝覚醒や日内変動など、その他にうつ病を疑う症状が出てくれば、神経症との区別は容易にできます。このように、うつ病にはうつ病らしくないタイプもあることを心得ておく必要があります。

症状の傾向性と多様性

 治療者はいうまでもなく、うつ病の精神症状や身体症状についてしっかりと頭に入れておく必要があります。例えば「何をやっても楽しい気分になれない」という患者の訴えを聞けば、仕事など物事をする場合に集中できるかどうかという意欲面についても、また物事を悪い方へ悪い方へと考えていないかという思考面についても聞いてみようということになります。身体症状であれば、「朝早く起きて、眠れなくなる」という患者の訴えがあった時、すぐにうつ病のことが連想できれば、体がだるくないか、食欲があるか、また意欲や気力面はどうか、自己否定することがないかどうか等を聞くことになります。こうした患者とやり取りする中で、うつ状態の程度がある程度わかってきますし、患者も自分のことについて治療者はよく解ってくれているという安心感がわくことになります。良き治療者になるためには、多くの症状について熟知していることが必須の条件になります。

 次に、うつ病の症状にはある一定の傾向が認められるということです。一定の傾向を知っておくと理解しやすくなります。大きく分けて二つの傾向があります。一つは「非常に疲れた状態」、もうひとつは「疲れた状態にあるにもかかわらず、休息できない状態」の二つです。前者の非常に疲れた状態というのは、生きようとするエネルギーが枯渇し、停滞し、喪失してしまうために、すべてに前向きになれない状態をいいます。一方、後者の疲れていても休息できないというのは、不安、焦り、緊張などが常にあるために、精神的な休息ができない状態のことです。この二つの傾向が、うつ病の症状として入り混じっているので、二つの傾向という視点から症状を見ると、理解しやすくなると思います。

 もう一つ留意すべき点は、症状の多様性です。うつ状態に陥っている人は、うつ病の症状(精神症状・身体症状)がすべて現れるかというと、そうではありません。患者によって、現れる症状もあれば現れない症状もあり、現れても症状の強弱・程度は人によってそれぞれ違います。したがって、治療者は個々の患者について、どのような症状がどれ位の程度や頻度で出現しているのか、その患者にとって一番苦しい症状は何か、また一番軽減したい症状は何か、といったことをよく見極めることが必要です。

日内変動を軽くみない

 うつ病の症状は「日内変動」といって、1日を通して特徴的な現れ方をします。一般に、症状は朝に悪化し、午後から夕刻にかけて改善する日内変動がよくみられます。人によっては、夕方から夜にかけて普通の人と変わらないように元気になるため、「ずっと落ち込んでいるのではないから、病気ではなく気分の問題なのだ」と考える人もいます。また、周りの人から見れば「怠けている」「仮病だ」と思われることもあります。しかし、これはうつ病の日内変動による症状の現れ方なので、決して気分の問題や怠けて故意に症状を振る舞っているというのではありません。患者本人も、日内変動については軽く考えないように注意しなくてはなりません。




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